祓い、護る者たち 5話
━━北部 第4エリア
"うわぁ......"
目の前に広がる光景を見て、誰かが引いたような声を上げる。
美月:やっぱり、やりすぎですよ.....
美月の視線の先には、大量の肉塊とその周りにできた血の海。
飛鳥:アンタの術式じゃ、この数は相手にできないでしょ
美月:まあ、そうですけど
"うっ、うえぇぇぇ"
美月:あっ、ほら! グロすぎて、新人ちゃんが吐いちゃったじゃないですか!
飛鳥:ん.....これくらいでダメだったら、やめた方がいいでしょ
美月:これは飛鳥さんだけですよ!
飛鳥:あのねーー.....っ! はぁ...まだ残ってたし
美月:どうしますか?
飛鳥:さっさと終わらせたいから、私がやる
美月:えっ、ちょっと、飛鳥さん、もしかして......
何かを察して顔が引き攣る美月。
飛鳥:術式展開〝堕天ノ御前〟
そんな美月の言葉を無視して、術式を唱え始める。
飛鳥:ーー〝星堕〟
美月:ちょっ、飛鳥さん!それはヤバいですって!
飛鳥:なら、早く離れたら?
美月:あぁ! もう! みんな早く逃げるよ!
"えっ、どうしたんですか?"
美月:あとで説明するから! 今はとにかく早く逃げて!
戸惑う新人達を促しながら、その場を離れる美月。
その直後、突然辺り一帯が暗くなる。
"お、おい! 上見ろ!"
その言葉につられて、その場の全員が空を見上げる。
その視線の先には、雲がほとんどない晴れた青空に赤い点が一つ。それは、ゴゴゴゴゴゴッと音を立ててながら、徐々に大きくなっていく。
"み、美月さん....あれって......"
何かに気づいた一人の新人が美月に問いかける。
美月:まあ、見ての通りだけどさ....隕石だよ......
『齋藤 飛鳥』
属性:重力
東京支部の特級で齋藤隊の隊長
巨大な隕石が神の裁きの如く、轟音と共に霊魔の群れの頭上に落ちた。
飛鳥:ふぅ....終わった
━━東部 第2エリア
梅澤:これで、あらかた片付いたかな
刀を肩に担ぎ、自分が倒した霊魔達を見渡す梅澤。梅澤に倒された霊魔はみな、縦や横に綺麗に真っ二つ。梅澤の腕の良さが垣間見れる。
梅澤:あとは、あそこにいる霊魔だけか
遠藤:梅澤さん! 大丈夫ですか!?
梅澤:心配ありがと。あっ、さくちゃん。新人達連れて、先に戻ってていいよ
遠藤:いえ! 最後まで一緒にいます!
梅澤:フフッ...笑 なら、早く終わらせないとね
そう言って、梅澤は刀を構え直して霊魔達の方へ歩き始める。
梅澤:百華剣術・肆式ーー〝乱れ桜〟!!
『梅澤美波』
属性:ーーー
東京支部の一級術師で齋藤隊所属
梅澤が目にも留まらい速度で刀を振ると、無数の斬撃が霊魔達を襲う。
霊魔達はその斬撃を避けることができず、尽くバラバラに崩れ落ちた。
梅澤:よしっ、これで終わりっと
━━東部 第8エリア
奈々未:まあ、こんなもんかな
辺り一面、氷に覆われている光景を見て、ホッと一息をつく奈々未。
大我:流石、姐御っす!
奈々未:どーも
大我:いやー、いつ見ても姐御の術式はシビれるっす! 〝氷の女帝〟って二つ名も伊達じゃないっすね!
『橋本奈々未』
属性:氷
東京支部の特級術師で副支部長
元橋本隊の隊長
奈々未:アンタ、それやめてって言ったよね?
大我:うっ....すいません!
奈々未:はぁ...とりあえず、終わったから戻るよ
大我:了解っす! おい、お前ら! 帰るぞ!
"やっと終わったのか...."
帰還の知らせを聞いて、安堵の表情を浮かべる新人達。
奈々未:てか、なんで急にこんなに現れたのよ
大我:霊魔の特性じゃないすか? ほら、コイツらって霊力が高い奴から順に狙うじゃないすか
奈々未:これだけ術師が集まってれば、狙われるって?
大我:そう言うことじゃないんですか?
奈々未:たしかにね.....
しかし、納得がいかずに顔を曇らせる奈々未。
奈々未:なんか、ヤな予感がする......
大我:どうしたんですか?
奈々未:ううん、なんでもない
そう言って、奈々未は大我達のもとに向かう。
奈々未:(気のせいか......)
━━北部 第7エリア
轟木:クソったれ!
未央奈:ゲホッ....○...○.......
○○:チッ、金川! すぐに、れなちさん呼べ!
金川:えっ?
