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ハイスペックな兄、転生したら妹の子供だった件 3話


前話から一日が経ち、午前7時。

○○:はぁ.....

起きた直後から憂鬱な気持ちに襲われた俺は、朝から大きな溜め息をつく。

さくら:むにゃむにゃ.....へへ....もう食べれないよ.......

隣を見ると幸せそうな顔で寝ているさくら。

お手本のような寝言に加えて涎まで出ている。

○○:おいっ

さくら:ふがっ...! な、なに!?

○○:さっさと起きろ。あと、その汚ぇ涎も拭け

「れ〜ん!!」

俺を呼ぶ声とともに部屋のドアを開けて蓮加が入って来た。

蓮加:あっ、もう起きてたんだ

○○:うん、おはよ

蓮加:おはよう! れんも一人で起きれるようになったんだね

そう言って蓮加は俺の頭を撫でる。

自力で起きただけで褒められるのって、なんて情けねぇんだ

蓮加:じゃあ、お着替えしようか?

○○:うん

蓮加:はい、パジャマ脱いで〜

おいおい、ちょっと待て

○○:ひ、一人でできるから大丈夫だよ

蓮加:えっ、急にどうしたの? いつも着替えさせてあげてたのに

心配そうに問いかける蓮加。

○○:それくらい、もう一人でできるから心配しないで、れんーーママ

蓮加:わかった、お着替え終わったら降りてきてね?

○○:はーい

蓮加が部屋を出ていったのを確認して俺は溜め息をつく。

○○:はぁ.....

さくら:この2日で思ったんだけど、○○の妹ちゃんって過保護だよね?

さっきまでの会話を聞いていたさくらが眠い目を擦りながら聞いてくる。

○○:あぁ...否定はできない

俺は着替えながらさくらからの質問に答える。

○○:そういえばお前、今日どうすんだ?

さくら:ん?

○○:昨日言っただろ? 幼稚園に行かなきゃいけないって

さくら:あー、たしかに言ってたような気がする......

○○:もし何もする事がないなら、一緒に来るか?

さくら:ふぇ? いいの?

○○:あぁ、幼稚園にいる間の話し相手が欲しんだよ

さくら:その幼稚園にもいろんな人がいるんでしょ?

○○:あのな、高三の俺が幼稚園児の子達と話が通じるわけないだろ

さくら:○○だって今は幼稚園児じゃん...笑

○○:中身は高三だ!

さくら:私はいいけど....他の人には見えないから、一人で勝手に話してるように見えるけどいいの?

○○:高校生ならまだしも、この歳なら想像力が豊かで許されるから大丈夫だろ

さくら:んー.....ま、いっか!

○○:よし、じゃあ行くか



着替えを終えた俺は階段を降りてリビングに向かう。

食卓にはすでに朝飯が用意されていた。

魁人:おっ、蓮おはよう

○○:あ、おはよ....

クラスメイトだった奴が妹と結婚して、今は俺の父親になっている。

この事実に未だ納得できてない俺は、魁人に素っ気ない態度をとる。

蓮加:れんっ、しっかりお父さんに挨拶しなさい!

魁人:まぁまぁ...笑 蓮も起きたばっかだから仕方ないよ

蓮加:もう〜! 魁人君はれんたちに甘いよ!

魁人:蓮加も朝から怒るなって、可愛い顔が台無しだぞ?

蓮加:も、もう! 魁人君ったら...///

おいおい、朝から何を見せられてんだ.....

俺は2人のやり取りを複雑な目で見ながら自分の席に座って朝飯を食べる。

あやめ:ご馳走様でした

俺より先に食べていたあやめが席をたつ。

「あ〜や〜め〜ん〜っ!!」

家の外からバカでかい声が聞こえできた。

蓮加:あやめん、レイちゃん来たみたいだよ?

あやめ:うん。じゃあ、行くね

蓮加:行ってらっしゃい!

あやめ:行ってきます

魁人:車とか気をつけて、行ってらっしゃい!

あやめ:.........

あやめは魁人の言葉にだけ反応せずにそのまま家を出た。

蓮加:ごめんね、魁人君.....

魁人:俺は気にしてないから大丈夫だよ...笑

申し訳なさそうな顔をする蓮加にフォローを入れる魁人。

ふっ、嫌われてんな...笑

さくら:○○、性格悪いね〜

○○:うるせーな

隣にいたさくらの揶揄いに対して反論する。

○○:てか、さっきからこっそりと俺の朝飯食うのやめろよ

さくら:仕方ないでしょ。私だってお腹すいてんだから

○○:てか、お前。物食えんだな?

