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宮城県石巻市出張レポート 震災遺構と活用の現在


はじめに

みなさん、初めまして。
「たいせつアーカイブス」でプロジェクトマネージャーをしているいっちーと申します。
2024年4月に訪れた宮城県石巻市を訪問した際の活動についてまとめております。


公益財団法人3.11メモリアルネットワーク様の紹介

今回の石巻出張でお世話になった中川政治事務理事(以下、中川様)らが所属する公益財団法人です。彼らは、東日本大震災の経験をもとに災害の経験を伝承し、過去の知見を未来につなげる活動をしています。具体的には、震災体験の伝承やパネルを使った被害や被災者の行動を可視化する活動、フィールドワークなどの啓蒙活動を行っています。


スケジュールについて


2024年4月4日(金)の活動内容

午前中
実家の群馬県から仙台まで移動しました。仙台まで移動中に宮城県沖で地震が発生し、東北新幹線が停電および急停車しました。地震ということで少し肝を冷やしましたが、震度4ということで復旧も早く、インフラの強さを感じました。

当時の新幹線内の様子

午後
14時ごろ石巻に到着し、18時までの時間を使い石巻市の街を見学しました。具体的には以下の場所を訪問しました。

  • いしのまきマンガロード

いしのまきマンガロード


  • IRORI石巻

鹿肉のトマトカレーライス


鹿肉のトマトカレーライスをいただきました。
牡鹿半島産の鹿肉が入っており、鹿による林業や森林被害を受けていることを知りました。

移住に関する相談もできます。

店内に石巻市移住相談窓口がありました


  • 石巻市かわまち交流センター かわべい

石巻市かわまち交流センター かわべい

4月4日の活動で感じたこと

マンガロードやアイトピア通りなどを中心に石巻市の中心街が構成されており、震災の記憶と市民が参加しやすい街づくりやローカルスタートアップの文化ができているところが面白いと感じました。石巻市の産業を盛り上げようと頑張っている方々が2つの通りを中心に集まれるような街づくりをしている点が印象的でした。

2024年4月5日(土)の活動内容

キャリーバックを持ちながら徒歩で移動していたので、街並みの3Dスキャンや撮影がたくさんできました。私自身が体験した場所をいくつか紹介します。

旧観慶丸商店


屋外の様子

建物自体が津波と地震の被害を受け、現在はイベントスペースや展示館として使用されています。中に入ってみると木造の支柱を鉄製の支柱が支えており、商店時代の資料を見学することができました。このような街並みを感じられる商店が今は資料館やイベントスペースとして活用されている点は非常に貴重な活動だと再確認しました。

1Fの様子
観慶丸商店の看板

石巻地区かわまちづくり事業

2024年4月の様子

石巻地区に流れる旧北上川は、古くから船による交通の要所として重宝されていました。ただ、旧北上川の流域は東日本大震災で津波の影響を受けています。そのため、堤防の高さを上げ、地域の交流の場として活用されています。このような津波被害の知見を活用しながら、交流できる場所のアップデートを行っている点も震災からの復興の一つとして非常に興味深いと感じました。

いしのまき元気いちば

お土産や食事が楽しめる施設がある点も素晴らしい。

「石巻地区かわまちづくり」事業の詳細は、以下のサイトをご覧ください。

門脇小学校


門脇小学校の看板
門脇小学校(震災遺構)の1Fの様子

津波被害を受けた小学校であり、震災遺構の一つとして保存、公開されていました。津波被害の規模を伝えるだけでなく、約14年前までは実際に小学校として稼働していたことが写真やピアノ、被災された時計台などの展示品から確認できました。
地震と津波に関する日本地図のプロジェクションマッピングでは、門脇小学校が体験した東日本大震災時の浸水の様子が映像化されていました。また、各年代ごとの日本全国で起こった地震や津波を見ることができるコンテンツもありました。


