バランワンダーワールド考察 コスチュームがたぶん伝える予定だったもの

前置き

まず私は、心象世界ネタが好きだ。人の心の一部が動物やモンスターの形をとって表れるのも好きだし、恐怖に囚われて自分自身が似たような怪物になってしまうシチュエーションも好きだ。そういうわけで、この考察はテーマに対する好感度がそもそもかなり高いのを踏まえて読んでもらえると幸いである。あと、バランワンダーワールドをクリアしてないとわからない内容が多い。

バランワンダーワールドについて

まあ、少なくともつくりがものすごく粗いゲームと言って差し支えないと思う。アクションゲームとして詰めが甘いのはもちろんのこと、やけにプレイヤーに対する制限が多いし、基本的にシナリオは説明してくれない。そんなわけで「未完成」だと言われているし、制作に携わった人もこないだそう言っていた。
ただ、少なくとも設定面・シナリオ面においてはしっかり作り終えていたものと考えられる。というか小説版にはゲームで説明しなかった部分がだいたい書いてあるし。
また、キャスト(キャラクターのポジティブな心の一部らしい)やコスチュームはモチーフの一貫性があり、コンパチと言えるような見た目のカブりはほぼ感じられず、数十種類ものデザインがしっかり練られている。それに能力も上位互換や類似があるものの、個別ごとに専用の演出やモーションも多いため、「明確な意図があって作り込んでいる」という印象を受ける。
(本当に手抜きなら、正直カブった能力は全部同じモーションにしてくれたほうがゲーム的にもラクだった)

しかし一方で、コスチュームを使わせてなにをさせたいか、どういう体験を得させたいかはかなりあやふやだ。ジャンプが制限されるコスチュームが多いので不自由さを感じる場面のほうが多く、導線がないので大半のバランスタチューは正しくコスチュームを使ったのかどうか確信できない。その上落下やダメージで一律使用していたコスチュームが消失するため、コスチュームの「ポジティブな心のチカラ」がゲーム内でどのくらいの影響力を持つのか全然わからない。
そしてステージをクリアすると、ものすごくざっくりしたムービーのあとに急速にそのステージのキャラが闇堕ちしてボス戦になる(ように見える)。これではまるで自分たちが進んだから闇堕ちしたように見えてけっこうモヤモヤする構成だ。(ただし、ボス戦は対立構造と『このコスチュームを使って反撃しろ』という明確な課題があるのでまあまあゲームとしてはわかりやすい)
ムービーの位置が変なのだ。最初に闇堕ちした様子を見せてくれたほうが「ああ、救済のために突入するんだな」って意気込みができるのに。(まあ意気込んだところで集めるのは謎のバランスタチューなんだけど)

だから、バランワンダーワールドはやっててどのあたりまでが『未完成』なのか判然とせずモヤモヤしていた。していたので無駄に考えた。ゲームとしてはマリオオデッセイとカービィディスカバリーやってるほうが5万倍楽しいと思う。
結論から言うと、「ジャンプ制限」「使いづらい能力」「ムービーの位置と内容」あたりは明確な意図があってそうしてるのだと思う。というのも、このゲームは多分「アクションの成功体験」だけではなく、「アクションの失敗体験」を通してゲームシナリオを理解させようとしてるからだ。


