「おんぷちゃん」と素直に言えたなら
幼稚園に通っていた頃、毎年仮装大会みたいなものがあった。
当時、「おジャ魔女どれみ」がすごく流行っていた頃で
女の子たちはみんな「おジャ魔女どれみ」の変身後の衣装を着たいと言っていたという。
私はおジャ魔女どれみの中では「おんぷちゃん」という紫の女の子が好きだったらしく、確か当時も「おんぷちゃんの衣装が着たい」と思っていたと思う。
でも、おんぷちゃんは幼稚園の女の子の中でも大人気のキャラクターだった。
みんな「おんぷちゃん」になりたがった。
私は「オレンジの子がいい」と母に言って、祖母に手作りの衣装を作ってもらった。
結局、周りの様子や空気を読んで、「私がおんぷちゃんなんて言えない」と自分の気持ちを押し殺してしまったんだと思う。
祖母から渡された出来上がりの衣装を見た時のなんとも言えない、複雑な気持ちは覚えている。
嬉しいというよりは、悲しかった。
小学校低学年の頃、あなたの将来の夢は何ですか?
というテーマで絵を描いて発表する、という機会があった。
活発な女の子は「おヨメさん」になりたいと、どうどうとウェディングドレスの絵を描いていた。
じゃあ、私は「ケーキ屋さん」くらいにしておこうかな。
そう思って、全く心のこもっていない、美味しくなさそうなケーキを描いたのを覚えている。
実際、将来のことなんて初めて考えた、というくらい当時何にも考えてなかったのもあったのだが、今から考えると周りに合わせることばかりしてきた。
オレンジの衣装を渡された時、悲しかったのはきっと
おんぷちゃんになれなかったことから来るのではなく、
自分の気持ちに素直になれない自分が苦しくて、悲しかった。
「私だっておヨメさんになりたい!」とウェディングドレスを描かずに美味しくなさそうなケーキを描いた時も、きっとそれと似たような気持ちだ。
実はこういう癖はいまだに消えてないと思う部分なのだが、今と昔で違うのは
素直でいていい時だってある、ということを知っていること。
大人になった今は、社会で生きていく上でどうしても素直になれない時があって逆に当たり前の世界だけど、いつ何時も素直になれない、なんてことはないのだ。
お友達に色んな話を聞いてもらったり、予定が空いている日はどこか気の向くままお出かけてしてみてもいいのかもしれない。
私はやっと今、素直さを勉強している。
今なら、「おんぷちゃんになりたい!」くらいは言えるかな。