さく、メイドになるってよ 11話
美波の前に、突如として現れたアークリッチ。
クルルド:も、もう終わりだぁ.....
頭を抱えて項垂れるインテリ眼鏡(笑)のクルルド。
美波:与田、下がってて。私がやるから
祐希:い〜や! 祐希がやる! 梅の方こそ下がっててよ!
泣きべそをかいているクルルドを余所に、アークリッチを前にしても一ミリも怯んでない美波と祐希。
リッチ:人間ゴトキガが我に歯向カウナド、許スマジ!
怒りを露わにしたアークリッチ。黒いモヤのようなものが形を成していき、漆黒の槍と化す。そして、鋒を美波と祐希に向け、2人に狙いを定める。
リッチ:貴様ラを串刺シにーー
ドパァアン!!!
アークリッチの言葉は、突然響いた音ーー発砲音によって遮られた。
リッチ:エッ....?
見ると、アークリッチの胸部に拳くらいの大きさの穴が。そこから黒いモヤのようなものと一緒に、緑色のガラスのような破片がキラキラと風に舞う。
リッチ:バ、馬鹿ナ......
その言葉を最期に、アークリッチは呆気なく黒いモヤと共に消滅した。
アークリッチがいた場所には、先程風に舞っていた緑色の破片が残っていた。
クルルド:アークリッチが....死んだ.....?
〝死なざる者〟の異名を持つアークリッチが死んだことに驚きを隠せないクルルド。
美波:コアを壊したんだから、死んで当然でしょ
驚いているクルルドか理解できない様子の美波が口を開く。
曰く、アークリッチには、〝コア〟と呼ばれる緑色の結晶が存在しており、これを破壊することが、死なざる者であるアークリッチを倒すことができる唯一の方法である。
美波の口から聞かされる初耳の情報に呆気に取られるクルルド。
すると、
『ボスを倒したから、蓮加の勝ちだね』
と、いう声が美波と祐希が付けているイヤリングから聞こえてくる。
声の主である蓮加は、城の屋根にうつ伏せで狙撃銃を構えながら、イヤリング型の通信越しに美波と与田に話しかけていた。
美波:あのね、勝敗は倒した数って言ったよね?
蓮加:『あれ? そうだっけ?』
祐希:それなら、祐希の勝ちだね!
美波:私が5476、与田が4211で私の勝ちだから
蓮加:『しっかり数えてるとか、梅は真面目だね〜』
美波:当たり前でしょ。私が○○様の前で無様な姿を晒すわけにはいかないんだから
フッと笑いながら言う美波。絵に書いたようなドヤ顔である。
そんな美波の耳に、いたたまれないような声音で話す真佑の声が入ってくる。
真佑:『ごめんなさい、梅さん。あのぉ....すごく言い難いんですけど、○○様......寝ちゃってます.....』
それを聞いた美波の笑みが固まる。
イヤリング型の通信機越しから、「○○様、また寝てる」、「ホントに○○は可愛いなぁ〜。真夏! 急いで結婚の準備!」、「国の一大事に何を言ってるんですか!?」など、何とも賑やかな声が聞こえてきた。
それと、「あっ、私はちゃんと見てましたよ!」と真佑のフォローの声も加わる。
それを見て、堪えられなくなった祐希から笑いが零れ、蓮加の大きな笑い声が通信機越しから聞こえてきた。
何とも言えない空気がその場を支配する。
祐希:アハハハハハッ! ドンマイ、梅...笑 そういうことあるって...笑
お腹を抱えて、涙を流しながらゲラゲラ笑い続ける祐希。
すると、美波の額にピキッと青筋が。
鞘から少しだけ刀を抜く音も追加される。
祐希:う、梅......?
それ気づいた祐希から笑いが消え、ビクビクしながら美波に話しかける。
当の美波は、無言のまま刀を振り抜く。
祐希:ヒィッ...!
