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祓い、護る者たち 12話


━━渋谷PARCO 周辺

梅澤:百華剣術・壱式ーー〝撫子〟ッ!!!

鞘に収めた刀から、大我を横一文字に斬りつける。

大我:ハハッ! やっぱ強ぇな、梅澤ァ!

梅澤:いつもうるさいのよ、アンタ

大我:もっと熱く行こうぜェ!

雄叫びと共に、大我の霊力が溢れ出る。


大我:術式展開〝炎猛豪鬼えんもうごうき〟ィイイイッ!!!


術式の発動によって、大我の姿がたちまち炎の鬼へと変化する。

大我:行くぜェ! ーー〝俺殴り〟ィ!!!

大我の炎の拳が梅澤を襲う。

梅澤:くっ....!

梅澤は横に飛び、大我の拳を避ける。

大我:まだまだ行くぜェ! ーー〝俺ラッシュ〟ゥウウウ!!!

大我から繰り出される炎の拳の嵐に、防御で手一杯になる梅澤。

梅澤:あっ、ヤバい

大我の攻撃を捌ききれずに、体勢を崩してしまう梅澤。

その一瞬の隙を見逃さなかった大我は透かさず追い討ちをかける。

大我:もらったァ!

梅澤:ぐっ....

大我の回し蹴りを脇腹にくらった梅澤がビルの壁に叩きつけられる。

大我:こんなもんかよ!

梅澤:やるじゃん

大我:チッ、やっぱホントだったのか

梅澤:なにが?

大我:お前、ホントに術式使えないんだな

梅澤:さぁ、なんのことだか?

大我:ケッ、とぼけんなよ。さっきから術式使う気配が全くねぇじゃねぇか

梅澤:脳筋のクセに、そういうとこには気づくんだ

大我:どうなんだよ? 術式無しで俺に勝てんのかよ?

梅澤:アンタに一つだけ言っとくけど.....

大我:あ?

梅澤:私はね、術式使わなくても強いんだよ!

その言葉の直後、梅澤の姿がその場から消えた。

大我:なっ、消えただと!?

突然の出来事に戸惑いを隠せない大我。

大我:グハッ....!

その直後、大我の体を衝撃が襲い、数メートル後方に吹き飛ばされる。

大我:クソっ、何が起きたんだ....

状況を理解するために、必死に辺りを見回す大我。

その視界に、一つの人影を捉えた。

大我:なっ、梅澤。なんだよそれ....

大我が見たのは、紫色のオーラを纏ってこちらを見ている梅澤だった。

梅澤:これが術式が無くても、私が強い理由

大我:見たことねぇな

梅澤:〝天魔武功〟.....千年前に実在した術師が使ってた技だよ

大我:ハハッ、奥の手ってやつか。いいじゃねえか!

梅澤:アンタじゃ勝てないよ?

大我:やってみないと分かんねぇだろ!

そう言って、大我は拳を握りしめる。

梅澤:いいよ、かかってきな

梅澤も戦闘態勢に入る。

大我:それじゃあ、第二ラウンドの始まりだァ!

梅澤と大我が同時に動き出した。

大我:ーー〝俺殴り・爆〟ッ!!!

大我の拳を梅澤は軽々と回避する。

拳は空を切って道路に当たると、拳から爆発が起こった。

梅澤:なるほど、当たると爆発するパンチか

大我:チッ、これならどうだ!

梅澤:.....?

大我:ーー〝俺バースト〟ォオオオオオ!!!

術式で炎の鬼と化した大我の口から、強烈な炎が放たれた。

梅澤:天魔武功・雷令ノ型......

梅澤の右手に霊力が集まり出す。

梅澤:ーー〝破天霹雷はてんへきらい〟ッ!!!

梅澤から放たれた、強大な霊力を帯びる拳が大我の攻撃をかき消した。

大我:嘘だろ....ワンパンで吹き飛ばすとかアリかよ.....

梅澤:じゃあ、今度はこっちから行くよ....

そう言った梅澤は、独特な構えから大我に飛びかかり、絶え間なく拳を繰り出し続ける。

大我:クソっ...

梅澤の攻撃をギリギリのところで避ける大我。

大我:........っ!

