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【Dota2】ゲーム"崩壊"!? TI10メインイベント名シーン集【世界大会】

TI10、終わっちゃいましたね。

選手たちはそれぞれのモチベーションを持って活動を再開していくことでしょう。
既に引退やら移籍やら、様々なニュースが界隈には届き始めています。
しかし私はもう少し余韻に浸っていたいな、なんて思います。

というわけで今回は様々なドラマがあったTI10のメインイベントの中から、私の心を捕らえた4つのトピックと、そして今後伝説として語り継がれていくであろう、決勝戦について語っていきます。

なお、今回は多少ゲーム内での出来事にも触れることがあります。
くどくならない程度に説明をするつもりですが、ある程度どういうゲームなのか知っていないと分かりにくいかもしれません。


1. 文字通りの死闘(PSG.LGD-T1)

最初のトピックはこのカードの第2試合に起こったある"珍事"です。
この事件にはBuyback(バイバック)というシステムが関わっているのでまずはその説明から。

多くのMOBA系ゲーム同様、ゲーム中にキャラクターが死亡するとリスポン時間が決められ、その間は基本的に操作をすることができなくなります。
お金を消費してそのリスポン時間を即座に0にするのがバイバックという機能です。

一見便利なようで、というか実際便利なシーンもあるのですが、もちろんバランスが考慮された設定になっています。
何も考えずに使うとバイバックのお金を取り戻すことができなかったり、次に死亡したときのリスポン時間が長くなり損をしてしまいます。

もちろんプロのプレイヤーはその辺りを熟知しているので、ここぞという勝負どころ以外ではあまり使われることはありません。

ここまで言うと何が起きたか分かるかもしれませんね。
そう、大量のバイバックが一度に使われました。
具体的には1回の集団戦で「10人全員バイバック」。

動画を探したのですが非公式の切り抜きしかなさそうだったのでここに貼るのはやめておきます。
"10 buybacks"とかで検索すれば色々と見つかると思うので気になった方はぜひご覧ください。

2分間に渡る集団戦を経て10人全員バイバックしたにもかかわらず、結果的に全員生きた状態で集団戦が終わる光景は、恐らくTIに限らずとももう二度と見られないのではないでしょうか。

2. 兄弟戦争の果てに(OG-Quincy Crew)

さて、そんな衝撃的な試合がありながらも、前半戦の話題の中心は(私のひいき目もあるでしょうが)3連覇を目指すOGでした。

Upper Bracketの初戦、Team Secretとのヨーロッパ強豪対決にストレートで敗れたOGはLower Bracketに回ります。
対戦相手は北米のQuincy Crew。

OGのエースSumailと、QCのエースYS(YawaR)の兄弟対決、それも負けた方が大会を去ることになるLower Bracketでのつぶし合いということで注目を集めました。

めっちゃ似てますね。
ちなみに彼らはパキスタンの出身。Sumailが弟です。

試合は今大会ここまで低調気味だったOGのミッドプレイヤー、Topsonの活躍もあり2-0でOGの勝利。
2戦目投了の瞬間にYSが残した…いえ、ここはあえて"遺した"言葉が大きな反響を呼びました。

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グッドゲーム。幸運を祈る、弟よ。 -YS(Quincy Crew)

全世界が泣いた。

なおOGは次の試合でTeam Spiritに敗れ大会を去り、夢の3連覇は夢のままとなりました。

3. 戦場のメリークリスマス(PSG.LGD-Team Secret)

話は一気に進んでUpper Bracketの決勝。
強者と言われ続けてはや数年、未だTI制覇が遠い2チームであるPSG.LGDとTeam Secretの戦いとなりました。

この第一試合で、PSG.LGDはTeam Secretを圧倒します。
その原動力となったのがTinyとLycanという2キャラのコンビネーション。

どういうコンビなのか、どういうコンボなのか、簡単に説明します。

Lycanは名前の通り人狼モチーフのキャラです。
ある条件を満たすと味方を狼に変身させることができるようになります。
これにより狼になった味方は圧倒的な攻撃力と機動力を得ます。

一方でTinyは岩を身にまとい(というか岩そのもの?)相手をスタンさせたり投げ飛ばしたり木を引っこ抜いてそれで殴ったりする、かなりパワフルなキャラです。
この手のキャラにはありがちですが、攻撃速度や足が遅いのが欠点です。

というわけで見るからに相性がいいですね。
もちろんTinyを狼に変身させて暴走させる、というのが狙いです。

元々有名なコンビネーションの一つではありましたが、それにしてもこの試合のTiny Lycanは圧倒的でした。

LGDのAmeはこの試合で、Tinyが武器として使う木をクリスマスツリーに変えるスキンを使っていました。
結果として「岩男が夜な夜な狼に変身してクリスマスツリーで殴り掛かってくる」という構図に。

