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ウィーン&フランクフルトまんぷく日記 39-40/369

 ある朝富永京子が不安な夢からふと覚めてみると、食卓にポランニー国際カンファレンスのプログラムが置いてあるのに気がついた。家主さんも参加されるそうで、入場自由だというので朝と夜の全体討論だけ行くことにした。朝のは結構専門的かつマクロな内容なのでよく分からなかったが、夜の会議はとてもおもしろかった。commodificationとそれに対するcounter movementということだが、私の好きなJ.Scottの議論にもにているような気がしたし。ケア労働、ハクティヴィズムといったトピックベースの議論と、ポランニー型運動/マルクス型運動という分類による議論の二方向から各コメンテーターがお話されていて、ポランニー分かんなくても分かる議論なのがありがたかった。ケア労働に関して言えばcommodificationは激化されていて、それがグローバルな競争にさらされて低賃金化するからもっと悪夢、じゃあそれに対するカウンターはどうありうるかっていうとマルクス型の運動でなくてポランニー型の運動……実務的には再生産とかeveryday routineみたいなことが大事だ、ということだったのだが、やっぱり自分的には個人化とか気になっちゃうので、地域レベルで団結できるpeasant movementとかとはやっぱり違うし限界があるのではと思ったりした。とりあえずポランニー型の運動についてもうちょい調べてみよ。

 カンファレンスとカンファレンスの合間には、家族と買い物に行った。家族の誕生日プレゼントと、私の出版記念プレゼントを購入。ウィーンは近隣諸国と違ってデパートらしきものがない(ファッションビルならある)し、路面店もそれほど大きいばかりではない。お買い物には向かない街かもしれないが、とても楽しく買い物できた。文字盤が両面ある時計で、これなら日本とウィーンの時間、ふたつともわかるからいいかと思ったのだが、女性用はひとつの時間しか表示できないらしい。でも、すごくカワイイ。帰りにホワイトアスパラガスとサーモンのオランデーズソースぞえを食べた。ずっと作ろうと思っていたものなので食べられて嬉しかった。レモン大事だな。

 翌日は家族を空港まで送りがてらフランクフルトへ。これで家族も全員帰ったので、また私一人だ。フランクフルトでは調査をきっかけに知り合い、その後も付き合いを続けて下さっている友人にお会いする。一緒におやつを食べて、フランクフルトを散策する。

 雑談もそうとうしたが、新刊や最近の書き物のご感想等、色々お話した。それ自体とても実りあるものだったが、純粋に楽しい。勉強になったこと、楽しかったことなどいろいろ書きたいが、それについてはまた帰国してからでも書こうと思う。(といっても翌日には帰国するのだが)

 10年調査をしているから、かなり長くいろいろな人に話を聞いてきた。社会運動をやっている人、やっていた人が中心ということになるが、当然、(たとえ運動をやっていない自分であっても)自分と似た...というと僭越だが、「考えていることを言葉にしてくれているな」という方もいれば、新しい考え方をくださる方もいる。アタック25のパネルのようなもので、その部分が大きいか小さいか、角を埋めるか真ん中を埋めるかという差でしかなく、「全く考えが違う」人はいないし「全く考えが同じ」人もいない。
 ただ、そうはいっても、私が研究しているのはアタック25ではなくて社会運動だから、ある程度「同じパネルを、同じ色で」塗りつぶせる人のほうが、きっと運動をしている人からするとありがたいのだろう。ただ、私はそうはなれない。そういう意味で、私が表立って運動をしないこと、一介の研究者としてはすこし言葉が広くにいきすぎるときがあること、ある意味運動の推進力を欠くようなことを書いていると知っても、ある種の友人として付き合ってくれる方がいることは、私にとってはとても幸福なことだ。

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