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ハイスペックな兄、転生したら妹の子供だった件 15話


Overtureが終わって、ステージの照明が点灯。

そして、


美月:東京ドーム、行くぞぉおおおおお!!!


センターである美月の煽りと共に、ライブは幕を上げた。

事前に調べた情報によると、この曲は美月にとって2回目のセンター曲だとか。

一曲目から、会場のボルテージはトップに。

その熱のまま次々と曲を披露していき、その度にファンからの大歓声やらコールやらが会場全体に響き渡る。

今まで見たことがない美月と美波の姿に、俺は終始目を奪われていた。

ステージ上の2人は、高校で俺と一緒に問題児扱いされてた面影すらない。

そんな時、ふと隣から視線を感じたので見てみると奈々未と目が合った。

○○:何だよ、奈々未?

奈々未:いや、アイドルの美月と梅ちゃんはどうかな〜、って思って

○○:なんて言うか、俺が知ってる2人じゃないよな。どっちも輝いてるって言うか、あのアホやってた頃が懐かしくなる

俺がそう言うと、何かしんみりとした空気になった。

深川:序盤からそんなテンションやめようよ...笑

奈々未:そうだぞ、○○

○○:お前のせいだろ!

そんな話をしているうちに、MCパートが終わって次の曲が始まろうとしていた。

ステージに視線を向けると、

○○:あっ、和だ

東京ドーム探検中に出会った和がいた。しかも、センターの位置に。

そして、


ーーTell me how you feel looking at yourself......


英語の歌詞と一緒に、和がセンターの曲が始まった。

○○:おぉ....アイツ、センターだったのか

深川:えぇーと、何々.....新しく入った新メンバーで同期の菅原咲月と一緒にツートップを誇っている、だってさ!

スマホの画面をガン見で教えてくれた深川さん。


ーーLet me know......

ーー絶望の一秒前 星は微かに光り

ーー漆黒の闇が来るよ

ーーCan you see that? Darkness coming here


歌い終わり、和のキメ顔と同時に曲が終わると、そのまま次の曲が始まった。

センターは、先程の情報にあった和とツートップを張っているという咲月。

さっきの和がセンターだった曲とは違って、明るい感じの曲。


ーー夏の恋はフェードアウト 気づかずに消える幻

ーーちゃんと 今日で終わりなんて線も引けずにいつの間にか......

ーー何も サヨナラとか言わないまま 海の家が壊されて

ーー毎日 会ってたのに三日おきになって

ーー知らず知らずに 一ヶ月会ってなかった

ーーバンドエイド 剥がすように そっと優しく......


○○:バンドエイドって、絆創膏だよな?

奈々未:そうだね

○○:すごい曲名...笑

そして、最後に和と咲月のWセンターの新曲を披露した。

奈々未:いや〜、このグループの未来は明るいね

○○:誰目線だよ

その後にも何曲か披露して、ライブは折り返し地点に差しかかった所でまたもやMCパートに。

しかも、何故か会場が異様に盛り上がる。

○○:MCで何この盛り上がり.....?

深川:えぇ〜と....Route46ライブの名物、トップMCだってさ

深川さんが再び、スマホの画面を見ながら説明してくれる。

○○:何すか、それ?

深川:最高の世代だけでやるMCだって!

奈々未:あっ、出て来た

奈々未の声につられてステージへと視線を向けると美月、美波、飛鳥さん、みなみさんの4人がいた。

美波:今回も私達4人が繋ぎたいと思いま〜す!

美月:イェーイ!!

星野:ヒュ〜ヒュ〜!!

何かテンションが高い美月とみなみさん。

美波:それじゃあ、話したい人!

美波が話を振ると、

飛鳥:は〜い

なんと飛鳥さんが手を挙げた。

美月:えっ、あの飛鳥さんが自分から!?

星野:飛鳥、何か変な物でも食べた?

何かめちゃくちゃ驚いてる2人。会場のファンの人達も同じように驚いていた。

いや、普段のあの人どんなだよ.....

美波:それでは、飛鳥さんお願いします!