さくら:まぁね〜

そういえば、リュークも普通にリンゴ食ってたな

俺は前例(?)を思い出し、納得する。

○○:ごちそうさまでした

俺は10分程度で朝飯を食べ終え、歯磨きなどの身支度も済ませる。

魁人はその間に仕事に行ったらしく、俺が準備を全部終わらせた時にはいなかった。

蓮加:よし、それじゃあ行こっか?

○○:うん

蓮加の運転する車に乗り、幼稚園へと向かう。ちゃっかりとさくらは俺の隣に乗る。

蓮加:よし、しゅっぱーつ!

そう言って蓮加は車を発進させる。

こういう子供っぼい言動は8年経っても変わっておらず、俺は懐かしさを感じた。



そんな事を思っていると車は幼稚園に到着。

蓮加が後部座席のドアを開け、俺が降りるとドアを閉める。

さくら:ちょ、ちょっと! 私まだ降りてないんだけど!?

自分が降りる前にドアを閉めた蓮加に抗議しながら、ドアをすり抜けて車から降りるさくら。

さすが死神。すり抜けはお手のものか。

○○:そう言うな。お前にとってドアはあって無いようなもんだろ...笑

さくら:そういうことじゃないの!

蓮加:れーん! 行くよー!

○○:はーい

さくらと話していると先に行っていた蓮加から呼ばれる。

すぐに蓮加のもとへ向かうと蓮加は一人の女性と話していた。

格好を見るに幼稚園の先生ということがわかる。

「蓮くん、おはよう!」

蓮加と話していた女性が挨拶をする。

○○:おはようございます.....

蓮加:それじゃあ、真夏先生。今日もよろしくお願いします! じゃあね、蓮!

そう言って車へ戻って行く蓮加。

○○:うん、ばいばーー

ん?

蓮加の奴、今なんて言った?

まなつせんせい?

○○:なぁ、さくら

さくら:何?

○○:蓮加の奴、この人の事なんて呼んだ?

さくら:真夏先生って言ってたよ

うん、聞き間違いじゃないようだ。

恐る恐る目の前に立つ女性の顔を見る。

○○:......やっぱり

さくら:??

真夏:蓮くん、どうしたの?

○○:真夏さんじゃん!

真夏:えっ....?

俺の目の前にいたのは転生前、高校の先輩だった秋元真夏さん。

俺の二個上で、よくあざとい言動をとっており、周りを呆れさせていた。

一方で、周りが良く見えていて面倒見も良かった。

だから、幼稚園の先生ってのも案外合ってるのかもしれない。

そういえば、そういう系の大学を受験してたような気がする。

さくら:○○、この人の事知ってるの?

○○:高校の時の先輩だ

さくら:ほぉ〜、まさかの知り合い登場!

真夏:蓮くん、真夏さんじゃなくて真夏先生だよ?

○○:えっ、あぁ....ごめんなさい

まあ、この姿じゃわかんねーか

真夏:蓮くん、一緒に教室行こっか?

○○:はーい

そう言って、真夏さんは俺の手を引いて教室に連れて行く。

連れてこられた教室のドアには可愛らしい字で「ひまわり組」と書かれていた。

隣の教室を見ると「ばら組」の文字が。

クレヨンしんちゃんかよ

心の中でそんなツッコミをしながら教室の中に入る。

さくら:ねぇねぇ、さっきの人どうするの?

教室の隅っこに座っている俺に、さくらが話しかけてくる。

○○:まずは真夏さんに、「俺が○○だ」って事を教える

さくら:そのこと無闇に言ってもいいの?

首を傾げて問い掛けるさくら。

○○:俺を突き飛ばした奴を見つけるって言っても、今のこの体じゃできる事が少なすぎる。だから大人の協力者がどうしても必要になるっわけ

さくら:なるほどね〜

○○:それに知りたい事があるしな.....

さくら:でもさ、あの人が信じてくれるのかな?

○○:それが問題だが、一つ考えがある

さくら:なになに?

○○:言ったらつまんねぇだろ

さくら:ぶぅ! けちっ!

頬を膨らませて不満をみせるさくら。

○○:決まったら早速実行だ

俺はそっと後ろのドアから教室を出て真夏さんを探しに行く。

さくら:あっ、置いてかないで〜!

後ろからさくらが叫びながらついてくる。



最初に向かうのは、職員室? のような場所。

先生っていったらここだと思う。

○○:あっ、いた

その考えは的中し、職員室? では真夏さんが他の先生たちと話していた。

○○:あの〜

真夏:あ、蓮くんどうしたの?

