自殺についての草稿、世界はかくして悪に満ちる

自殺をほのめかす人には、正論を投げかけるではなくてまず話を聞いてみるべきだ、というのはよく言われていることだ。
結局辿り着かせたいのが"正しい"結論だったとしても、そこに至るまでの道筋を提示してあげることが外部の人間がすべきことだろう。なぜなら、本人はその気力も視点も確保することができていない状況なのだから。
でも、それができる人間は多分みんな鬱になってしまう。世の中を生きるには、自分以外のことを慮る余裕なんてない。人の立場を考えて、その人がどんな状況にあって何が必要なのかを考えられるような人間は、きっとすでにあまりの重みに耐えられなくなっているんじゃないか。
かくして世の中は悪に満ち、しかもその悪意を一方通行にすることでお互いに自らの身を守らんと全力を費やしているのだ。その狭間で思いやりを注入することで社会を生き長らえさせながら、善人は抜け殻になって死んでいく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?