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さく、メイドになるってよ 7話


〝セイデン王国〟

ノギー王国の隣に位置して、ノギー王国とは古くから同盟関係にある国。

そこに向かう馬車の中にいる私、○○様、まゆたん、璃果ちゃん。

それに加えて、くじ引きで勝った梅澤さん、与田さん、蓮加さん。

梅澤:ちょっと、与田! いい加減、お菓子食べるよやめなさいよ!

祐希:もう、うるさいよ! ○○が寝てるんだから静かにしなよ!

蓮加:あっ、与田〜。クッキーちょうだい

祐希:いいよ〜

璃果ちゃん特製クッキーを食べる与田さんと蓮加さん。

そんな2人を見て、呆れた顔をする梅澤さん。

さくら:ねぇ、まゆたん。今から行くセイデン王国ってどんな所なの?

真佑:んとね〜、あれ? どんな所だっけ?

「あれ?」と自然とぶりっ子ポーズになって考え込むまゆたん。

しっかりしてる時としてない時のギャップが激し過ぎるよ、まゆたん

璃果:簡単に言うと、芸術の国だね

困るまゆたんの代わりに答えてくれた○○様を膝枕して寝かしてる璃果ちゃん。

ていうか、○○様の寝顔可愛いなぁ

さくら:芸術の国?

璃果:絵画や彫刻とか色々なものがあるけど、特に音楽が有名だね

真佑:あ〜、そうそう! 流石、璃果ちゃん!

璃果:それにセイデン王国には、〝歌姫〟って呼ばれてる人がいるからね

さくら:歌姫かぁ....会ってみたいなぁ

真佑:大丈夫だよ、さくちゃん。今日のパーティーに来るからね

さくら:えっ、そうなの?

真佑:うん! 浩介様が言ってたからね!

さくら:やった〜!

そんなこんなで、馬車はセイデン王国のお城に到着。

さくら:うわぁ....大っきい.....

ノギー王国のお城に負けず劣らない大きさのセイデン王国のお城。

真佑:璃果ちゃん、○○様は?

璃果:まだ幸せそうに寝てるよ

寝ている○○様を起こさないように答える璃果ちゃん。

梅澤:璃果ちゃん、私が○○様を連れて行くよ

璃果:ありがとうございます、梅澤さん

璃果ちゃんから○○様を受け取った梅澤さんは、○○様をおんぶする。

与田:あっ、ズルいぞ! 梅っ!

蓮加:そうだそうだ!

梅澤:身長が小さいアンタ達には無理でしょ? 悔しかったら大きくなったら? あっ、もう無理か...笑 胸にバッカリ栄養いって背は大きくならなかったのね。あ〜、可哀想に...笑

上から見下ろして、これでもかと2人を煽る梅澤さん。

与田&祐希:むぅぅ......

梅澤:フッ、分かったら大人しくついてきなよ

鼻で笑いながら勝ち誇った顔になる梅澤さん。

それを暖かい目で見守るまゆたんと璃果ちゃん。

「そちらさんは、相変わらず元気やな〜」

祐希:あっ、七瀬さ〜ん!

私達とは別の馬車で来ていた七瀬さん。

その七瀬さんに勢いよく飛びつく与田さん。

七瀬:ホント天使みたいな顔で寝とるなぁ、○○は

寝ている○○様の頬を七瀬さんが人差し指でプニプニしながら言う。

「浩介王子。それに、○○王子。ようこそセイデン王国へ」

談笑している私達のもとに強そうな人を数人引き連れたおじさんがやって来た。

白髪混じりの七三オールバックに口の周りに髭を生やしてた威厳100%のおじさん。

浩介:これは、ガルシア陛下! 陛下自らお出迎えとは、光栄でございます

左手を胸に綺麗なお辞儀をする浩介様。

言葉の感じからこのおじさんが物凄く偉い人だという事が分かる。

まゆたんや璃果ちゃんも浩介様に続いてお辞儀をしていく。

私もまゆたん達に倣って急いでお辞儀をする。

ただ、私の視界の端には、そんな事を気にしていない様子で談笑を続けている梅澤さん達を捉えていた。

ガルシア:忙しい中、来てもらってすまないな。浩介王子

浩介:いえ、本日はお呼びいただいて光栄です

ガルシア:ハハッ! 流石、次期国王は立派だな!

