見出し画像

3/9 境界戦争


画像1

‘‘サンロード‘‘ペリグリンは、石と骨でできた玉座チャーネル・スローンを満足げに眺め、貴族として一言配下共に供してやろうと足を掛けた。するとどこからともなくツンと鼻を貫く腐臭に顔をしかめた。屍臭ではない、そんなご馳走の香りなどでは決してない。気が付くとずるずると引きずる様な音と不快な粘液の音、いい気分が台無しだこの腐れ肉め、怒り狂ったペリグリンは、参集の金切り声をあげる。

画像2

ぶくぶくと腫れ上がった皮膚からは、膿を垂れ流し不快な水音の混じる足音はまっすぐ玉座に向かっていた。肉塊の化け物ガーク‘‘グロット‘‘は上から兄たちのはしゃぐ様な笑い声を聞きながら歩を進めた。ガークに乗る長兄オットー‘‘グロット‘‘次男エスラック‘‘グロット‘‘は大いなる尊父ナーグル神から祝福を受け遍く者に滅びと、腐敗と、そして素晴らしい「贈り物」を伝えるために来たのだ。魔術師の次男オットーが杖を振るうと淀みを振りまく尊父に祝福された樹、フェクレント・ナールモウが姿を現し結わえ付けられている鐘が鳴りピューリットブライトキング達が呼応し鐘を鳴らす。

今こそ「贈り物」を渡してあげよう。ともに腐ろうと。


画像3

ガーク‘‘グロット‘‘は、手始めに飛び回ってこちらを威嚇するクリプトフライヤー達に狙いを定めた。かつて腕であったもの、その触手を振るいフライヤーを叩き落していく。フライヤー達は鋭い爪でガークの顔面を斬りつけ膿を噴出させる。が、ナーグル神の祝福受けたこの肉塊はたちどころに傷を塞いでしまう。ついに触手に捕らえられたフライヤーが最後に見たものは長兄オットーが大鎌を振り上げたところであった。

画像4

‘‘サンロード‘‘ペリグリンの近衛はどうやって選ばれるか。それは、狂気にどれ程溺れることができるかだ。近衛のグール達は、その点に関してはとても優秀であった。

狂気の増幅、ペリグリンが‘‘聖人の王‘‘と呼ばれる所以である。グール達の目は深紅に染まり目の前の敵を倒す事、いや我々以外のものすべてを亡き者にする事しかできなくなっていた。プレイグベアラーオヴナーグルの群れに狂気の塊となって突撃し猛烈な勢いでバラバラにしてしまった。

画像5

ペリグリンが、呪詛の言葉を紡ぎパチンと指を鳴らした。地面が盛り上がり地獄の馬が姿を現す。屍馬の狂走団である。まさに狂い走り、腐れ共にまっすぐ突っ込んでいった。ガークの脇腹を突き抜け、鐘を鳴らし続けるブライトキングをなぎ倒した。ナーグル神の祝福を受けた身とはいえ損失した部分大きすぎた。よろめきながらガークは地面を踏み鳴らした。

画像6

損傷しながらもガークは、真っ直ぐ玉座に向かっていた。その前にゾンビドラゴンが立ちふさがり吠えたてる。毒の息吹を吹きかけそのまま首元に食らいつこうとする骨龍を触手で絡め捕りがっぷり組み合った。触手から逃れようと爪を腹に突き立て裂き、抉る。肉塊の化け物の腹からは臓物がボタボタと滑り落ちた。

ずいぶん長く組み合っただろうか、一瞬だけゾンビドラゴンが身じろぎした。その瞬間、骨の潰れる嫌な音が響きゾンビドラゴンは動かなくなった。

画像7

ゾンビドラゴンが打ち捨てられペリグリンは、明らかな動揺を見せた。その動揺は近づいてくる鐘の音によりグール達にも伝播した。追い打ちとばかりにフェクレント・ナールモウの淀みからプレイグベアラーの群れが這い出てくる。その腐敗の群れにペリグリンらフレッシュイーター達は飲み込まれていった。

また「贈り物」を届けた‘‘グロット‘‘兄弟たちは、また放浪していく。

汝、大いなる尊父ナーグルの家族となれ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?