波に衝突した置時計


みやぎ東日本大震災津波伝承館

今回は3.11メモリアルネットワークの中川様をはじめ、みやぎ東日本大震災津波伝承館のスタッフにご案内いただきました。みやぎ東日本大震災津波伝承館は、震災伝承を目的とし、宮城県内から資料を集め、啓蒙を行っている施設です。特に興味深かった点を三つ挙げます。

1. 海外の方への対応
東日本大震災の被災者の体験談や当時の映像を利用したシアター展示があり、英訳付きの説明がされています。
また、館内の展示も英語の説明は含まれていたので、日本だけでなく海外の方にも聞いていただくような仕掛けを行っていました。
日本以外にも台湾やインドネシアなどの島国は海外にも多く存在します。島国では津波被害が重要な問題であるため、外国の方々も活用できるような形式で伝承することの重要性を再確認できました。

2. 東北の震災に関する歴史を包括した展示
平安時代ごろからの東北地方における地震の歴史や記録を展示しているものがありました。歴史や文化のデジタルアーカイブを考える私にとって、東日本大震災と過去の地震とを比較できることに感銘を受けました。

3. 震災の被害を表現した施設の外観
みやぎ東日本大震災津波伝承館の形状にもコンセプトがあり、天井の高さは津波が滞留した時の高さを示しています。高さは6.9mで、筆者が4人分と想像しにくい高さを体験できるようになっています。みやぎ東日本大震災津波伝承館のあった場所にはその当時、街が存在していた事実を考えると、被害の大きさが伺えました。

がんばろう!石巻

伝承館付近に以前は置かれていたモニュメントは、門脇小学校に展示されていました。

また、公園の案内とARコンテンツの体験もさせていただきました。現在は自然に囲まれた公園になっているところからARコンテンツでの津波や震災当時の再現に価値があると感じました。また、中川様から「東日本大地震以降、街中があった地域は記念公園となり、幼稚園や水路の跡など遺跡があるものの遺跡を残すことだけでは不十分なのではないか」というお話もいただきました。
「展示してある過去の写真はどの視点から撮影したものかが非常に分かりづらくなる」という意見を伺いました。どの画角で撮影された映像や写真であるかについても説明することは体験者の想像をより引き出せる展示になると感じました。
現場で体験できるARコンテンツを作る際に重要な視点を勉強させていただきました。

みやぎ東日本大震災津波伝承館からMeet 門脇


まとめ

本記事では、2024年4月に訪問した石巻市の出張中に感じたことについてまとめました。石巻市は震災以前に存在した文化や施設を活用しながら、市民も参加できる街づくりの一環として、川づくりなどの革新的な部分にも挑戦している面白い街だと感じました。

後半では、伝承交流施設Meet門脇でのディスカッションの内容を踏まえ、「たいせつアーカイブス」における私の活動について、二つの視点から考察したいと思います。

i. 東北地方の地方中枢都市である宮城県仙台市との差

ii. 震災遺構と記憶の伝承という観点でのデジタルアーカイブの使い方

石巻市の取り組みは、震災遺構を保存するだけでなく、その記憶をどのように生かし、未来に伝えていくかを考えた点が素晴らしいと感じました。デジタルアーカイブを用いた震災の記録は、単なる保存を超えて、教育や啓発活動にも活用されるべきです。


訪問場所のホームページのまとめ

最後に、今回ご紹介いただいた3.11メモリアルネットワーク様および訪問した各施設のWebページを紹介します。石巻市や震災遺構を訪問される際に参考にしていただければ幸いです。

次回の記事もお楽しみにお待ちください。


筆者紹介

群馬高専 電子メディア工学科,生産システム工学専攻を修了した。その後、筑波大学 理工情報生命学術院 システム情報工学研究群 修士課程を修了し、同学の博士後期課程 2年(D2)に在籍しています。豚の健康管理システムの構築に関する研究を行う一方で、イベント運営や3Dスキャンを用いたデジタルアーカイブを全国で行いながら、xR(Cross Reality)の開発も行っています。
私の活動の一例として、X(旧Twitter)にて発信しておりますので、ご興味ある方はご覧ください。

いっちーのTwitter

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