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初めての全身麻酔は想像してたのと全然違った

 コロナ禍の少し前、手に腫瘍ができて摘出手術を受けたことがあります。
 人生初の全身麻酔は、なかなか面白い体験でした。

 いよいよ手術開始、という時。手術台の上で消毒液を塗られたり、酸素マスク(全身麻酔中は自力で呼吸ができなくなります)が装着されたりしていると、急に緊張してきました。モニターがピコピコとけたたましい音をたてています。心拍数が跳ね上がっているのです。

 深呼吸して落ち着こう、と目を閉じて息を吸った次の瞬間、「終わりましたよ〜」という声が。目を開くと、執刀医が上からこちらをのぞき込んでいます。

 やだ先生嘘でしょう、と言いかけて、あまりの手の痛さに呻き声が出ました。見ると包帯でぐるぐる巻きにされ、ドラえもんの手みたいになっています。手術は本当に終わっていたのです。壁の時計を見ると2時間近く経っていました。

 全身麻酔にかかる時というのは、意識が少しずつ遠のいていき、目が覚める時も意識は徐々に戻ってくるものだと思っていました。
 でもそうではありませんでした。スイッチを切りかえたみたいに一瞬で意識がなくなったり戻ったり。時間が経過した気が全くしなかったのは不思議な感覚でした。

 大変だったのはそこからです。
 この段階ではまだ体に力が入らず、起き上がることができません。でも意識ははっきりしていて、とにかくキズ(手術で切ったところは「傷」ではなく「創」と書くそうです)が痛いのです。看護師さんが「痛み止めの点滴を打ちましょうか」と言ってくれたのでお願いしました。

 それに、ものすごく体が冷えていました。寒さで歯がガチガチいっています。
 手術室の室温がかなり低めのところへ、ほとんど裸に近い格好(メスを入れるのは手首から先だけなのに、何故パンツ1枚で手術台に上がらなければならないのでしょうか)に布1枚かけられただけの状態で2時間近く寝ていたのです。
 その上、全身麻酔中は体温調節ができなくなります。それも冷えの原因です。
 寒さを訴えたら看護師さんが湯たんぽを持ってきてくれました。

 点滴で痛みがやわらぎ、湯たんぽで体が温まってくると、ホッとして眠くなりいつのまにか寝てしまいました。
 昼寝から覚めたらもうすっかり麻酔が抜け自分で歩けるようになっていて、遅い昼食もおいしくいただきました(当日は朝から絶食でしたしね)。

 全身麻酔で時間が飛ぶ感覚は面白かったけれど、痛くも何ともなかったのは手術中だけで、キズが再生し痛みがなくなるまでに半年くらいかかりました。
 大変でしたが、おかげさまで今は不自由なく手が使えます。

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