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天王寺駅阪和線ホーム脇の美味しい立ち食いうどん屋は、なぜ思ったより普通だったのかの仮説

「天王寺の立ち食いうどんがめちゃめちゃ美味しい」 叔母が言うのを聞いて、僕もあれは確かにめちゃめちゃ美味しかったなと思った。 二十数年…… 三十年近く前、母に連れられて立ち寄った、天王寺駅阪和線ホーム脇の立ち食いうどん屋はとても美味しかった記憶がある。 めちゃくちゃ美味しいうどんをまた食べたくなり、実際に行ってみたのだがこれが思ったより普通だったのだ。 さぬきオプションという謎のオプションができていて、これを付けたうどんも試してみたが、やはり記憶にあるめちゃくちゃ美味しいというほどではく、どうしてこれをとても美味しかったと思ったのかという疑問が残った。

もともとうどんはあまり好きではなかった。 小学生のころ祖母の家に遊びに行くと、それなりの確率でうどんが出てきた。 子供ながら残すわけにも行かないと思いながら食べていたが、箸の進みが悪いのが見ていても分かったのだろう。 ある日どん兵衛とうどんどっちが好き? と聞かれ、どん兵衛の方がいいと言うのも何となく憚られ、「揚げはどん兵衛の方がいいかな」などとお茶を濁したことを覚えている。

僕が子供のころは実家にしろ祖母の家にしろ、出てくるうどんはスーパーで買ってきたゆでうどんだった。これはコシがなくゆるい麺だった。大学時代は冷凍うどんを食べることが多かったと思う。5食198円の冷凍うどんは安さで乾燥パスタや米に劣るが、その簡便性から一人暮らしには便利な食材だ。そういえば冷凍うどんを初めて食べたときもコシがあってウマいと感動したものだ。 もしかして天王寺駅阪和線ホーム脇の立ち食いうどん屋は30年近く前の時点で冷凍うどんを導入していたのではないだろうか。

日本冷凍めん協会のデータで、うどん冷凍麺の生産量は平成元年の12,230万食に対し、平成十九年は112,510万食と10倍近くになっている。つまり僕が少年から青年になっていった時期は、冷凍うどんの普及期でもあった。駅の立ち食いうどんは提供の早さが求められるので、冷凍うどんが普及しきっていない早い時期から導入していても不思議ではないし、出汁メインで麺のクオリティが求められない大阪うどんに慣れ切っていた当時の大阪人(僕や叔母たち)がそれを食べてめちゃくちゃ美味しいと感じたのも腑に落ちる。今それを食べても「普通にウマいな」程度の感想になるわ。

叔母さんや大阪在住のうどん好きの友達、ご年配の方々にも話を聞いてみた所「あー、そうかも」「確かに」「絶対そうやん、知らんけど」という感じのリアクションだったので全く的外れということもないだろうと思っているのだが、実際のところどうなんだろうか。


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