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配合飼料の形状でコスト増をやわらげることは可能なのか

配合飼料が最高値更新を続けています。
7月からの配合飼料価格は畜種平均価格11400円の値上げとなっています。
養鶏用飼料の平均値は8万円台後半から9万円になるものが多くなり、食下量が下がる時期とはいえコスト増を軽減できるできる金額ではありません。

秋以降(10月以降)もコーンは生育次第、コーン争奪次第により動くと思われますし、投機筋が多く入り円安傾向がさらに進むともいわれ一番読みづらい状況です。
輸送コストも不明で、原油相場の秋以降は北半球が暖を取るために引き合いが増える時期にもなり、生産量とのバランスで相場高になる可能性もあります。

では、農場はどのようにこのようなコスト増に立ち向かうのでしょうか。

1,基金や補助金を受けて飼料価格の上昇を相殺する
養鶏家に向けて配合飼料価格の上昇に備える基金を創設し多くの方が加入されています。
「通常価格差補填金」「異常価格差補填金」があり、現在どちらも発動しています。
補填額は合計で1トン当たり5200円となっています。

農場加入者は1トン当たり600円を積み立てる必要があります。なお、今年度から新規加入される方の別途納付金は0円に改められました。(昨年脱退されて再加入の方は別途負担金が生じます)

この制度の補助を東京都が行っており、20%相当額を補助していますのでご参考になさってください。

なお、飼料価格等変動が大きいことから農林水産省は本年度第1,2四半期(4月から9月分)については、発動要件を緩和し運用することになっています。

具体的には、異常価格差補填金は輸入原料価格の基準価格が115%を超えると発動されます。概ね1トン6000円程度の上昇で発動されるものです。
これを112.5%に時限緩和されますので、1000円程度の減少でも発動され、負担を緩和するとしています。

この他に都道府県が行う補助制度があります。
飼料価格への補助事業を今年度から開始する自治体が多く、申請期限を受け付けているものや一旦受付を止めて、次期から実施するもの等様々ありますので、お住いの自治体にご確認ください。

例えば、静岡県は配合飼料価格制度に加入している場合で7873円、岐阜県も同様の条件で5300円、千葉県は1トン当たり600円、埼玉県も500円と条件の有無がありますが、補助事業があります。

併用されるとよいと思いますので、積極的に活用し農場運営に当たっていただきたいと思います。
それ以外の県でも補助事業がありますので必ず自治体ご相談ください。

それ以外に、配合飼料の使用量を低減化することで奨励金を支払う制度もあります。
配合飼料価格安定制度の契約数量に応じて交付されるもので、最大1トン5300円となります。
飼養の削減方法を構築し取り組むことで補助が受けられ、配合飼料の一部依存度を下げることもできます。

2,配合飼料の効率的な使い方
補助だけでなく、効率的な使い方を模索される方も多いと思います。
多く言えますが、配合飼料のコスト減には、グレードダウンして仕入れ費用を抑えることか、食下量を削減して出費の抑制(オーダー回数の軽減)しかありません。

ですが、どちらも鶏をよく見て変化を見抜く力がない農場ほど生産量が減少し、慌てて元に戻すと、食下量は戻るが生産量は戻らない(出費は増えるが収入は減ったまま)という残念なパターンも存在します。

ですから、中途半端な取り組みは逆効果に至り、最初から取り組まなければ被害がなかったという人災が見られ、これを教訓に取り組みをしないという農場もあります。

このこともあり、配合飼料へ手を付けないで商品価格への転嫁を試みるところもあります。
規模や販路先の力関係で値上げの可否が決まりますが、全農ブランドになっている農場では全農が卸先に1パック40円から70円程度の値上げを通知し4月から仕入れ価格を見直ししています。

全農ですから切るという販路先はまず聞きません。
卸か販売店が受け入れるか一定額だけ転嫁したかは、その先の問題で生産者側には影響はありませんが、このような交渉力が皆さんできるかは未知数です。

道の駅等独自の販路を持つ農場は、必要な経費を転嫁できているところも多く聞きます。1パック100円や、10%の値上げといったコスト増を吸収するご努力をされています。

皆さん方は独自販路を持つ農場ですが、生産量のすべてを販売できていればよいでしょうがそうもいきません。
そうなりますと、コスト増は相場次第というところもあるでしょうし、だからこそ飼料高は大変なのだと多くの方は言うのだと思います。

では、やはり何等か対応しなければならないというところもあると思います。

配合飼料には、クランブル、マッシュといった形状が一般的です。
マッシュは基本的な穀物等の粉砕をして食べやすくした飼料です。
クランブルもあります。これは加湿し過熱してペースト状にして乾燥させ食べやすい大きさにカットした細い棒状又は粒状の製品です。
一昔前は、マッシュより高く成鶏ではもったいないという話も聞きます。
ですが、餌が高額になり無駄をなくすためにはクランブルも選択肢になります。

特に、食下量を下げたいと考えたとき、バランスよく栄養を与えるにはクランブルは好適です。
鶏は餌が少ない場合競争が高まります。
鶏の習性として粒状から先に食べ粉状が最後に残ります。
つまり、エネルギ源のコーン等が先で、粉状微量栄養素等が最後に残るという状況です。

これでは、栄養素だけですとエネルギーが不足し満足感が得られず鶏の強弱がはっきりし斃死したり、体重過多が増えていき、斉一性が悪くなりやすくなります。

これが、生産量の減少やヘンハウス産卵率の悪化につながり、経営指標からみてもすぐれないものになります。
エネルギーは、成鶏後半になるほど減少化させて、過剰摂取を避けることをします。
エネルギー不足を感じると鶏は満足するまで食べたがるとされます。

しかし、成鶏後半でエネルギー量を下げずに配餌しても食下量を下げることは経験から見てもありません。

それは、そこまで体重増加が進み鶏自身が過剰であっても必要量と認識してしまっているということになるのです。

ですから、グレードを下げれば不足が生じ生産量の減少に至ると考えられます。

恐らく、環境面での対策が最も効果的です。
成鶏では後半に進むにつれて下げていく従来の方法が価格面でも良いでしょう。

そして、環境面で制御できるか考えてみるとよい策が浮かぶと思います。
体重管理が重要で、増体重が目標値に収まっていることを確認し、停滞があれば不足を疑い軌道修正し、過剰気味であれば、減らしていくことになりますが、この時減少量は2%程度までと小さくしていおくことです。

(110gの食下量であれば2.2gとして108g程度までにとどめます。)
これは急激に変化を与えると生産量の低下につながることから、微量の低下にとどめて変化を見極めるものです。

多くはこの範囲であれば被害が生じにくいとみられますので、まずは2%、やがて3%と変化させて鶏を見てみましょう。

今日のまとめ
・餌はコストであると考えるならば、収入で補う(生産量の他、補助金の活用)
・配合飼料は昔ながらのクランブルでも良いでしょうが、切り詰めるならばマッシュも検討してみる
・エネルギーで鶏が食欲を満足させるより、環境面で満足させることをまず考える(コスト削減が可能)
・体重の増加で鶏を見極めると餌の削減の選択も可能(過剰な体重をつけさせない環境を作るとコスト削減が可)

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