アクションの『失敗体験』

小説版の「嵐と戦う男」において、農園主ホセには息子がおり、嵐がきて畑が壊滅したときに息子が言った「大学に行けなくてもいいよ」という気遣いの言葉が逆にホセの心を折り、ネガティブに傾いた、という記述がある。もちろんゲーム中にこれに関する説明は一切ない。ないから、ホセが嵐のなにに心を折られたのかよくわからないまま話が進んでしまう。
ところが1章には「ジャンピングジャック」という子供をポケットにおさめたカンガルーのキャストがいて、そいつのコスチュームを着るとふんばりジャンプができるようになる。
トウモロコシ農園にも竜巻にもまるで関連性がないので、この時点で好意的に考えれば「ああ、親子だから子供がいたってことかな」と思うことはできる。ジャックって名前なのに子供抱えてるから母親がいなくなったのかな、とか。能力がふんばりジャンプだから「子供のためにちょっとふんばれる親」ってことかな、とか。
しかしこれでも心が折れた理由はよくわからない。何故なら、ゲーム中に出てくるキャストはすべてポジティブの化身でただステージを踊ってるだけだなのだ。示唆するような動きはまるでしてくれない。
だから、もし小説版と対応させるなら「心が折れた瞬間」に対応するのは「『ジャンピングジャック』のコスチュームを着た主人公がふんばりジャンプをするもうっかり失敗してコスチュームを失ってしまう」という流れなのだ。
このゲームはたぶん、"キャストと同じような姿(顔出し着ぐるみなので、3Dアクションで前に進んでるときはほとんど同じに見える)になっているのに、自分ひとりだけトライして、時には失敗し、コスチューム(ポジティブな心)を失ってしまう主人公"をプレイヤーにやらせることで、キャラクターがネガティブに呑まれてしまうシナリオを理解させようとしている。
小説版読んでねえとわかんねえ内容にするなって? そのとおりだと思う。
それはさておき、そう考えると、すべてのコスチュームで軽々しくジャンプするというのを許さない理由も、デメリットや嫌がらせとしか思えない能力のコスチュームがたびたび手に入る理由も、ステージクリア後に急にムービーが入る理由もわかる。見た目と能力、そして『失敗したときの流れ』からドラマを読み取って、心の動きを把握し、ボス戦前に答え合わせをしろ、というのを要求しているのだ。たぶん。
まずプレイヤーのストレスを理解しろって? そのとおりだと思う。


各コスチュームの意味の考察

そんなわけで、ここからは各章ごとにコスチュームが伝えたかっただろうことを考察していこうと思う。ただし、演奏系コスチュームはお遊び要素として、本来クリア直前に手に入るダブルジャンパーとクリア後のアクト3で手に入るコスチュームについては『克己した心』の象徴であるものとして、ここでは取り上げない。

1章『嵐と戦う男』

トルネードウルフ

モチーフ:狼の遠吠えに聴こえる竜巻の音か
成功体験:トルネードジャンプで竜巻を跳ね返す=対等に立ち向かう
失敗体験:ジャンプに失敗する・壊せないものにぶつかる=相手を見誤る

ジャンピングジャック

モチーフ:息子のためにふんばる父親
成功体験:ふんばって届かなさそうだったところに届く
失敗体験:ふんばり損ねて落ちる

バウンティングピグ

モチーフ:農場で飼っている豚と修理の必要な釘か
成功体験:釘を見つけて打ち付け、修理する
失敗体験:無意味な釘の打ち付けをして、動作を繰り返す=虚しさの象徴

デインティドラゴン

モチーフ:黄金(トウモロコシ)を守る竜のイメージ?
成功体験:畑にわいた障害物や敵を壊す。管理者の象徴
失敗体験:ジャンプできず、高いところに当てられない。管理に追われて飛び立てないドラゴンのイメージか

エラスティプラント

モチーフ:鉢植えの花。農作物ではないので、育つ子供そのもののイメージか?
成功体験:すくすくと伸びて、アイテムを取る
失敗体験:伸びても届かないところに無理に上がろうとする

「管理者」としての矜持と「親」としての責任感がおもなポジティブの成分か。一方でプレイヤーが操作すると翼があるのに飛べないドラゴンや、高いところに登れない鉢植えなど、「閉じ込められている」「抜け出せない」という要素も多い。それの集積が自由に跳ね回り、竜巻ですべてを吹き飛ばすボスのハウリングウルフ。しかし立ち向かう心で竜巻を跳ね返され、修理の心で杭を叩かれることで撃退される。


2章『イルカとダイバー』

ダイナミックドルフィン

モチーフ:一緒に泳ぐイルカ・イルカと仲間になった自分
成功体験:イルカのように水流をジャンプする
失敗体験:イルカのようにジャンプするもうまくいかない

ジェリージョルト

モチーフ:電気クラゲ・危機意識そのものの象徴か
成功体験:電気で敵を撃退する=危機管理をしっかりする
失敗体験:ダイナミックドルフィンが必要なところに入ってしまい、ジャンプできないまま流される=イルカになれない自分か

テレーポッター

モチーフ:イルカとの壁や水中/地上の壁を越える自分の象徴か
成功体験:壁を越えて行きたい場所に行ける
失敗体験:壁に阻まれて行けない

バブルブロアー

モチーフ:海を揺れる葉っぱと海中での酸素ボンベ・呼吸
成功体験:泡(空気)があるので安全に移動できる
失敗体験:なにかにぶつかっただけで泡が壊れる=呼吸ができなくなり、落ちる

