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自治は生存の権威なり

10月11日11時から14時の参加者と、落花生の収穫を行ないました。土から掘り出す人、根から房をもぎ取る人、カエルを追いかける人、それぞれの役割をこなせたかと思います。

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とりあえず雨に降られずに済んだことで、無事に収穫を終えることが出来ました。

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生きものを見つけると収穫どころではなくなるあたりがとても良い光景でした。

農本主義者の権藤成卿氏が「皇民自治本義(冨山房)」の中で「社稷を宗とする、我家学の一斑」としたことは大変有名ですが、氏が設立した自治学会での宣言にも注目したい。

宣言
自治は自然の漸化に依て起り、衣食住の調斎に依て成り、共存互済の真徳に依て和す、我邦歴世の制典亦た此に出つ、然れとも自然の破壊、権力の偏僻は竟に此の自然的進歩の行程を閉寒せり、乃ち彼の老者、逸者の杆挌、富者貧者の離乖、上なる者は旧守説に拠り、下なる者は革新論を唱へ、右なる者は資本家を擁し、左なる者は労働者を提げ、一是一非、得失利害論抗反擠して底止する所なきに至れるもの、是れ既到の大勢、積弊の震発なり、其れ然り、吾曹は只た完全なる、自治の恢興を唱導し、以て之れか達成を策進せんと浴する而已、自治は生存の権威なり、平和の信条なり、人文進歩の基源なり、独立自強の礎盤なり、乃ち之れが規矩を明にし、之れか準縄を正し、審考慎思、以て之れが事後に処し、将来と測らんと擬するは、実行の順序に指針を設くるの意なり、吾曹此に自治学会を創設し、(以下略)
(大正9年6月 自治学会宣言書より)

この宣言を「社稷を宗とする」と一言で示しているが、この力強い宣言は、それまで理論をもって関与することあるいは卓上議論に力を注いだ権藤氏がいよいよその思いが確信に至り、自身の行動をもって示す時がきたことを予感させる。

「自治学会」及び会員の社会運動史上における影響は、大正末期の農地解放運動、昭和初期の農村自救運動などにその影響を見ることが出来る。
(滝沢誠著書「権藤成卿覚え書」より)

権藤氏は常々農を中心とした思想を展開し、さまざまな場所で指揮をとってきたが、発展を辞めない、諦めないその姿勢はただの学問的探求ではなく、まさに「社稷を蔑ろにする国家は滅びる」ことへの憂慮であり、つまり次第に農村が自然が農地が痛々しく見えたことから、国家の行く末を案じる「悲痛の叫び」を止めなかったのであろう。「将来と測らんと擬するは」とあるように、今だけではなく未来を憂いていたことが充分に理解出来る。

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「落花生ってこんな風になってるんですね!」「生でそのまま食べてもいいっすか?」「腹壊すよ」「あー、こいつガチで食べてる~」「ウソでしょ」「しかも房ごと食ってるー」「なんだよおれも食いたい」みたいな急展開となる。(※良い子のみんなは生でしかも房つきで食べるのはやめましょう。無農薬は特に。)

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晴れを呼ぶ人々。(笑)

権藤氏の悲痛の叫びは、傲慢で偏りのある権力へ刃として向けられていたことは氏の文章からも見てとれるが、自身の思いをストレートに伝えている部分は「宣言」をした自分自身に対しての覚悟のように思う。更に周囲にも啓蒙として広く活用されるように、とてもわかりやすく記している。こうした「宣言」なるものは、崇高な理想のもとに記されたものが多く、実際のところは宣言をした組織が宣言からはみ出た現実を行なっている場合もあるが、「自治学会綱要」を通してみると「宣言」が虚偽ではないことがよくわかる。例えば、

一、会費金額等は予め之を定めず随時の熟談協議に依り分に応ずる簡節なる方法を執る可し
(自治学会綱要より)

とある。権力を否定し資本主義を否定したところにある共同体あるいは組織が会費数万円だったとしたら矛盾するが、実際に会費を未払いであるが会員として関わっていた人が何人もいたそうだ。これはいわゆるパトロンが存在していた時代であることには注視しなければならないが、しかし、極めて厳密に宣言というものが直接的運動への転換を構築するとともに、滝沢氏のいう「影響」となって多くの人が新たな農民運動へと前進することの事実は、自治学会が会費納入の有無や貧富の関係なく人々に支持されていたあるいは信頼が厚かったことを意味していると言える。(続)

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土に触れてくれた人がいたから、美味しく食べて喜んでくれる人がいた。生落花生は完売しました。信用をおいて世界一高価な落花生を購入してくださった方にはこころより御礼を申し上げます。活きた未来への価値へ育まれたと信じます。自然も人も全ての生きものもそしてこれからの未来もほんの少し良くなったとそう信じます。

次回10月19日が「コロナによる困窮学生への学業・生活支援と農業体験」は終了です。土を休ませる作業をして90日農業(厳密には120日)の完成です。よっしゃーラストスパート、やりきってやろうぢゃないかあ!

花瑛農園では6月よりコロナによる困窮学生への学業・生活支援と農業体験を兼ねてアルバイトを募集してきましたが、最終日までの定員が埋まってしまいました。たくさんのご応募をありがとうございました。


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