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8月のスーパー売上高は前年比0.6%増 畜産物は5か月連続の前年割れです

日本チェーンストア協会が発表した8月のスーパー販売統計を公表しました。
それによれば、先月に比べ総販売額はわずかに上昇し、行動制限がない8月は衣料品、住居関連品の販売が好調であったとされます。
食品は、外出機会(旅行や帰省)が多かったことで苦戦していると分析しているようです。

気になるのは食料品で先月比97.1%で、外出機会が多いことだけなのか気になるところです。

私たちの畜産品は先月比94.6%と5か月連続の減少です。

畜産品は、牛肉、豚肉、鶏肉の精肉、鶏卵、ハムやソーセージの加工を指しますが、8月の商品の動きでは、精肉は動きが鈍かったとされ、鶏卵や加工も動きは鈍いとされました。

8月の全国小売価格状況と重ねますと、鶏卵10個入1パックは227円となり、本年1月から上昇傾向が続いています。
昨年の大規模発生した鳥インフルエンザによる供給不安が生じていた昨年8月を見ても、最高値は226円と今年はその状況を超えます。
昨年は相場が秋にかけて下がっていきますので、鶏卵販売価格も下がっていきますが、今年は昨年と異なる相場展開ともみられ(例年の上昇相場に戻る)ますので、この先も鶏卵価格は上昇していく見込みです。

弊所の鶏卵販売調査では、消費は順調に見えます。
売れ残り品の残数が例年と比べ少なくなっているという声も聞きます。
仕入れ量は昨年と比べ多くはないものの、残品が少ないという傾向です。
外国店舗では、まとめ売りの関係で20個入りが基本ですが、これも概ね良好です。

以前は、安いものが売れて、中高価格帯には価格順で売れていくという傾向でしたが、鶏卵価格全体が上昇していますので、消費者も価格重視ではあるものの激安だから買う、買わないという判断ではないように見えます。
つまりレギュラー卵が227円だとしたら、中価格帯(餌メーカーブランド卵)は298円、高価格帯(餌配合等のブランド卵)は398円といった配列が多いですから、その差が小さい中価格帯で71円、高価格帯で171円となります。

消費者の鶏卵に対する価格の許容は以前に比べ広がってきているようです。

ですが、6個入り400円を超える平飼い等のブランド卵は以前と比べ横ばいか若干の減少気味とも聞きます。

一昔前は1パックが210円程度が許容範囲と調査していましたので、商品への価格転嫁はそうストレスなく進んでいったとも理解できます。
これを裏付けるように、小玉をミックスした鶏卵は価格が手ごろになりやすいため、目玉商品として扱う傾向が見られますが、以前と比べると少し変わるようです。
小玉鶏卵の標準価格は150円程度で、標準(MSからLまでのミックス)卵は227円ですからその差は72円ありますが、消費者は価格だから選ぶというわけではないようです。
つまり内容量が小さいことで結果的に高いと感じるのかもしれません。(使うときにデメリットを感じ、わずかな価格差でも割高な商品と認知してしまう傾向がみられるようです)

このため、10個入りの次に売れているのは個数が少ない物6個入り、4個入りとなっており、価格は大事だが、内容量が少なすぎてもよくないという傾向になりつつあるようです。

この先、鶏卵価格は相場上昇もあり上昇していくと思われます。

価格、鮮度、美味しさで選ばれるものとして認知されてきた鶏卵は、価格、鮮度、美味しさの他にサイズも重要視されつつあります。

高いからこそ、少しでも大きい物を選ぶのかもしれません。

このこともあり、大玉ミックス卵も250円前後しますが人気になっているようです。
標準に比べ30円程度高いのですが、入荷数が少ないこともありすぐに売り切れると聞きます。

今回の発表の畜産物は鶏卵を主眼に調査結果を反映したものではありません。
精肉や加工肉に対する売り上げについて触れていると思います。
食肉は、全体的に価格は上昇しており牛肉も外国産を中心に値上げを意識されています。それに引きずられるように国産も軟調気味です。
以前に比べ牛肉コーナーに足を止める消費者が少なくなっているようです。(値引きシールがあると足を止めるようですがそれでも手に取る方は多くはありません)

豚肉も国産はこの5年にはない高価格帯に移行しており以前と比べると国産より外国産の取扱いが増えたこともあり、国産だからという意識が少しづつ薄れていくように感じます。

この先牛肉のように外国産が主体になり必要であれば足を止めるという認識にこの先5年10年先変わるのかもしれません。
そうなりますと、需要関係とのバランスに変化がある可能性もあり、兼業している方々は引き続き販売動向に注視していただきたいと思います。

少しづつですが、国産半分外国産半分という売り場面積の争奪戦に移行している傾向が散見されます。特に外国産は複数の生産国を扱うようになりました。
価格を意識して、できるだけ仕入れしやすい国を探している商社筋の動きが垣間見れるような感じがあります。

スーパーの販売も昨年より厳しさを感じるようになりました。
本年も地域密着型店舗の廃業や大手への移行といった動きが続いています。
物価格が上がり、お客様は安い物満足できるものを探し始めています。

収め先があるから安泰では、農場も生き残れないような時代に入ります。

生協も、昨年に比べ個別配送の扱い数が減少していると報じています。
生協は会員数が多く店舗もありますから安泰と一時期よく言われました。
ですが、配達してくれるから、良い商品だから少し高いという認識も一定数存在します。