○○:真夏さんにお話したい事があるんですけどいいですか?

真夏:もう〜、「さん」じゃなくて「先生」って呼んでって言ったよね?

○○:そんな事より、大丈夫ですか?

真夏:そんな事って....まぁ、いいけどここじゃダメなの?

○○:できれば真夏さんだけに話したい事なので

真夏:そっか。ならちょっと待ってて!

そう言って真夏さんは年配の先生に何やら話している。

真夏:お待たせ! 保健室借りられたからそこ行こっか?

○○:わかりました

さくら:第一関門突破だね?

○○:そうだな

俺はさくらと共に真夏さんの後を追い、保健室へと向かう。

真夏:それで蓮君、先生に話って何かな?

保健室に着くと真夏さんは近くにあった椅子に座り、優しく問い掛ける。

○○:真夏さん、あの実は........

俺は真夏さんにこれまで起こった事を伝える。

もちろん、さくらのこと以外は。

何故って? 俺以外に見えない奴の証明なんかできないからな。

すべてを聞いた真夏さんの反応は......





真夏:えっ? 蓮くんが○○君? は、えっ? どういうこと?

俺の話にわかりやすく混乱する真夏さん。

とりあえず、完全に否定されなくてよかった。

○○:信じられませんよね?

真夏:当たり前でしょ! 急にそんな事言われても、素直に信じられる方がおかしいよ!

やっぱり、そう来たか。

さくら:○○、どうするの?

○○:まあ、見てなって

そう言って俺は真夏さんを見る。

○○:真夏さんっ!

真夏:な、なに....?

○○:生田さんや七瀬さん達と同じクラスで、学級委員長!

真夏:ちょっ.....

○○:真夏さんのエピソードはいくつかあるけど、一番はやっぱり、富士山での黒石さん事件!

さくら:何それ?...笑

○○:俺が一年の時のGW。富士登山した時に、みんなが登山に必要な物を持ってきてる中、真夏さんだけがメイド服を持ってきた! それに対して白石がブチ切れたのは今でも覚えてます!

さくら:ぷっ、やばっ...笑

真夏:えっ、ちょっと待って!

○○:他にもありますよ! 文化祭の時、これもまた白石に無理矢理メイド服を着せようとーー

真夏:うわぁぁぁぁぁ! ちょっと、ストップ! ストォォォップ!!

顔を赤くした真夏さんが両手を横にブンブン振りながら俺の話を遮った。

真夏:はぁ...はぁ...はぁ.....

○○:大丈夫ですか?

真夏:う、うん。大丈夫。それよりも本当に○○君なの?

○○:さっきからそう言ってるじゃないですか

真夏:でもこんなの....いや、富士山のこと知ってるのは男子だと○○君だけだし......

何やら一人でブツブツ言ってる真夏さん。

何を言ってるかは聞こえない。



そして数秒後

真夏:わかった。信じるよ○○君

○○:えっ、マジすか?

急な信じるよ発言に思わず驚く俺。

真夏:マジすかって.....○○君が「信じてほしい」って言ったじゃん...笑

○○:いや、正直なところ、あれで信じてもらえるとはあんま思って無かったんで

真夏:でも、あそこまで身内の暴露話されると信じないわけないじゃん

そう言うとそっと俺を抱きしめる真夏さん。

○○:えっ、ちょっ、真夏さん?

真夏:よかった.....また会えてよかった

俺を抱きしめる力が少し強くなる。

真夏:大学で授業受けてたら、急に○○君が死んだって聞いて.....

○○:........

真夏:私だけじゃなくて、まいやんとかなぁちゃん、美月や梅ちゃんも皆で泣いて......

○○:.....ごめんなさい

真夏:でも、またこうして会えてよかった!

真夏さんは俺から離れて笑顔で言う。

○○:俺もです、真夏さん

俺も笑顔で応える。

真夏:それにしても、○○君が子供か〜笑

○○:あ、そういえば妹がお世話になってます...笑

真夏:いえいえ...って、えっ、妹? 誰が?

○○:蓮加だけど......

真夏:えぇぇぇ! 蓮加ちゃん、○○君の妹なの!?

○○:あれ? 言ってませんでしたっけ?

真夏:初耳だよ初耳! 妹がいるってのは知ってたけど.....あっ、そういえば高三の夏休みに会ったことあるようなーーえっ!?

そこで何か気づいたようなリアクションをする真夏さん。

○○:なんですか?