TI中継が新種のホラーゲーム実況と化した瞬間でした。

ちなみにこの章のタイトルはノリ100%で付けました。
同名の映画が好きな方には申し訳ありません。

4. 2日連続で新記録を作る男(Yatoro, Team Spirit)

これは1試合にフォーカスした話ではなく、大会全体での通算記録に関する話です。

チーム戦形式のゲームではマルチキル、とりわけ短時間で次々と相手を倒すと特別な演出が行われることが多いです。

Dota2においては2~5人連続キルが発生すると次のように呼ばれます。

2: ダブルキル(Double kill)
3: トリプルキル(Triple kill)
4: ウルトラキル(Ultra kill)
5: ランページ(Rampage)

ちなみに5人制ゲームではありますが、状況次第で6連続キル以降も発生することはあります。ただしゲーム内の表記はrampageのままです。
実況などでは6人目を倒すことをdouble rampage、7人目をtriple rampageと表現します。

この連続キルの中でもランページは別格の扱いです。

当たり前ですが、実力が拮抗しているプロの試合においてランページが出ることはそうそうありません。
事実、過去9回行われたTIメインイベントにおいてランページを達成したのはたった4人でした。

そして今大会、Team SpiritのエースYatoroがIGとのUpper Bracket Round 1でMorphlingを使いランページを達成、5人目としてその名を刻みます。

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しかし彼はここで止まりません。

トーナメントが進行してLower Bracket Round 5にてIGとの再戦になったTeam Spirit。
Drow RangerをピックしたYatoroがなんと再びのランページ。
1大会で2回のランページは史上初の快挙となりました。

が、まだ終わりません。

史上初の快挙を達成した翌日、Grand Final進出をかけて行われたTeam Secretとの試合、それも両者後がなくなった第3試合。
今度はSvenを使ったYatoroがまたしてもランページ。

あまりにも連発するのでゲーム性が変わったせいなのでは?とか言いたくもなりますが、今大会ランページを出しているのは彼だけです。(のはずです。違ったらごめんなさい。)

やはり単純に昔よりゲームスピードが上がったとかShardとかスキル追加とか、そういう要因だけでは片付けられないかなと思います。

Yatoroは18歳という若さで初めてのTI参戦となりました。
このランページ三連発という実績の他に、20試合で14もの違うキャラクターを使いこなすという幅の広さでも有名になりました。

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名実ともに世界最強キャリープレイヤーの一人に名乗りを上げた彼の今後の戦いぶりは、今後のプロシーンでも注目を集めることでしょう。

5-1. Grand Final 前半戦(PSG.LGD-Team Spirit)

さて、TI10の決勝戦、Grand FinalはPSG.LGDとTeam Spiritで行われることになりました。

片や優勝候補のド本命、Dota最強の国からやってきた最強チーム、PSG.LGD。
片やダークホースなどという表現すら過大評価に思えるほど、あらゆる人々の予想を覆してここまでやってきたロシアの新星、Team Spirit。

当然、戦前の予想はPSG.LGD優位。
それはそうです。彼らはグループステージから通算してもなお、2試合しか落としていないのです。(決勝開始前の時点で21勝2敗)
そんな彼らと戦って3本取らなければ優勝はできません。あまりにも高い壁。

しかしそれでも、若さと勢いのあるTeam Spiritに、ひょっとしたら何かやってくれるかも、という期待の混じった予感のようなものを抱いていた人も多かったことでしょう。

そして第1試合、その"まさか"が待っていました。
それまで今大会ではほとんどピックされてこなかった、Naga Sirenを使用したTeam Spiritは一度もリードを許すことなく完勝。

決勝前の時点で既に使用しているキャラの種類数が多いことで話題になっていたYatoroが、決勝でさらに別のキャラを採用したということで、底の見えない強さが際立っていきます。

そんな中で迎えた第2試合、今度はオフレーナーのCollapseがMagnusを使用して大暴れ。
これがチームとしての勢いの差だと言わんばかりに次々と戦いをしかけ、PSG.LGDに息をつかせぬ2連勝。

PSG.LGDの繰り出すLycan戦術(Tiny Lycanではありませんでしたが)も、Morph Shakerという別の非常に強力な戦術も、まるで歯が立ちません。

あっという間に2-0。5本勝負でなければここで終わっていました。
しかしこの試合はGrand Final。まだ終わりません。

5-2. Grand Final 後半戦(PSG.LGD-Team Spirit)

迎えた第3試合、当然戦っている彼ら自身も、そして見ている我々も、先ほどのMagnusの大活躍が脳裏に深く刻まれています。

ここはMagnusをBANして、それから考えようというのが普通の発想だと思います。思っていました、少なくとも私は。

しかしPSG.LGDはここであえて相手にMagnusを取らせます。
そしてその上で、正々堂々とそれを潰しにいったのです。

LGDが目指しているのは目先の一本を取ることではない。
優勝するためには後3本勝たないといけない。
ここでMagnusをBANしたところで、相手の勢いは完全には止められない。
むしろここは相手が勢い込んでMagnusをピックしてくるところを、受け止めてこそ流れはこちらに来る…!