イルカに憧れる心と、それ以外の対比という構成か。イルカ>クラゲ>テレポ>バブルと移動能力が落ち、その代わりに人為的っぽさが増えていくので、意識しないヒエラルキーがある。その最たるものがイルカとクラゲの化け物になったジェリードルフィン。ドルフィンで立ち向かってもいいが、ジェリージョルトのコスチュームですべて攻略できるのは『全部同じだと思うのではなく危機意識をもって判断する』というシナリオがある…のかも。
そして克己し、フィクサーによって心が癒やされたあとはどこにでも行けるダブルジャンパーが手に入る。

3章『虫愛でる少女』

ダスクバタフライ

モチーフ:飼育してる蝶・人目を気にする自分
成功体験:暗い(人目がない)うちはのびのび飛べる
失敗体験:明るくなり、飛べなくなってしまう

シクルスリンガー

モチーフ:カマキリ・虫が憎くて殺してしまいたい自分か
成功体験:カマを飛ばしてアイテムが取れる=目論見が当たる
失敗体験:カマを飛ばしても届かない=目論見が外れる=虫を世話しててもいいことなんてない

ウェブラングラー

モチーフ:クモ・虫を捕まえる自分か、クラスメイトの気を惹きたい自分か
成功体験:壁を登れる・手順を踏めば目的地に行ける=いつかわかってもらえる
失敗体験:糸を掴みそこねる=頼りの綱がない、クラスメイトと共有する糸口がない

ラブリーランタン

モチーフ:ホオズキ・明かり・小さい生き物を愛でる象徴か
成功体験:小さな明かりがあれば自分は大丈夫
失敗体験:足を踏み外す

イッツィビッツィエルフ

モチーフ:モモンガ・森に住む生き物の象徴・魅力的な世界への扉を開ける自分か
成功体験:他人が知らないようなことを知ってる・道を開ける
失敗体験:他の用途には役に立たない・ただ小さいだけ

クラスに馴染めず、森の生き物に自分を託している。こそこそと立ち回る心と慈しむ心、獲物を捕らえたい心が同居している。小説版では誰も世話しなくなったイモムシの世話を押し付けられているため、何者でもないイモムシに自分のもやもやをすべて押し込めて、ボスのブリリアントワームと化した。ボス戦でシクルスリンガーとウェブラングラーが置いてあるのは、「歪な芋虫を自然の摂理で喰らえ」的な感じなのかも。

4章『風になりたい少年』

ソアリンシープ

モチーフ:ヒツジ・雲・風で浮かぶ自分
成功体験:風を受けて上昇する
失敗体験:風を受けそこねて落ちていく

エアロアクロバット

モチーフ:風船・コウモリ・飛行帽
成功体験:狙い定めて空を進む
失敗体験:狙いを外し落ちてしまう

レーザーランチャー

モチーフ:ロボット・電子工作中の火花か
成功体験:うまくレーザーを当てて仕組みを動かす
失敗体験:仕組みを動かせない=工作に失敗する

ボックスフォックス

モチーフ:キツネ・魔法使い・工作素材・「鉄の塊が滑る」という飛行機のイメージか
成功体験:重たい塊をうまく動かして進む
失敗体験:重たい塊を制御できずに落ちる

飛行機械を作ろうとしてうまくいかない心。一番安定して飛べるソアリンシープが雲のような概念的な姿で、機械的・物質的な要素が増えるほど動きが不自由になる。憧れを実現させるときの重さと不自由さか。ボスとなったライオットプレーンは機械的なプロペラが飛ぶ機能を放棄して、方向を見失っている。ソアリンシープやエアロアクロバットを使って「風に乗って目標を目指す心」をぶつけ続ければやがておとなしくなるだろう。