浩介:おやめください。僕はまだ国王ではないですよ。第一、国王になれるかすら分からないんですから

ガルシア:何を言ってるんだ? 君は、国民を味方につけてるんだ。国王になれる可能性は十分過ぎる程あるだろ

浩介:それは、兄や弟のように才能が無い僕としては、嬉しい限りですが.....

ガルシア:何にしろ、我々セイデン王国は君を支持するぞ?

浩介:それは、嬉しい限りです。心より、感謝を申し上げます

ガルシア:ハハッ、気にするな!

"陛下。そろそろお時間が...."

ガルシア:おっ、そうか。すまない、浩介王子。私はそろそろ行かないといけないみたいだ

浩介:それは、大切な時間を割いてしまい申し訳ありません

ガルシア:なに、私が君に会いたくて来たんだ。今日のパーティーには出れなくてすまない

浩介:いえいえ。御公務の方が大事なので

ガルシア:そう言ってくれると助かる。では、私はこれで

そう言って、馬車に乗って去っていくガルシアさん。

その後、この国の侍女さん達に案内されて用意された部屋へ。

○○様はまだ、梅澤の背中で寝ていた。

真佑:さてと、パーティーの支度でもしますか!






そして、時間は過ぎて待ちに待ったパーティーの時間に。

私達はパーティー会場である大部屋に移動した。

○○:おぉ〜、これ美味い!

美波:○○様! こちらにも色々ありますよ!

ぐっすりと寝て元気になった○○様は、テーブルに並べられている料理を片っ端から皿に取っては食べていく。

梅澤さんも○○様と一緒にまわっていて、有り得ない量の料理を食べていた。

別の場所では、与田さんと蓮加さんが同じような感じでワチャワチャと楽しそうに料理を食べている。

四人とも行儀なんてあったもんじゃない。

その光景を見て、遠い目になる璃果ちゃん。

まゆたんは浩介様のメイドの聖来ちゃんと一緒に楽しそうに食べていた。

さくら:り、璃果ちゃん、大丈夫?

璃果:うん、大丈夫だよ

さくら:いや、どう見ても大丈夫じゃないよ

璃果:ただ、帰った後の事を考えると頭が痛くて

帰った後に何があるの!?

さくら:璃果ちゃん、元気出して。私がいるから

璃果:ありがとう、さくちゃん。さくちゃんが来てくれて私は嬉しいよ

あっ、璃果ちゃんの目に光るものが......

その時、会場が暗転。

すると、

"パーティーにお越しの皆様! 只今より、セイデン王国の歌姫にして! 我が国の王女である、絵梨花様のご登場です!"

と、男の人の声が会場に響き渡る。

その直後、音楽と共に会場のステージにライトの光が差す。

そこには、綺麗なドレスを身にまとった美女が。

絵梨花:抱きしめる〜しか〜なかった〜〜♪

会場にいる全員が見守る中、綺麗で素敵な歌声が会場全体を包み込む。

音楽に詳しくない私でも超がつくほど上手いという事が分かる。

聴けば聴くほど、聴き惚れる歌声。

気づいたら歌姫が創り出す世界に惹き込まれていた。

会場にいるみんなも歌姫の歌声に、目も耳も心も奪われている。

そんな中でも料理を食べ続けている空気が読めない例外が数人いるけど、私は気にしない。

アップテンポにバラードなど色んな種類の歌、全部で五曲を歌い終えた歌姫の絵梨花様。

会場からは大きな歓声と割れんばかりの拍手が巻き起こる。

凄かったなぁ......

○○:ねぇ、さくら。しっかり食べてる?

歌姫の余韻に浸っていた私にたくさんの料理が乗ったお皿を持って話しかけに来た例外の一人ーー○○様。

その後ろには、これまた例外の梅澤さんが山盛りの料理が載ったお皿を持って立っていた。

さくら:もちろん、食べてるよ

○○:そっか。それなら良かった

遠慮なくバクバク食べる○○様。

あぁ、せっかくの余韻がぶち壊しだよぉ......