※この枠内は完全に私の妄想です。

まぁそんな思考があったのか無かったのかは、もちろん定かではありませんが、結果としてこのピックが大当たりします。

先ほどの試合では2キル0デス20アシストと好き放題に活躍したMagnusが、この試合では0キル8デス10アシストと大ブレーキ。
PSG.LGDのTinkerというキャラのピックも光り、1本取り返します。

そして迎えた4本目、今度もMagnusのBANはありません。
当然のようにピックされるMagnus。

しかし、今度は陣営が違いました。

そう、この試合でMagnusを使ったのはPSG.LGD。
見事な意趣返しで試合を掌握。

試合時間わずか24分という今大会メインイベントでも2番目に短い瞬殺劇で2-2のタイに持ち込みます。

5-3. Grand Final 最終戦(PSG.LGD-Team Spirit)

勝った方がTI制覇、という大一番がやってきました。
PSG.LGDはやはりMagnusをBANしません。
そして、満を持して"あの戦法"を選びます。

Upper Bracketの決勝でTeam Secretを絶望の底へと叩き落した、あの戦法。
Dota2をMOBAからホラーへとジャンルを変えてしまった、あの戦法。

Tiny Lycan。

一方Team Spiritはというと。当然。

Magnus。

これはエキシビションマッチではありません。
TIの、決勝の、最後の、試合です。
温存する戦術はありません。次への布石を打つ必要はありません。
お互いに相手の力を出させようなんてことを考えているわけはありません。
水面下では様々な思惑がすれ違い、ぶつかり合い、その結果がこのピックになった、というだけの話です。
しかしここまで来てしまえば見ている私たちにとってはそんなことは些末なことです。

最高の舞台は整いました。

無題

大一番らしく静かに始まったこの試合が動いたのは開始から18分後。
画面下側、タワー近くで起きた戦いをTeam Spiritが制します。

Dotaは本当に恐ろしいゲームです。
今まで試合内容にほとんど触れてこなかった私が、ここでわざわざ取り上げるほどの大きなミスではないと思います。
それに、戦いを制したとは言ってもTeam Spiritもそれなりに犠牲を払いました。決して完全勝利ではありません。

しかしこの時を境に、徐々に徐々に、しかし確実に、Team Spiritへと流れが傾いていきました。

LGDも自分たちに流れが無いことは自覚していたことでしょう。
それでもここまで来たら自分の道を進むのみです。
予定通り岩男を狼に。

ところがどうしたことか、倒すべき敵がいません。
かつて狩りの合図であった狼の遠吠えは、今は戦場に響き渡る孤独な鳴き声でした。

そして彼らに代わって狩りを始めたのがMagnusでした。

その後の出来事は、ぜひ皆さんの目で見て欲しいと思います。

Collapseがその名の通り戦場を崩壊させていく姿。
PSG.LGDの執念が呼んだ土俵際の粘り。
何か一つ間違えればひっくり返ったかもしれないRoshanを巡る戦い。

そして歓喜の瞬間。

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Team Spirit。
東ヨーロッパ予選を勝ち上がりTI出場権を獲得。
グループステージは10勝6敗。
メインイベントはUpper Bracketからスタート。
1回戦、Invictus Gamingに敗れLower Bracketへ。
Fnatic、OG、Virtus.pro、Invictus Gaming、Team Secret。
それはさながらDota界のボスラッシュ。
長く遠い、あまりにも険しい道のりを乗り越えて決勝へ。

PSG.LGD。
DPCポイント2位で予選免除。
グループステージは15勝1敗。
メインイベントはUpper Bracketからスタート。
T1、Virtus.pro、Team Secret。
もはや最強チームであることに疑問の余地は無い。
全てを倒し決勝へ。

対照的。
もはやそんな言葉で片付けてはいけないくらいに違い過ぎた彼ら。
そんな彼らが真正面からぶつかり合った決勝戦。
結果。

無題




最後に

はい、というわけで最後の方はもうなんか感情100%で書き殴ってしまいました。
ここまで来たら後書きも無しにして画像ドーンでぶつっと切って終了、というのもいいかなと思ったんですが、一応ここに私らしく蛇足を描き足させてもらいます。

TI10、最高でした。

正直見てない試合もかなりいっぱいあるわけですが、最後の方は土日だったこともあってリアルタイムで視聴できました。
決勝とか終わった時には月曜の3時でしたけどね。
これだけの試合が見れたので後悔はありません。

世界は未だにこういう状況ですし、今大会も急遽試合会場に決定したルーマニアの状況があまり芳しくない中で無観客での強行開催となってしまいました。
そんなわけで来年のTIをどうするのか、みたいな話はまだ聞こえてきません。
でもきっとまた、素晴らしいDotaを見られるその日が来るのでしょう。

それではまた。

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