仮面ライダー剣感想

視聴前の印象:
オンドゥル
元ネタは知らないがAAだけよく見た
「平成ライダー」的なミームの作品(ライダー同士が揉めてグダグダする)

全話視聴+劇場版を観たあと:
平成ライダー5作目でめっちゃくちゃ攻めたことをやったな、とまず思った。
要するにこの作品は、「仮面ライダーという番組を続けることはどういうことか」というメタテーマをずっとやっていた。
企画が立ち上がって5回目でやることじゃなくない?
ギーツでやっと視聴者がそういうのを受け入れる下地ができてたタイミングだよ。
仕事でライダーを続けるということは、仕事でなくなったらどうするのか。
ライダーの戦いはそもそも茶番なので、意味も何もないんじゃないか。
ライダーがいる限り、作中の世界は悪化していくんじゃないのか。
戦うべき相手がいないライダー(そして怪人)は何をすればいいのか。
「戦いを完遂したらこの世界(番組)は消滅する」という形式は果たして正しいのか。
普通に特撮にキャッキャするつもりで観始めた子供がこんなこと言われても困るくない???
しかもなんか…序盤は特に…戦闘がアレだし…
「怪人を倒したらカードを手に入れて新しい技を使える」ってシステムだから、ライダー同士で殴り合ってる間一切新技が増えないし…
技が地味だし…
新しいカード手に入れても別に全然使わないし…
レンゲルはニートしてるし…
(好意的に解釈するなら、スパイダーアンデッドもタイガーアンデッドと同じく、今回のバトルファイトの不自然さに気付いてたんじゃないか?とも思えるけど)
それはさておき、なんだかんだで面白かった。
観終わって見ると、「作品そのものが飢えを感じている」としか言いようのない唯一無二の味だったと思う。
アマゾンズやオーズのように、作中の人物が直截的に飢えを表現する作品ではないけれど、その代わりに作品そのものが「仮面ライダーの番組である」という充足感に飢えている。
だからこう…率直に言って作品の筋が迷走してるような状態でも…登場人物は全員ずっと「作品の飢え」に背中をつつかれていて、だから全員いつでも本気の感情を出している――ように思った。
「仲間がいなければライダー作品にならない」ので仲間を常に助ける剣崎。
「ライダーであることを維持しないといけない」のでとにかくそのためのドーピングを求める橘。
「作品に存在するにはライダーでいないといけない」ので「仮面ライダーという仮面」をかぶる始。
「ライダーであるからには戦って成長しないといけない」ので都合よく戦いのシーンが訪れないことに憤る睦月。
前半がなんというか…本当に何をするか決まってないので、後半になればなるほどそのテーマが詰まっていくのも…なんていうか…味だった。
特撮作品は正直、「面白い話を作りたい」という動機におもちゃの都合や放送スケジュールの横槍が入って振り回されて、動機と出力が直に繋がってないところが一番面白いと思っているのだけれど、ブレイドはその横槍の噛み合い方が本当に奇跡的だと思う。(おもちゃは売れなかったらしいけど。そりゃそうだろう)
まあなんか…リアルタイム時に観てた人がAAやオンドゥルで茶化すしかなかった気持ちもよく分かる。変な作品だ…


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