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さく、メイドになるってよ 8話


絵梨花:ちょっ、どういうこと!? 大結界が壊されたって、そんなの有り得ないよ!

○○様の突然の言葉に、絵梨花様は取り乱している。

真佑:でも、○○様は.....

「絵梨花様! 真夏さん! 大変ですっ!!」

戸惑いが支配しているパーティー会場に黒髪ショートのメイドさんが、慌てた様子で走ってきた。

真夏:瑠奈ちゃん!? そんなに急いでどうしたの!?

瑠奈:はぁ...はぁ.....そ、それが......

璃果:瑠奈ちゃん落ち着いて。はい、お水

瑠奈:あ、ありがとう。ゴクッ...ゴクッ.....ふぅ

瑠奈ちゃんと呼ばれていたメイトさんは、璃果ちゃんから手渡されたお水を飲んで息を整える。

真夏:瑠奈ちゃん、大丈夫?

瑠奈:はい。お見苦しいところをお見せしてしまって、申し訳ありません.....

真夏:それで? 大変なことって?

瑠奈:先程、騎士団から大結界が破壊されたとの報告が

真夏:えっ、そんな!

こっそりと教えてくれた璃果ちゃんの説明によると、〝大結界〟とは、王都を守る為に張られたドーム型の結界らしい。

瑠奈:それに、物見兵からの報告では、南方より正体不明の軍がこちらに向かってるとのことです

瑠奈さんからの矢継ぎ早の報告で周囲がさらに騒がしくなる。

真夏:お嬢様、どうしますか?

絵梨花:そ、それは.....

真夏さんに判断を迫られて戸惑う絵梨花さん。

すると、

浩介:真夏さん、陛下はまだ?

見かねた浩介様が割って入る。

真夏:あっ、浩介様.....はい、明後日まで国にはおりません

浩介:他の王族の方達は?

真夏:今いるのはお嬢様のその弟君と妹君だけです

浩介:そうですか.....

つまり、今この国の最高権力者は絵梨花さんだということ。

浩介:とりあえず、国民の避難を優先させましょう。騎士団や近衛兵を中心に動いてください! それと、王都にいる冒険者にも協力要請を!

真夏:そうですね、分かりました! 瑠奈ちゃんは、急いで騎士団達に連絡を! 私は、ギルドに行ってくる!

瑠奈:分かりました!

慌ただしくも何とかこれからの方針が決まった。


その一角で、

○○:おっ、これも美味いじゃん!

美波:○○様、口が汚れてます

祐希:梅〜、祐希のも拭いて〜

美波:自分で拭いたら?

蓮加:アハハッ! 断られてやんの〜

こんな緊迫した状況など気にも止めてない様子で呑気に食事を続けている○○様達。

ホント、この人達は.....





あれから数分後

セイデン王国の騎士団・冒険者と正体不明の敵との戦いが始まった。

が、戦況は一方的なものになっていた。

騎士団と冒険者の人達は敵の攻撃に敵わず、防戦一方。

浩介:真夏さん、戦況は?

真夏:騎士団からの報告では、第一、第二防衛線が突破されて、最終防衛線である第三防衛線も突破寸前です

真夏さんからの報告を聞いて暗い雰囲気になる。

浩介:国民の避難は?

瑠奈:それについてはすでに完了しています。今は、全員王宮の地下に避難してもらってます

浩介:そうですか

自分が何もできずに悔しさを滲ませて、歯を食いしばって拳を握る浩介様。

そんな中、七瀬さんが絶賛食事中の○○様に話しかける。

七瀬:なぁ、○○。手ぇ貸してくれへん?

○○:ŧ‹”ŧ‹”....なんで僕に言うの?

七瀬:もう、分かってるくせに

○○:ŧ‹”ŧ‹”....美波達?

七瀬:○○自身でもいいんやで?

○○:それはヤダ。てか、わざわざ僕に言わなくても、自分で頼めばいいじゃん

七瀬:梅ちゃん達は、○○の命令しか聞かへんやろ?

チラッと話の内容が聞こえてきたけど、どういうこと?

○○:まあ、たしかにそうだね

食べてる手をとめて何かを決めた顔になる○○様。

○○:美波、祐希、蓮加

「「「はい、ここに」」」

さっきまでの楽しいそうな雰囲気が嘘だったかのように真面目な顔で○○様の前で片膝をつく梅澤さん達。

なんか、騎士さんみたいでかっこいい

○○:話は聞いてたと思うけど、頼めるかな?

美波:○○様のご命令とあらば、この美波、如何なることでも

蓮加:どんな事でも蓮加に任せて

祐希:祐希の全ては○○のためにあるけん

○○:祐希、なんかその言い方やだなぁ...笑

よく分かんないけど、なんか凄い感じ

○○:まあ、美波、祐希、蓮加。お願いね?

「「「お任せをッ!!」」」

次の瞬間、その場から梅澤さん達、3人の姿が消えた。

さくら:えっ、あれ? 梅澤さん達は?

真佑:さくちゃん、どうしたの?

さくら:あの、梅澤さん達がいなくなりました

真佑:えっ、嘘!? ○○様、梅さん達は?

○○:ŧ‹”ŧ‹”....ん、あそこ

チキンを食べながら窓の外を指さす○○様。

それにつられて全員が窓の外に目を向けると、さっきまでパーティー会場にいた筈なのに、今、騎士団達が戦っている場所に梅澤さんと与田の2人が立っていた。

さくら:えっ、梅澤さんに与田さん!? いつの間に!? てか、なんでそんな所に!?

状況が飲み込めない。 なので、困った時はまゆたんに聞く。

さくら:ちょっ、まゆたん! あの二人何してるの!?

真佑:さくちゃん、落ち着いて

さくら:落ち着けないよ! 梅澤さん達があんな所にいるんだよ!?

真佑:もう、そんなに心配しなくても大丈夫だよ。ほら、こっちでゆっくり紅茶でも飲も? ね?

さっきまでの緊迫した状況とは一転、くつろぎモードになっているまゆたん。

いつも真面目な璃果ちゃんまで紅茶をカップに注いでリラックスしている。

七瀬:あれ? 真佑ちゃん、その子は知らんの?

真佑:あっ、そういえば言ってなかったですね

テヘッとぶりっ子ポーズをするまゆたん。

可愛いんだけど、こんな状況でやられると腹立つ。

真佑:まあでも、見てれば分かりますよ






騎士団や冒険者の人達の怒号や衝撃音などが飛び交っている王宮前。

その場に似つかないメイド服を着ている、場違い感満載の二人の女性。

美波:与田、一万を二人で割ると?

祐希:んーと....あっ、五千!

急な美波からの計算問題にパァーっと輝いた顔で答える祐希。

美波:じゃあ、一人で五千人....できるよね? 与田

祐希:もちろん!

すると、美波は手首に付けていたシュシュで髪を一つに束ねる。

その後、首元のペンダントが白く光ると何もない所から一振りの剣が出現した。

銀色に輝く両刃の剣を構える美波。

その隣で、大きく息を吸って拳を握って構えをとる祐希。

美波:行くよ、与田!

祐希:うん!

美波の号令と共に一万の敵軍に飛び込んで行った。



……To be continued

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