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風も生きもの

9月17日11時から14時の参加者と、夏野菜畑を秋~冬野菜畑への作業を行ないました。なぜかはよくわかりませんがテンションの高いメンツでまるでパリピ。

「いまの私の唯一の楽しみがこの畑作業に参加することです」とまで言ってくれて、とてもやめずらい!しかし、実質あと4回で一旦はこの学生支援としてのバイトの募集は終わりです。

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耕作範囲を分担して、順序立てしながら話し合っているうちは穏便だが、クワを持つと人が変わるようになってしまっています。今まで来た人の中でクワの作業が一番うまいのは○○だとか、確か○○は牛糞をこう蒔いていたとか、なかなかおもしろい発言が出てきます。

昔の百姓は、風も生きものだと思っていたらしい。そして風には、神様が宿っていると考えていたんだ。風がまるで、自分の身体を突き抜けていくように感じるだろう。あの時に、風に宿った神様が、人間のタマシイを元気づけて通りすぎるんだよ。だから、風に吹かれると気持ちがいいんだ。(宇根豊 国民のための百姓学)

これは宇根氏が中学校の特別授業で「窓から入ってくる風と、クーラーの涼しい風とではどちらが気持ち良いか」という話の中で、学生たちのほとんどが窓から入ってくる風の方が気持ちが良いと答えた時の返答である。その回答に「理由は?」と尋ねると、「理由など無い。気持ちが良いものは気持ちが良い。」と答えたという。おそらくわたしも学生たちと同様の返答をするだろう。

私たちはいつのまにか、自然現象を科学的に、客観的に分析しようとするようになった。その傾向が進めば進むほど、私たちの自己は肥大化していく。そして、科学的に分析できるという自負が強くなればなるほど、風を受け止める感性は、反対に衰えていく。私たちは、科学的に考えたり客観的にとらえようとすることを、時々はやめたほうがいいのではないだろうか。客観と主観を分けて考えることをやめて、自然に身を任せて、まるごと感じてとらえる力を取り戻さないといけないのではないだろうか。(宇根豊 国民のための百姓学)

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夏野菜にありがとうをして、土を耕し牛糞をまく。だいぶ綺麗になった。

改めて、学生に聞いてみた。「なんで畑が唯一の楽しみなの?」
「なんでですかね。理由はわかりません。でもとても楽しい。」

宇根氏がいう通り、昨今の学問は科学的立証や科学的根拠を追求することに勤しむあまりに、何か大切なものを失っているように思う。また、以前の投稿でも触れたが、日本の「農学」「神学」における見解を「宗教っぽい」などと言って非科学的なものだとして随分と切り捨ててきたが、「風がまるで、自分の身体を突き抜けていくように感じるだろう。風は生きものだ。」と聞いて、ああそうかも知れないと感じる人が、特段何かの信仰をして、あるいは何かに執着して生きてきたからそう感じるわけではないだろう。言葉にも表現出来ない感覚を科学化することは無理どころか無意味で、感覚とは実にそういうものではないだろうか。

信仰の一つの強味は、新たに誰からも説かれ教えられたのではなく、小さい頃からの自然の体験として、父母や祖父母と共にそれを感じてきた点で、若い頃には、しばらく半信半疑の間にあった者でも、年を取って、後々のことを考えるようになると、たいていは、自分の小さい頃に見たり聴いたりしていた前の人の話を憶い出して、かなり心強い気持ちになって(略)(柳田国男 先祖の話-自然の体験)

信仰の一例としてわかりやすい柳田氏の一文を転載したが、こうした家庭内から継承される信仰と、生ける人間の体内に自発する感覚的感性からの信仰とは似て非なるものであることが現代人は良く理解出来ていない。これは、科学ばかりを取り入れた学習形態で衰退したものと考えられる。


トレーサビリティーなんてものはそうした感覚の点で、本来ならば必要がない。感覚的に山田さんが作っているなら美味しくて安全とか、田中さんはいつも畑でかぼちゃに話しかけているからきっと美味しいはず。という感覚は、どこへ行ったのでしょうか。そもそも、山田さんや田中さんのような知り合いとの付き合いもない人が多いかも知れませんが、そうした人は、残念ながら安全で安心な食品を食卓にほぼ並べられません。そこが資本の介入する農作物のデメリットです。

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かぼちゃが徐々に実っています。自然に受粉していますが、この「自然」とはウリハムシ(いわゆる害虫)の神がかった手入れのおかげです。害虫駆除をしないので、数千匹はいると思いますが、ミツバチが少ない地域ではウリハムシはまるで神さまです。(多分そう思うのはわたしだけ)


花瑛農園では6月よりコロナによる困窮学生への学業・生活支援と農業体験を兼ねてアルバイトを募集してきましたが、最終日までの定員が埋まってしまいました。たくさんのご応募をありがとうございました。


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