5章『鳥を見守る女性』

ガーディアンバード

モチーフ:鳥とその守護者である自分
成功体験:風を起こし、邪魔者を追い払う
失敗体験:鳥の見た目なのに飛ぶ機能はない=偽物の守護者

リックショットリザード

モチーフ:カメレオン・双眼鏡で遠くを見る自分
成功体験:遠くまで移動できる
失敗体験:実がなければ何もできない=私利私欲に囚われた人間と自分

ラッキーエッグ

モチーフ:鳥の巣・卵・運良くそれを見つけた自分
成功体験:アイテムを引き寄せる・欲しい物が手に入る
失敗体験:うっかりジャンプする程度で幸運(卵)は割れる

シクルスレイヤー

モチーフ:カマキリ・刃物
成功体験:敵(鳥を狙う者)を撃退する
失敗体験:撃退に失敗する=成果のないブーメランが自分に返ってくる

ホットヘッド

モチーフ:たいまつ・思想に燃える/頭に血が上った自分
成功体験:頭の炎を他のものに灯す=賛同者を増やす
失敗体験:攻撃などのほかのことに使えない=実のない炎

人間の思想と鳥たちの世界の間で揺れる心象世界。しかし自分は鳥たちのように飛ぶことはできず、駆けずり回りながら地道な活動を続けるしかない。鳥にもなれず、人にもなれないギャップは積もり積もってこの世界のボス"狂った鳥《クレイジーバード》"へと変貌する。鳥の姿はしているが中身は人という自認なのか、毒の卵を産み散らしたり巣箱を叩きつけたりする。ポジティブな心で行動を鏡返しにしてやれ…みたいな感じかも知れない。

6章『仔猫と少女』

ギアプリンス

モチーフ:歯車
成功体験:自分が動けば機械も動く=事態が明らかになる
失敗体験:それ以外はなんの役にも立たない=無力な自分

パンプキンパンチャー

モチーフ:かぼちゃ・伸ばした手
成功体験:手を伸ばせば届く
失敗体験:手を伸ばしても届かない・手を伸ばしても足が動かない

パウンディングダック

モチーフ:アヒル・母親?
成功体験:ヒップアタックでものを壊せる=大人の強さ=時間の強さ
失敗体験:(エアキャットと対比して)空は飛べない=大人は役に立たない

エアキャット

モチーフ:仔猫・自分
成功体験:軽やかに歩いてどこでも行ける
失敗体験:踏み外したら高いところには登れない=取り返しが付かない

クロノバニー

モチーフ:ウサギ・時計
成功体験:時間を止めて自由に動ける
失敗体験:クロノバニー時にしか見えない時間ゲートがないと役に立たない=妄想に近い無力さ

夢想や空想の万能感と子供ゆえの無力さが入り混じっており、用意されたギミックがないと役に立たない者も多い。ボスとなったファットキャットは「時間が止まれば猫は大丈夫」「ロケットパンチがあれば猫は大丈夫」などの夢想が凝り固まり、膨れ上がっている。パンプキンパンチャーとクロノバニーがいるのは、「時間を進めて手を伸ばせ」という意思…なんだろう。

7章『栄光が忘れられない元チャンピオン』

フローティフラワー

モチーフ:盤面を俯瞰する自分、妻の葬儀の供花?(小説版より)
成功体験:盤面を見下ろして冷静に降りる場所を選ぶ
失敗体験:降りられない場所まで漂ってしまい、落ちてしまう

クアッドキャノン

モチーフ:キングの駒・チャンピオンの自分
成功体験:四方を止まったまま迎撃できる
失敗体験:弾をうまく当てられず、ナイトの衝撃波をジャンプで避けることもできない

スピーディチーター

モチーフ:チーター・肉食獣・素早く獲物を狩るイメージ
成功体験:超スピードで挑戦者を寄せ付けない
失敗体験:バテて遅くなったところを敵に捕捉される

タックリングブル

モチーフ:牛・草食獣・攻防一体で敵陣を打ち砕くイメージ
成功体験:道を塞ぐものを吹き飛ばす
失敗体験:タックルが届かない

パラディンランチャー

モチーフ:騎士・駒を動かす自分の手
成功体験:遠く離れたものも打ち砕く
失敗体験:死角から砲撃・遠距離攻撃される

崩れた盤面と城のような世界で、チェス王者としての経験が形をなしてうろついている。小説版によると落ち込んでいる最中に妻が病死しており、盤面を俯瞰できる心が花の形をしているのは、妻の棺に投げ込んだ花と重なるからか? この世界の王であるキングフォートレスには妃はおらず、ただ王が小さくなった王を愛でている。攻略で「クイーンの駒」を叩きつけるのもそういうことか。

8章『愛することを怖がる女性』

シールスケーター

モチーフ:アザラシ・スケート
成功体験:氷の上を自在に滑る
失敗体験:足を踏み外す・思いがけないルートに行ってしまう

フロストフェアリー

モチーフ:雪の結晶・妖精
成功体験:リスクのある氷の上から逃れる・好きなところへ行ける
失敗体験:このコスチュームを失うとものすごく不便=失うことがすごく嫌になる

