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ワインの歳

佐山さなえさんはパリの女性料理家としてフランス人のあいだでも知られている。
コロナ渦でも感染に十二分に注意しながら、パリ市の中心にある調理学校で教えたりフランス人の家庭に個人レッスンや出張料理に出向く。
あまり知られていないのは若い日本人シェフ達を応援し続けていることだ。ソムリエの師匠に頼み込んで普段飲めそうもない古いワインを集めてもらい、そのシェフ達に味わってもらうサークルを大事にしている。この日は5本のヴィンテージボトルに巡り会った。基本はブラインドテースティングだがクイズはやらない。師匠はタオルで隠したボトルからもろくなったコルク栓を崩さないようにゆっくりと外に引き抜いていく。どのくらい年を経たワインなのかをゆっくり味わいながら想像する。十分に寝かせたワインだからゆっくり眠りから覚めるまで急がせない。グラスに注がれたオレンジ色の液体は古さを知らせるが味はやわらかい。初めは初対面の人が多いせいか少し緊張ぎみで言葉も少ない。
1本目は1979年のメドックのサンテステフ、シャトーカロンセギュールだった。41歳のワインだ。
2本目は1970年のオーメドック、シャトーラ・ラギューヌ。美味しい。半世紀を経たワインはどのような人生だったのだろう。
3本目は1964年のサンテミリオン、シャトープティフォリードゥスタール。昔飲んだことあるなと思うがどこで、で記憶回路が止まる。56歳だが骨格があり甘みを感じさせる。
ワインの歳を披露するたびにおーっと声が出る。この辺りから会話も出るようになった。ワインの力かな。
4本目は1955年のサンテミリオン、シャトープティフォリードゥスタール 65歳まだまだしっかりしている。自分も見習わなくてはアカン。
5本目は1936年のサンテミリオン、シャトープティフォリードゥスタール、84歳の高齢とは思えぬ飲み心地の良さ。同じ作り手の垂直試飲だったのか。師匠ありがとうございました。
飲みきらないグラスを横に置いて、ここからが次の楽しみ。今回初めて参加したモンマルトルのピガール広場の下でレ・カナイユというフランス料理のレストランの料理長吉田てつやさんはソーモンのパテとブダンを作ってくれた。前回から続いてAu bon accueilleの料理長 堀内智史さんは熟成牛肉の大きな塊を持ち込みフライパンでブレゼ風に調理し,中心がセニャンの素晴らしいステーキに仕上げた。付け合わせはシンプルにアンチョビののったポテトが美味い。最後にAu bon accueilleのパティシエの女性はバニラアイスを添えた中がとろけた上品なチョコレートタルトで最高の食事を完成させてくれた。みなさん生きていて良かったと思う時間をありがとうございました。
次回はぜひレストランで食べてみたいと思います。
Les Canailles Pigalle
www.restaurantlescanailles.fr

Au bon accueille
http://www.aubonaccueilparis.com

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