真夏:蓮加ちゃんの子供が蓮くんで、その蓮くんの中身が○○君.....ってことは○○君は今、妹ちゃんの子供ってこと!?

○○:まあ、そうなりますね.....

真夏:何それ! もはや漫画じゃん...笑

○○:同感っすよ。俺もそう思います

真夏:で、なんだっけ?

○○:何がですか?

真夏:ほら、私に何かお願いがあるって言ってたじゃん

○○:あっ、そうだ

俺は真夏さんに死ぬ直前に誰かに突き飛ばされたことを伝える。

真夏:それって、事故じゃなくて他殺ってことだよね?

○○:まあ、そうなりますね

真夏:ひどい....

○○:そこで真夏さんに、そいつを探すのに協力して欲しいんです

真夏:もちろん! 私で良ければ手伝うよ!

真夏さんはそう言って、親指を立ててグッと右手を突き出す。

○○:ありがとうございます

真夏さんの返答が嬉しい俺は頭を下げる。

○○:早速で悪いんですけど.....

真夏:なに?

○○:少し調べたい事があるんで、スマホ貸してくれませんか? 家だと使えないんで......

真夏:それくらいならいいよ

○○:ありがとうございます

真夏:調べるならここ使いな? 他の先生には具合が悪いって伝えておくから

○○:すみません。ありがとうございます

真夏:はい、私のスマホ! それじゃ、昼過ぎにまた来るからね?

○○:わかりました

そう言って真夏さんが保健室を出ていく。

さくら:よかったね? 信じてくれて

○○:ああ、信用できる人が味方になってくれるのは心強いよ

さくら:それで? 何調べるの?

○○:ああ、それはな.....







○○:ギア4!?

さくら:........

○○:おっ、ドフラミンゴに勝ったじゃん!

死んだせいで途中だった「ドレスローザ編」。

さくら:........

○○:えっ、サンジが結婚!? ジェルマの王子!?

さくら:........

○○:ルフィの懸賞金、15億!?

さらに読み進めていき、ワノ国編に突入。

おでんのカッコ良さに惚れ、ラフテルの名前の由来や赤鞘の一人の裏切りなどにに驚き、

○○:おぉ、ジンベエやっと仲間になったか!

10人目の仲間の誕生を喜ぶ。

そして、鬼ヶ島での戦いが始まる。

○○:カイドウとビックマム強すぎだろ.....

四皇2人の強さに驚き、

○○:ヒトヒトの実っ!? ニカってなんだよ!

ゴムゴムの実の真実に驚く。

○○:覚醒!? ギア5 !? やばっ、ルフィ強すぎ.....

興奮がMAXの俺。

○○:うぉぉぉぉ! カイドウ倒したっ!!!

長かったカイドウとの戦いについに決着がつく。

○○:ルフィもついに四皇入りか......って、は? なんでバギーも!? ミホークにクロコダイルが仲間入り!?

さくら:ちょっと! さっきから漫画読んでばっかじゃん!

痺れを切らしたさくらが、これでもかってくらい文句を言ってくる。

逆によくここまで黙ってたな、って感心する。

○○:仕方ないだろ、8年分たまってたんだから。まだこれから他の漫画も読まねぇといけないし

さくら:知りたい事があるって...このことだったんだね?

○○:他に何がある?

さくら:はぁ....呆れた.....

さくらがやれやれとため息をつくと、

真夏:○○君どう? 何かわかった?

保健室のドアを開け、真夏先生が入って来た。

時計を見ると、すでに昼の12時を回っていた。

どうやら、4時間程時間が経っていたようだ。

○○:いや、何もわかりませんでした

さくら:ずっとワンピース読んでたかね

さくらが茶々を入れるが、俺以外には聞こえない。

真夏:やっぱり難しいか〜

○○:詳しく知ってそうな人とかいますか?

真夏:んー.....あっ、美月とかに聞いてみたら?

真夏さんの口から出たのは幼馴染の名前だった。

○○:美月ですか.....

真夏:あっ、なんなら今度会いに行ってみる?

○○:えっ、会えるんですか?

真夏:来週の土日なら会えると思うけど、どうする?

○○:お、お願いします!

真夏:おっけー! 任せなさい!

○○:あの、ちなみになんですけど.....

真夏:ん? どうしたの?

○○:あいつ、今、何してるんですか?

真夏:あー、そっか。○○は知らないよね

○○:??

真夏:驚かないでね? 美月はいまねーー



真夏:アイドルだよ



○○:アイドル!?



……To be continued

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