フロストジャイアント

モチーフ:雪男・他人や自分を凍らせてしまった自分自身か
成功体験:動くものを凍らせられる・安全になれる
失敗体験:凍らせてもそのうち溶けてしまう

ハーディハンマー

モチーフ:氷・ハンマー・ノックの音
成功体験:道を塞ぐものを打ち砕ける
失敗体験:砕きたいのに歩みが遅くなってしまう


突然幸せが壊れる恐怖が薄氷となって広がっている世界。氷の世界で自由に動きたい心と凍った世界で安住する心が同居している。氷から何度も足を踏み外し、怯えが勝った心はテラーリーパーとなって近づくものすべてを凍らせようとする。「氷の上で跳ぶ覚悟」をボス以外のエリアから持ってこなければ、このボスを真に倒すことはできない。(実は頑張れば結晶足場のときにフロストジャイアントの雪玉が当たる)

9章『プリンセスに恋した男性』

レールランナー

モチーフ:機関車・サル・のぼせ上がる自分
成功体験:思い切り駆け抜けて望みのレールに乗る
失敗体験:制御を失ってレールを切り替え損なう

スロウトータス

モチーフ:カメ・マジシャン・足手まといになる自分
成功体験:相手を自分のペースに引き込める
失敗体験:おたおたしてるうちに相手のスピードが戻ってしまう

ハッピーブラスター

モチーフ:ピエロ・風船・恋心が膨れ上がる自分
成功体験:爆発した思いを相手に伝える
失敗体験:膨らんでいるうちに相手はいなくなってしまう・ふられる

アイアンパンダ

モチーフ:パンダ・アイアンボール・かわいいおもちゃを演じる自分
成功体験:勢いよく相手にぶつかれる
失敗体験:的はずれなところに転がってしまう

パウンディングロボット

モチーフ:ロボ・ただの機械に扮する自分
成功体験:安心して高いところから着地できる
失敗体験:場所を間違えてヒップドロップしながら落下してしまう

メリーゴースト

モチーフ:幽霊・実体のない存在だと思い込む自分
成功体験:毒やダメージエリアを無視できる
失敗体験:リスクを回避できる代わりに、特にできることがない

すべてのキャストが恋心を抱く自分の写し身となっていてわかりやすいステージ。恋心を持つ自分をキャストとして放り出した結果、最後に残った「彼女への告白を恐れる心」が巨大なナイトメアプリンセスとなって鎮座している。ボス戦も「ヒップドロップ」で相手の心を揺らし、「スロウトータス」で遅くして心を伝えろ! という少年漫画的な構成になっている。

10章『壁に突き当たった画家』

インキーブラスター

モチーフ:タコ・絵を描く自分
成功体験:絵の具でキャンバスに絵を描ける
失敗体験:絵の具を飛ばしても絵を完成させられない

エックスレイエイプ

モチーフ:眼鏡・モチーフを観察する自分・絵の品定めをする客?
成功体験:隠れた要素を見抜いて辿り着く
失敗体験:見抜いても行き方がわからない・しょうもないものを見た気になる=他人の品定めに振り回される自分

スニーキーリザード

モチーフ:トカゲ・光るものに目をつける自分や他人?
成功体験:光るもの(ドロップ)に目をつけて素早く移動する
失敗体験:他のものに気を取られて、より大きいドロップを見つけられない=集中できない自分

エアユニコーン

モチーフ:絵の具・色・ユニコーン・絵の空想性そのもの?
成功体験:色のチカラを使えばどんなところでも行ける
失敗体験:「自由に移動できる動物」を空想しても複雑な環境に阻まれる=自分の絵の力の限界

ダブルトラブル

モチーフ:ウサギ・幽体離脱・絵の世界にのめり込む自分
成功体験:身体を離れて自由に飛び回れる
失敗体験:行くところが決まってないと幽体離脱しても意味がない=目的のない絵画

絵の苦悩が詰まっている世界。他人の視点と自分の視点が混ざり、どこに行けばいいか常に混乱している。すべての視点が混ざりあえば見えるものは真っ黒になり、その絵は無限遠に遠ざかっていく。ペインクラーケン――絶対に出来上がらない「誰もが満足する絵」そのものとなった彼女は、自分に近づこうとするものを虚飾で追い返そうとする。「絵を見る心」と「絵を描く心」で近づき、大事なのは自分の「頭」だということを思い出させよう。…みたいな感じだろうか。