○○:モタモタすんな! 早くしろ!
金川:は、はい!
すぐにスマホを取り出し、本部に連絡をとる金川。それを確かめると○○は未央奈のもとに駆け寄る。
○○:大丈夫....じゃねぇな。待ってろ、すぐに治してやる
和:未央奈さん!
井上は焦りと悲しみの表情を浮かべながら、未央奈のもとへと駆け寄る。
一緒にいた五百城と小川も和の後に続いた。
○○:お前ら、未央奈の傍にいろ
小川:○○さんは?
○○:アイツを殺す......
そう言って、○○は未央奈のもとを離れ、轟木と相対する。
○○:久しぶりだな、裏切り毒野郎
轟木:クソっ! ○○がいるなんて聞いてねぇぞ!
○○:あァ?
轟木:あのアマ! 事前に言ってた話と違ぇじゃねぇかァ!
目の前にいる○○が信じられず、悪態をつく轟木。
○○:テメェが何しに来たかは知らねぇけど、ここまでしたんだ。殺されても文句はねぇよな?
○○から溢れ出る霊力とプレッシャーに圧倒され、轟木は後退る。
○○:なんだ、来ないのか?
轟木:クソっ! 死んでたまるかァ!
ヤケクソ気味に言葉を吐き捨てながら、胸の前で手を組む。
轟木:術式展開〝五頭毒竜〟ッ!!!
轟木の術式により、二度目の五匹の毒竜が姿を現す。
轟木:死にやがれェ!!
○○:お前がな....
そう言うと、○○は右手を轟木の方へと向ける。
○○:術式展開〝黎〟
術式名と共に、パチンッと○○は指を鳴らす。それと同時に、轟木の脇腹が抉れた。
轟木:グハッ...!!
轟木はその場に倒れ込み、それと共に轟木の術式も消える。
○○:チッ、少しズレたか.......
身体のド真ん中を狙った○○だったが、照準が僅かにズレたらしく、○○は悪態をつく。
和:今、何が起きたの.....
五百城:何も見えなかった.....
小川:あれが○○さんの術式....
離れたら場所から○○の戦いを見ていた三人がそれぞれの感想を口にする。
○○:やっぱ、〝黎〟はまだ狙いが上手く定まんねぇな
轟木:ガハッ....! ゲホッ....
○○:まあ、いいや.....とりあえず死ね
轟木:ガハッ....! く、クソ......
○○:術式展開ーー
「は〜い、そこまでで〜すっ!」
○○が術式の発動を遮り、一つの声が響く。轟木の影が僅かに揺れ、そこから一人の少女が姿を現した。
○○:誰だ、お前?
「あっ、○○さんですね! はじめまして! 掛橋沙耶香です!」
轟木:くっ、遅ぇぞ....沙耶香
沙耶香:ごめんなさ〜い!
○○:掛橋沙耶香......あぁ、四年前に美彩さんが殺し損ねた奴か........おい、クソガキ。邪魔すんじゃねぇよ
沙耶香:それはムリです! 轟木さんを助けろっていう命令なんですよ
さっきから緊張感のない声色で話し続ける沙耶香。そのせいで、○○も少しばかり調子を乱される。
沙耶香:ということで、ここで失礼します!
○○:っ....させるかァ!
掛橋:ーー〝影の回廊〟
その言葉に呼応して、掛橋の影が掛橋と轟木を包み込む。
○○:術式展開〝皚〟ッ!!!
影のドームが真っ二つに斬られたが、すでに二人の姿はなかった。
○○:クソっ、逃げられたか......
「○○君!」
声のした方を見ると、怜奈と金川がいた。
○○:れなちさん! 未央奈を頼む!
怜奈:....っ! 分かった、任せて!
怜奈は急いで未央奈のもとに駆け寄る。
○○:どうだ?
怜奈:これは....ここじゃ無理! ○○君、本部に運べる?
○○:任せろ、簡易術式〝蒼〟
○○が簡易術式を発動すると、青色のゲートが出現した。
○○:本部に繋げた! 早く運んでくれ!
山崎:よしっ! 君達も手伝って!
「「「はいっ!!!」」」
井上達も山崎と共に未央奈を運ぶのを手伝う。
○○:チッ、何が起きてんだ......
━━とある廃墟
轟木:はぁ...はぁ.....おい! ○○がいるなんて、話が違ぇじゃねえか!
「それは悪かった。直前にメンバーに追加されたみたいだった」
「姉さん、こんな奴に謝る必要はないよ」
轟木:クソガキが! 舐めた口聞いてんじゃねぇよ!
沙耶香:もう〜、ケンカしないでくださいよ〜
「やっぱり、○○は厄介だな......」
「姉さん、これからどうする?」
「何も変わらないよ。すべては....」
「理想の世界のために」
……To be continued
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