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さく、メイドになるってよ 5話


さくら:もう、どこ〜?

王子様である○○様がいなくなったことで探すことになった私。

色々なところを探し歩いていると、いつの間にか、私は王宮から少し離れた丘まで来ていた。

周りには何も無く、青々しい芝生に一本の木が生えてるだけのシンプルな丘。

さくら:一国の王子様がこんな所まで来ないよね

太陽の暖かい日差しとふぅ〜と私の髪を靡かせる心地良いそよ風で思わず眠気が誘われる。

さくら:ふわぁ〜....なんか眠くなってきた

少しくらい寝てもバレないかな?

と、思って近くに生えている木に身を預けて目を瞑ろうとすると、

「ねぇ」

さくら:はい! すみません! サボろうとしてました! ホントすみません!!

不意に声をかけられて体がビクンっ!

速攻で謝罪を繰り出す!

「えっ、急に何....?」

少し引いたような声が私の耳に入ってきた。

さくら:あっ、えっと.....

「キョドりすぎ。いったん落ち着きなよ。ほら、深呼吸して」

そう言われて、2、3回すぅーはぁーと深呼吸。

落ち着いた私は、さっきまで聞こえてた声の主を探したけど見当たらない。

さくら:あれ?

「上だよ、上」

その声につられて視線を上に向けると、真っ黒の外套を羽織って、木の幹に座っている一人の人がいた。

フードを被ってるせいで顔が見えない。

ただ、声の様子から男の子だということが分かる。

座っていることに加えて、木の陰でハッキリの見えないけど身長はそこまで大きくない。

多分だけど、私より年下かな?

「こんなとこで何してるの?」

さくら:仕事だよ

「仕事? こんなところで?」

さくら:えっと、人を探していて.....

「人探しか〜、大変だね」

さくら:うん。なんか、急にいなくなったみたいで

「ん? みたい?」

さくら:? どうしたの?

「ねぇ、人探しって言ってたけど、探してる人って知ってる人なの?」

さくら:ううん、一回も会ったことないよ

「マジか.....だったらさ、その探してる人の顔知らないよね?」

さくら:......あっ

たしかに! まゆたんに言われて探しに来たけど、私○○様の顔知らないじゃん!

えっ、それじゃあ、今までの時間と労力何だったの!?

てか、王子様の顔を知らない私も私だけど!

「お姉さんさ....」

さくら:な、何よ?

「何か抜けてるっていうか、ドジだね」

うわぁあああああ!!!

一気に顔が赤くなっていくのがハッキリと分かる。

あぁぁ...恥ずかしい

「アハハッ、お姉さん、面白いじゃん...笑」

うぅぅ....年下にバカにされてるぅ....

さくら:と、年上をバカにして!

「仕事サボって寝ようとしてたじゃん...笑」

フードの隙間からニシシというイタズラっ子のように笑う口が見えた。

さくら:うぅ.....

何も言い返せないよぉ

さくら:き、君はここで何してるの?

「ん? 僕? ただのんびりしてるだけだよ」

さくら:こんな町外れで?

「うん。日差しや風が気持ちいいし、眺めも最高。のんびりするのにここ以上の場所は無いから」

うん。たしかに、この子の言う通りここは良い場所だ

「お姉さんは? 仕事大変なの?」

さくら:まだ分かんないかな?

「どういうこと?」

さくら:私が働き始めたのは今日からだからさ

「えっ、そうなの?」

さくら:うん。今まではお家でお母さん達の手伝いしてたんだけど、生活が苦しくなってさ

「あ〜、他国同士の戦争のせいで物の値段が高くなってるからね」

さくら:それで、私も親孝行のために働くことになったの!

「じゃあ、仕事初日からこんなとこまで人探しか」

さくら:そうなの! こんな仕事内容だとは思わなかったよ

「そりゃあ、ご愁傷さま...笑」

さくら:それに、同僚の人達もなんかクセ凄い人ばっかだし

「おっ、それ僕も同じ」

さくら:そうなの?

「うん。なんか周りには一癖も二癖もある人達ばっかでさ...笑」

さくら:アハハハハッ 笑

「まあ、でも、退屈しないし。それに、なんだかんだで良い人達だからね」

さくら:そうなんだ

「それにしても災難だったね。戦争さえ無ければ、今でも親と一緒に暮らせたのに」

さくら:そうそう! もう、なんで戦争なんか起きるのかなぁ?

「仕方ないよ。国がいくつもあれば避けられない事だからね」

さくら:えっ....?

「一番は話し合いで解決するのが良いんだけどね。そのために外交とかがあるんだし」

さくら:じゃあ、なんで戦争なんか.....

「そりゃ、武力での解決が手っ取り早いからでしょ」

さっきまでのおチャラけた口調から一転、子供からは想像のつかない冷静な口調に変わる。

「まあ、戦争なんかどっちも正義やら大義やらがあるんだから起きるんだし、その正義や大義も立場や環境で違うからね」

さくら:........

「まあ、そのおかげで魔法技術が発展するから何とも言えないんだけどね...笑」

そう言って、自嘲気味にヘヘッと笑った。

「あっ、ごめん。急にこんな話して」

さくら:ううん。気にしないで

「ハハッ、ありがとう...笑」

そう言って、フードの子は木の幹から飛び降りる。

その時、一瞬だけど空中で止まったのように見えたのはきっと気のせいだろう。

うん、気のせいだ。きっと疲れてるんだ

「僕はそろそろ行くよ。早く帰んないと、真佑がうるさいからさ」

さくら:そっか、じゃあね!

「うん。話し相手になってくれてありがと」

まゆって人は、そんなに怖い人なのかな?

ん? まゆ? マユ? 真佑?  .........まゆたん!?

さくら:ねぇ! ちょっと待って!!

「ん? どうかした?」

さくら:もしかして、君はーー

「あぁああ!! 見つけたぁあああああー!!!」

聞いた事のある大きな叫び声と一緒に、土煙を立てながら何かがこっちに向かって来た。

「ゲッ.....」

その正体に気づいたのか、フードの子から「あっ、これヤバい」といった声が漏れる。

徐々に近づいてくる〝何か〟の正体はーーまゆたんだった。

メイド服のスカートが翻ってるのもお構い無しで、大規模な土煙を従えながらダダダダダッという効果音と一緒に猛スピードで走っている。

さくら:まゆたん!?

私達の所まで来ると、キキィーというブレーキ音が聞こえる程の急停止で止まるまゆたん。

まゆたんの足元の地面が抉れてる。

真佑:はぁ...はぁ....やっと見つけた.....

「どうやってここが分かったの?」

真佑:なんかビビッと○○様のパトスを感じました!

「その言い方なんか嫌なんだけど。てか、それで王宮から走ってきたのか? ヤバすぎだよ」

真佑:○○様が勝手にいなくなるからでしょ!

まゆたんの口からフードの子の正体が明かされる。

さくら:や、やっぱり.....

真佑:あれ? さくちゃんじゃん

○○:ん? 真佑の知り合い?

真佑:昨日言った新しい子だよ!

○○:えっ、じゃあ、お姉さんが探してたのって僕?

さくら:う、うん

○○:マジか....なんか、ごめんね

被っていたフードを取って、ペコりと謝るフードの子改め、○○様。

真佑:じゃあ、改めて! ノギー王国の第46王子こと筒井○○様だよ! ちなみに11歳!

○○:よろしくね


拝啓

お父さん、お母さん

ついにご主人様(子供)が現れました



……To be continued

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