11章『ヒーローになりたい消防士』

ウォーターブラスター

モチーフ:消火栓・消防士・自分そのもの?
成功体験:火や溶岩を消す
失敗体験:水を狙ったところに当てられない

ブルドーザー

モチーフ:ブルドッグ・ブルドーザー・隊長?
成功体験:邪魔なものを力ずくで撤去する
失敗体験:動きが鈍く、火のダメージを受けやすい

キーマウス

モチーフ:ネズミ・鍵・消防士の身分そのもの?
成功体験:火から逃れ、コスチューム(=残機・火に対抗するパワー)を好きなだけ手に入れる
失敗体験:火そのものに対する能力がない=ヒーローになれなかった自分?

ラダーマン

モチーフ:はしご車・高みに登る自分?
成功体験:はしごをかけて移動できる=選ばれたものだけ使える通路
失敗体験:都合のいい状態が揃ってなければ役に立たない

フレイムブラスター

モチーフ:炎・ライオン
成功体験:火が怖くなくなる
失敗体験:強そうだが、火に対してできることはない

アイアンアポロ

モチーフ:宇宙飛行士・ロケット・アポロキャップ・英雄
成功体験:より高みに昇れる・英雄として帰還する
失敗体験:ほんのちょっとでもずれると望みのところへ着地できない=想定通りの動きができない自分

ヒーローの強さを望む自分と、幻滅する自分と、消防士としての使命を果たす自分が複雑に混じり合っている。安全に火を消すのが使命だと頭では理解しているが、消防とはだいぶズレているアイアンアポロや、火の強さを象徴するフレイムブラスターが心を侵食しつつあるのが見て取れる。そして彼自身は完全に火の恐怖に呑まれ、ドラゴンハイドラントと化している。完全に鎮火させるにはボス戦外からブルドーザーを持ってこなければならないのは、やっぱり隊長(小説版にいる)の叱責が必要、ということだろうか。

12章『誰からも見えない男』

バキュームブラスター

モチーフ:掃除機・恐竜・ただの掃除機代わりの老人と揶揄する自分
成功体験:ゴミを吸ってゴミにぶつけ、消滅させる
失敗体験:もたもたとして遅く、対応できない

インビジブルマン

モチーフ:透明人間・まるで透明だと揶揄する自分
成功体験:厄介なことに巻き込まれずに済む
失敗体験:時折、自分で自分のことを見失う

ジョルトタイガー

モチーフ:電気・竜(バキュームブラスター)に対する虎?・伏せて不満を溜め込む自分
成功体験:近づくものをしびれさせる=不満に気づかせる
失敗体験:動いてるときにはなんの力もない

フィクサーアッパー

モチーフ:僧侶・街のメンテナンスをする自分
成功体験:壊れたものを修復できる=自分だけの特別さ
失敗体験:ほかはほとんど役に立たない

サンウォーカー

モチーフ:太陽・日中ゴミ拾いをしている自分
成功体験:止まりながら少しずつ動けば、安全に移動できる
失敗体験:自然に動こうとするとまわりから理解されず、ついていけなくなる


「じっとためこむ人」の心の中を表した心象世界。ステージもキャストも神秘さ荘厳さを帯び、自分が特別な人間であるという自負がうかがえる。一方でまともに動けないコスチュームが大半なくせにやたら鬱陶しいステージギミックが多く、老人のこわばって込み入った心を表現しようとしたんだろうなあと思う。滑空系のコスチュームを持ち込めばラクになるが、これはボスのインビジブルフーパーに2章のジェリージョルトを持ち込む攻略があるのも含め、「老人のこわばった心には若者の心をぶち込め」という意図があるのだろう。ボス戦は、それ以外は彼自身の自滅で攻略が終わってしまう。


おわりに

まあここまで書いといてアレだが、ゲーム内でそうとわかる導線になってないのでこんなことを考察してもかなりしょうがない気もする。ゲームが面白くないのに作中キャラのストレスを追体験しましょう!ってなって楽しいわけがないし。だいたいゲーム攻略の小目標がバランスタチューとバランチャレンジな時点でノイズ多すぎるしね。

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