避け続けていた大我だったが、何かに気づいて顔色が変わる。

大我:(マジかよ...拳が....どんどん早くなってやがる)

段々と早くなっていく梅澤の攻撃を避けることができなくなっていく。

梅澤:ーー〝百歩閃雷拳ひゃっぽせんらいけん〟ッ!!!

大我:グハッ...!!

梅澤の拳が腹部にクリーンヒットした大我は吹き飛ばされ、渋谷PARCOにメリ込んだ。

梅澤:最初から思ってたけど、アンタ、ネーミングセンス悪すぎ

そう言った梅澤は、腰に手を当てて顔を上に向ける。

梅澤:はぁ...はぁ...やっぱり、まだ完璧じゃないか

肩で息をしながら、調子を整える。

梅澤:いいのが入ったから、ある程度は動けないはず

大我がもう戦えないと判断した梅澤は、美月と合流しようと歩きだす。

大我:おい! 逃げんじゃねぇよ!

後ろを振り向くと、壁にメリ込んでいたはずの大我が立っていた。

梅澤:その体で動けるとか、頑丈すぎでしょ

大我:まだまだ、こっからだろ! さぁ! 続きやろうぜ梅澤ァ!

梅澤:アンタ、まともに動けないでしょ?

大我:それはお前もだろ、梅澤

梅澤:....!

大我:その技、体の負担が半端ないんだろ?

梅澤:あの中でよく気づいたじゃん

大我:なら、お互い条件は同じだろ!

梅澤:はぁ...後悔しないでよね

すると、梅澤から先程よりも多くの霊力が溢れ出す。

それに応じて、梅澤が纏う紫色のオーラもより一層濃くなる。

梅澤:しっかり防御してよね?

大我:なんだと?

梅澤:今回のはちょっと、本気だすから

今までに無い程の強大な霊力を右手に集約しながら、大我に警告する梅澤。

大我:ハハッ....こりゃヤベェな.....

目の前の状況を見て、大我は戦いを続けたことを少しはがり後悔した。

梅澤:ーー〝開闢震かいびゃくしんてーー


「はーい! そこまでー!!」

渾身の一撃を放とうとしたが、フィールド全体に響き渡る声に遮られて不発に終わる。

梅澤:白石さん?

大我:なんだ?





━━スクランブル交差点

絢音:あれ、もう終わり?

無傷で立っている絢音とボロボロな状態の蓮加や美月たち。

周囲は、氷の塊や破片が散乱し、倒壊した建物の瓦礫で溢れている。

蓮加:はぁ...はぁ...終わったぁあああ!!!

美月:絢音さん、ヤバすぎ.....

白石の終了の合図を聞いて、その場に寝転ぶ蓮加。

美月も安堵と疲労が混ざった顔をしながら、その場に座り込む。

真佑:美月さん! 蓮加さん!

蓮加と美月以上にボロボロな状態の真佑と金川が2人のもとに駆け寄る。

美月:よかった。二人とも生き残ったんだね

金川:はい! お二人のおかけです!

真佑:ありがとうございます!

美月:そんな事ないよ。二人の実力でもあるんだから。ね、蓮加?

蓮加:うん。そうだね

そんな四人を離れたところから見ている絢音の隣に怜奈が立つ。

怜奈:お疲れ様、絢音

絢音:あっ、怜奈。ありがと...笑

怜奈:蓮加は分かるけど、意外と残ったね

絢音:うん。みんな、私の予想よりも強かったよ

怜奈:そっか。絢音が言うなら間違いないか





━━青山通り

あやめ:さくちゃん、大丈夫?

さくら:うん。霊力がまだだけど、動くには支障ないよ

そう言って、差し出されたあやめの手をとって立ち上がるさくら。

遠藤:それにしても、やっぱり、あやちゃんは強いね

あやめ:それは、憧れの人に追いつきたいからかね...笑

さくら:それって、○○さん?

あやめ:うん。あの人に並ぶくらいまで強くならないと....

さくら:凄いなぁ、あやちゃんは

あやめ:さくちゃんだって、飛鳥さんがいるじゃん

さくら:そうだね。私も飛鳥さんに追いつけるように頑張るよ

白石:最後まで残ってる10人は、こっちに転送するから少しだけ待っててね!

術師たちの戦いで半壊状態になった渋谷に白石の明るい声が響き渡る。

白石:とりあえず、これで選考会はお終い!みんなお疲れ様ぁー!!!



……To be continued

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