そんな事を思っていると、自分の目を疑う光景が。

「○○〜!」

さっきまでステージで歌っていた歌姫ーー王女の絵梨花様が○○様を抱きしめる。

突然のことで○○様の手から離れたお皿が床へーー落ちる前に梅澤さんがキャッチ。

乗っていた料理も落とすことなくお皿に載せる。

それは、まさに神業。

私は心の中で、拍手を贈る。

○○:ちょっ、絵梨花、離せよぉ....

歌姫のたわわな膨らみに顔を埋められて苦しそうな○○様。

絵梨花:くぅ〜、いつ見ても可愛いな〜

○○:うぅぅ、離せぇ.....

美波:おい! ○○様を離せ! さもないとーー

真佑:わぁあああ〜! ダメダメっ!!

絵梨花さんを睨んでいた梅澤さんから、何かを察したまゆたんが梅澤に飛びついて羽交い締めをかける。

美波:ちょっと、まゆたん! 離しなさい!

真佑:ダメに決まってます! 梅さん、今何するつもりだったんですか!? ノギーとセイデンで戦争を起こすつもりですか!?

美波:そうなったらそうなっただよ! そもそも、私がいれば負けないし!

真佑:何言ってるんですか!? そういう事じゃないんですよ!

美波:仮に戦争になっても、○○様に害を与えるなら、私がその全てを斬り刻む!

真佑:梅さんが言うと冗談が冗談にならないんですよ! そんなこと言ってるとクビにしますよ!?

美波:なっ....! わ、分かったわよ.....

今回も〝クビ〟という単語を聞いて一瞬で大人しくなる梅澤さん。

それよりも、まゆたん凄いなぁ

そんなことを思ってると、

「ちょっと、お嬢様〜! 勝手に行かないで下さい!」

周りよりも頭が少し大きい?メイド服を着た女性が走ってきた。

走ってるのに、なんか遅いのは気のせいかな?

絵梨花:あっ、真夏〜! 遅かったじゃん!

真夏:はぁ...はぁ...お嬢様が早く行ってしまうからですよ

息切れを起こしながら話す女性ーー真夏さんに璃果ちゃんがサッと水を渡す。

真夏:ゴクッ...ゴクッ....ん、ありがとう璃果ちゃん

璃果:いえいえ

真夏:お嬢様! 他国の王子にそのような行為はおやめくださいと何度も言いましたよね?

絵梨花:いいじゃん、真夏。○○は将来、私と結婚するんだからさ

えぇぇぇええええええっ!!?

真夏:はぁ.....またそのようなことを......

手をおでこにやれやれと呆れた様子の真夏さん。

その脇で、まゆたんに再び羽交い締めにされてる梅澤さん。

なんか、「やっぱりあの女は私が殺らないと!」とか「やるっていう字違いますよね!?」とかの声が聞こえてくるけど無視無視。

絵梨花:いいよね〜? ○○〜

○○:いや、いくつ歳離れてると思ってるの?

絵梨花:たったの10歳差でしょ? そんなの関係ないね!

○○:それにまず、婚約者候補がたくさんいるんでしょ?

絵梨花:それこそ関係ないね! 私はあんな人達と結婚なんかする気ないし!

すると、パリンッとグラスが割れる音があちこちから聞こえてくる。

たぶん、このパーティーにその婚約者候補の人達が来てたんだね

可哀想に.....

○○:あのねーー


パキャァアアアアアンッ!!!


○○様の言葉を遮るようにガラスが砕け散るような大きな破砕音が会場全体、いや、お城全体を駆け抜けた。

そのすぐ後に、大きな衝撃が来て地震が起きたかのように会場が揺れる。

さくら:えっ、な、何!?

真夏:お嬢様! 大丈夫ですか!?

絵梨花:う、うん

真佑:○○様も大丈夫ですーーって、どうしました?

○○様を見ると、子供らしからぬ冷静な顔をしていた。

○○:絵梨花、すぐにお偉いさんに伝えた方がいいよ

絵梨花:えっ、どういうこと?

○○:大結界が、壊された



……To be continued

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