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【読んだ本】『いつもより具体的な本づくりの話を。』/ 北尾修一

■ きっかけ

『いつもより具体的な本づくりの話を。』という本を読んだ。

ちょっと前に点滅社や夏葉社の本を読んでから、一人出版社とか小規模での本づくりに興味が出て色々検索していたところで見つけて、タイトルに惹かれて手に取った。

■ 概要

内容としては、タイトルの通り、本づくりについての本。
著者は『クイック・ジャパン』の元編集長で、現在は百万年書房の代表を務める北尾修一さん。
東京の台東区の本屋で開催していた、現役編集者を呼んでの本づくりに関する対談イベントシリーズが元になっていて、そこであった話をベースに著者の本づくりへの考え等を加えて作られた本、という感じだった。

■ よかったところ1: 「本づくり」や「編集者という仕事」の解像度が上がる

本づくりのあらゆる工程について、複数人の現役編集者の生の体験談や考え方が載っているので、「本づくり」や「編集者という仕事」について具体的に知ることができる内容だった。

編集者という仕事の魅力的な部分だけでなく大変な部分も書かれているので、「編集者になりたい!と誰もが思える本」になっていないところが良い。
過度に美化せず、編集者のリアルを語ることで、「編集者の仕事」の解像度を上げている。解像度が上がると嫌な部分も見えてくるので、この本を読んだ人の中には「やっぱり編集者になるのはやめておこう……」と思う人もいるかもしれない。でも、それは悪いことじゃないと思っていて、業界に入ってから思っていたのと違うと後悔するより、先にそういう部分も理解しておいた方がより良い選択ができるだろう。
(例えば、著者とか関係者とか読者とか色々めんどくさそーとか、自分は「大衆性」が低いので編集者には向いてないなーとか思った)

また、お金の話も結構してくれていたり、企画書や出版契約書、損益分岐試算表のサンプルが載っていたりもするので、一から出版社をはじめたいと考えている人にとっては参考になると思った。

■ よかったところ2: 本づくりや編集に関する「考え方」も勉強になる

実用的な部分だけでなく、本づくりや編集に対する「考え方」の部分でも勉強になる話が多かった。

自分が一番印象に残ったのは、
「著者以外にもうひとり存在しないと、本の強度が弱まる」
というもの。

かねてより、「別に今の時代って技術的には一人で本って作れるよなー」
と思っていたので、それに対する腹に落ちる答えをもらえた一節だった。
人に読んでもらう大切さ。

と思う反面で、なろう系とか同人系とかブログとか個人配信とか、一人で発信されるコンテンツで面白いものもあるので、一概にそうではないかもしれないが、少なくとも意義はあるし、なによりもそっちのが楽しそうだなと思った。めんどくさい部分も大いにあると思うが。

ただ、これを言うとこの著者には怒られるかもしれないが、こういった役割は意外にAIに置き換わる可能性はあるかもなとは思う。大衆的感覚の窓口というのであれば、AIの集合知で充分にまかなえそう……というか現にすでにAI添削みたいなものはあるし、その応用でより用途が広く、精度の高いものはすぐに出てきそうな気がする。
もちろん、大概の人は効率を重視するより、人とものを作るのが好きだと思うので、実際にそれを採用する人は多くない気はしているのだが、例えば、担当編集がいないようなレベルの人で、まわりに見せる人がいないとかなら、そういうAIを利用して、ヒット作を生み出す、みたいなことも出てくるんじゃないだろうか。

■ まとめ+どんな人におすすめか

本づくりや編集者に興味がある人にはおすすめの本だと思う。
また、本づくりに興味がない人が読んでも得るものはあると思う。
本づくりに限らず、ものづくりに関する普遍的なことを言っている部分もあるし、単純にエピソードトークとして面白いところも多いので。

個人的に一番おすすめしたいのは
「なんとなく編集者になりたいと思っている人」へだ。
すでに編集者の人や出版関係の人が読んでも面白いとは思うが
彼らの場合、半分はあるあるネタ的な楽しみ方になってしまうと思うので、
そういう消費のされ方よりは、新しく編集者になりたい人が読んだ方が
この本のコンセプトにも合っている気がする。

「本づくり」や「編集者という仕事」がどういうものなのかがボヤッとしている人が読むと、解像度があがって良いと思った。「憧れが目標に変わる人」もいれば、「夢から醒める人」もいるかもしれない。それでいいと思う、というか、それがいいなと思ったのだ。

あとは「一人出版社をやりたい」とか、書籍の出版を考えている人にとってはかなり実用的で、というか実用書だと思った。

■ 余談

余談だが……
本からの印象だけだと、著者のことはあまり好きになれなかった。
所々で漏れる著者の思想や言葉の圧が怖い箇所があり、私はちょっと苦手なタイプに感じた。
たまにちょけている部分も、ギャグセンスが合わなかった。
まあ、実際に会ったら悪い人じゃない気もするけど。
なんか後味が悪くなってしまったが、、
書いてある内容は面白い部分が多いし、ためになったり、便利なことが多いと思うので本は本当にオススメです。

これは、この著者がどうとかじゃなくて
この世代の人ってナチュラルパワハラ感があるから
時々急に怖いなって思う時がある。
自分に直接向けられたことはほとんどないんだけど
昔はすごかったんだろうなーって人は結構いる。

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