美波から放たれた斬撃が祐希のすぐ横を掠めて地面に直撃にした。
「ヒィエッ!」
自分のものとは別の悲鳴が聞こえて、祐希が後ろを振り向くと腰を抜かしたインテリ眼鏡(笑)のクルルドがいた。
どうやら、美波達が話している間に逃げようとしていたらしい。
美波:与田、その男を連れて戻るよ
祐希:は、はい!
美波からの無言の圧を感じ、ピシッと背筋を伸ばして返事をする祐希。
美波:蓮加もいつまでも笑ってないで、早く戻りなよ?
蓮加:『はい!』
通信越しから蓮加のハッキリとした返事が響いた。
謎の敵の襲撃から一夜明けた今日。
お城に帰るために、馬車が用意されている門前に集まった私達。
絵梨花:今回は、このような事になってしまい、申し訳ありませんでした
私達に頭を下げる絵梨花さん。後ろに立っていた真夏さんや瑠奈ちゃん達も次々に頭を下げる。
浩介:あ、頭をあげてください! みなさんのせいではないですよ
浩介様が優しい声音で口を開く。
すると、
絵梨花:そうですか! なら、堅苦しい挨拶はこれでお終い!
パチンッと手を叩いて、ケロッとした顔になる絵梨花様。さっきまでの畏まった顔が嘘だったような明るい表情。
その場にいる人達が「えっ?」という顔になっている。
真夏さんは視線を外して遠い目になっていて、瑠奈ちゃんが静かに背中を摩っている。
私は、その切り替えが怖いです
絵梨花:○○〜! って、寝てるじゃん!
梅澤さんの背中で気持ち良さそうに寝ている○○様を見て、驚く絵梨花様。
絵梨花:もう、お別れなのに! てか、○○寝すぎじゃない!?
璃果:でも、寝る子は育つって言いますし
絵梨花:全然じゃん! 前会った時から身長伸びてなくない?
たしかに、○○様って、寝るか食べるかしてないのに身長小さいよなぁ
与田さんよりも小さいし
そんな事を思ってる隣で、「あァ?」と絵梨花様にメンチを切っている梅澤さん達の姿が見えた。
真佑:もう、梅さん達はいちいち怒んないでください! ○○様が起きますよ?
慣れた手つきで梅澤さん達の怒りを収めていくまゆたん。
なんか、こういう時だけは頼もしいんだよなぁ
七瀬:浩介〜、そろそろ時間やで
浩介:あぁ、分かった。では、絵梨花様。僕達はこれで
絵梨花様に別れの挨拶をする浩介様。
だけど、当の絵梨花様は、
絵梨花:○○〜! 起きてよ〜!
○○様に夢中だった。
浩介:........
真夏:すみません、浩介様
浩介:アハハハ....大丈夫ですよ
ホントに申し訳なさそうに真夏さんが浩介様に謝っている。
絵梨花:もう、○○!
○○:ん〜、あっ、絵梨花じゃん。おはよ〜
絵梨花:「おはよ〜」じゃないよ! もう帰るのに何かないの!? 別れの挨拶とかさ!
○○:何かって.....んー、あっ、じゃあ、はいこれ
眠そうな目を擦りながら絵梨花様に何かを渡す。
絵梨花様の手に渡されたのは、水色に輝く宝石が中心にはめ込まれたペンダントだった。
絵梨花:ペンダント.....?
○○:ん、ペンダント。まあ、御守り程度に思ってくれればいいよ
絵梨花:きゃあー! ○○、ありがとう! 大好き!!! 次会った時には、結婚しようね!!!
梅澤の背中から○○様を奪って、ギューっと抱きしめる絵梨花様。
真佑:○○様〜、もう行きますよ!
○○:今行く〜
その後、名残惜しそうな顔をしている絵梨花様に別れを告げて私達はノギー王国へと帰路についた。
拝啓
お父さん、お母さん
色々あったけど楽しかったです!
……To be continued
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