良い商品は以前の「安全で安心できるもの」というキーワードより、「おいしく納得できるもの」という認識に変わりつつあるように感じます。

少し前の「餌は無農薬や遺伝子非組み換え飼料で飼養した安全な鶏卵」では中々理解を得にくい時代になっています。
つまり、鶏卵にその点を購入メリットと考える消費者は少なくなっているとも言えます。
安全安心は当たり前なのに、非遺伝子だからと言われても直接食べるわけではなくその弊害が現時点見られないということ、それだけの高価格帯はなかなか理解を得にくいという現在の消費者意識があります。

実際消費者の選ぶ基準では上位ではなく、下位に位置し時代は変わっていることも認識しておく必要があります。(基準は、価格、鮮度、美味しさ、メジャー(ブランド力)、サイズ、生産者や地域(ブランド卵のみ)、餌のこだわりと続きます。)
コロナで接触が少ないという安心感が主にあったからとも言いますが、今は行動制限もないことから活動して、安いものを探しに行く消費者の姿が見られます。

生協だから安泰、販路のスーパーがあるから安泰では、この先のインフレともいえる時代安心できるものではありません。

消費人口が減少して販路の獲得が激しくなっていくのはこの3年ぐらい前から言われていました。
その後コロナもあり、多くの方は忘れていたのかもしれません。

いよいよ人口減からどのように獲得できるのか考え、良いものを作っている農場であれば消費者との接点を店舗任せでは難しくなっていくという現実を見据え、農場が前に出て販売していくのでしょう。

西の大手養鶏業者は、ホットサンドを提供する店舗を東京に作ります。
卵焼きを挟んだホットサンドはおそらく通勤会社員に支持されることでしょう。
外食も高くなり、都心での昼食も高くなりつつあります。
その中にホットサンドが参入し、800円であっても勝算はあると感じます。
昼食そのものが800円以上するからです。地方では考えられないでしょうが都市部は一般的です。
それを裏付けるように大手ファミレスはこの10月再度の値上げを都市部だけ実施し、地方店舗は価格維持をします。
それは、都市部はそれだけしても収益を見込めると判断しているのです。

皆さんは、この先どのような戦略を描くのでしょうか。
そのまま今の考えで十分という方もいるでしょう。

ですが、このままでは静かに衰退してしまうと考える農場もあります。
だからこそ動き、売ることを真剣に考えるのです。
昔と違い、餌にこだわるだけ、安全で安心だけでは消費者は当たり前だからそれで?
となっていくでしょう。

では、次の一手はどうしましょうか。

何も考えず行動しないことは安泰とも言います。
安泰は静かに衰退していくことともいいます。
それは、時代に対して何も行動を起こさないからです。

消費者は小さい農場1つ1つに愛着を持ってはいません。
だから静かに衰退し廃業する農場が出ても社会は驚かないのです。
ですから、食品は強い会社と考えていくと結果何もできず、静かに衰退し去っていくのです。

今こそ、次の1手を考えていきませんか。
多くは、すぐに利益に結び付かなくても自社をアピールする動きを始めています。
無意味といわれる対面販売という方もいます。
ですが、消費者は全国だけではなく、皆さんの地域も大事な消費者です。
ファンベース手法と呼ばれるもので、この製品に共感して買ってくださる、いわゆるファンを作る方法です。
この効果には、中期的にみて固定客を確保できる効果が期待できることから、全国区ではなく狭い範囲(地域や固定ファンを確立する)でお客様に知ってもらうものです。近年の鶏卵移動販売もこれに該当するでしょう。

知ってもらい購入していくのは販売の王道です。

それがあるのがブランド力です。

認知され信頼される商品という意味です。
ですから時計やカバンにブランドがあるのはそれは高いだけのものではなく、持っていてステータスを感じる又は高いからこそ資産価値があるという認識です。

ブランドは大きくなれば皆さんの農場も東の大手や西に大手と呼ばれるかもしれませんが、そこまでには時間と信頼の熟成が必要です。

だから今からでも始めていくのでしょう。

1年先に芽がでなければ無意味という合理主義の方もいますが、そもそも農場のブランド力がないのも事実で、1年で芽が出ると考えること自体間違いです。それは自社を過大評価しているだけです。

皆さんも知っていますが、消費者から見て養鶏場の大手は存在しません。
つまり、大手という認識は業界内又は業界が言うからと報じるだけです。

消費者は、聞いたことがある名前(森のたまご)、キャラクター(きよら猫)といったものに聞いたこと、見たことがあり安心できるから購入しているだけのことで、大手だからという基準ではなくブランド力で購買意欲を持っているのです。

鶏卵は業界人だけが購入するアイテムではなく、消費者が主役です。
ですから、消費者を知り考えるのです。
そこに業界の古い考えはあまり必要はありません。

さて、2023年はどのような年になるのでしょうか。

世界はスタグフレーションに入り心配という声も聞きますが、日本の政策では円安が続くものの国内回帰という産業も現れ新しい時代に入るのかもしれません。
ですから暗い時代ではなく、新しいことが起こる時代とも言えます。
その時皆さんの鶏卵はどのような立ち位置にいるのでしょうか。
残りの3か月、少し考えてみましょう。


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