と、飛鳥さんのトークタイムが始まった。

トーク内容は「最近の後輩2人」。

「一緒にご飯食べに行った」や「買い物に行った」などとプライベートについて話していく飛鳥さん。

高校からの仲は、アイドルになった今でも健在のようだ。

その中で、普段の私生活についても話していたが、美波の場合はいい女の私生活って感じだった。

で、問題なのがもう一方、

美月の方だった。

まあ、出てくるは出てくるは、ファンには知られてないであろう美月の素の部分。

この1、2分の間で飛鳥さんに色々と暴露されてしまった美月。

美月:もう! 飛鳥さん言い過ぎですよ!

流石に止めに入った美月だったが、次の瞬間、飛鳥さんの口から驚きの一言が。

飛鳥:まいまい達も聞いてるよ

美月:えっ!?

美月のリアクションと共に会場のライトのいくつかがこっちに向いた。

と、同時に会場のモニターに関係者席の深川さんが映し出される。

突然のハリウッド女優の登場に、会場は一気に沸き上がる。

が、美月は別のことで驚いていた。

美月:ちょっ、飛鳥さん!

飛鳥:ん? どした?

美月:「ん? どした?」じゃないですよ! 何で、○まーーじゃなくて、蓮がいるんですか!?

おっ、どうやら深川さんがモニターに映った時に俺も一緒に映ってたらしい

それに気づいたファン達も、何故か大盛り上がり。

美波:いや〜、これまではラジオやブログで名前だけの登場だったけど、ついに本人の登場だね

おっと、俺の知らない所で俺が登場してるようだ

これは、何罪で訴えればいいんだ?

飛鳥:いいじゃん、アンタの素は知られてるんだから...笑

美月:そういうことじゃないんですよ!!

と、完全な身内ネタで盛り上がったところで次の曲へ。

ここからは、ユニット曲を披露していくらしい。

1曲目、2曲目と披露して3曲目に入った時に俺は信じられないものを目にした。

いや、この場合は耳にしたと言うべきか?

○○:お、おい....これって......

ステージ上には飛鳥さん、美月、美波の3人。

人気メンバーだから、この組み合わせにしたのはまだ分かる。

俺が言いたいのは、3人が歌って踊っているこの曲。

だって、これはーー


○○:俺が文化祭で作った曲じゃねぇかぁあああ!!!


ーーファンタスティック3色パン〜♪

ーーカスタードにチョコレートに〜♪

ーーそれに粒あんもあるし〜♪

ーー3つの味よ〜♪


高2の時の文化祭用に作った楽曲を、その時のメンバー、その時の振りで披露していた。

完コピーーいや、もろパクリである。

○○:えっ、何これ....?

隣にいた奈々未に聞くと、肩を竦める。

ので、代わりにスマホを見ながら深川さんが教えてくれた。

深川:えぇ〜と....〝ファンタスティック3色パン〟。あの3人のユニット曲だって。あっ、あの3人が主演の映画の主題歌にもなってるんだ

おっと、これは驚きPart2。

歌詞や振り付けも同じかと思ったら、曲名まで同じだった。

○○:いやいや、説明になってないっすよ。てか、俺が死んでる間に何があってこうなった!?

奈々未:そんなの私は知らないわよ

と、キッパリと言い切る奈々未。

深川:私もスマホの通りに言ってるだけだもん

おいおい、これって盗作じゃないのか?

なんて思ってると、更なる追い打ちが。


ーーこの制服を脱いで自由になろう〜♪

ーーJKの特権にサヨナラを〜♪


いつの間にか、あの3人のユニットは終わっていて今度は飛鳥さんとみなみさんのユニットに。

しかも、2人が披露しているのは、またもや凄く覚えのある曲だった。

深川:うわぁ....懐かしい......

奈々未:たしかに。最後に見たのって、10年前だもんね

深川:あ〜、あの時の文化祭は楽しかったなぁ.....

おいおい、これもオマージュとかじゃなくて、完璧なパクリじゃねぇかよ

てか、絶対にあの中の誰かが絡んでんだろ

と、そんな事を考えながらも俺はライブを見続けた。

そして、ライブ本編は最後の曲に。

スピーカーから、ピアノの伴奏によるイントロが流れ始めると会場全体からさっきまでの歓声が消えた。

ステージには、次々とメンバーが姿を現し、飛鳥さんをセンターに全メンバーが揃う。

○○:おいおい、マジかよ......

驚きPart3。

〝二度あることは三度ある〟とは、よく言ったものだ


ーー交差点の途中で

ーー不安になる

ーーあの信号 いつまで

ーー青い色なんだろう?


最後の曲として、全メンバーが歌っているのは、高一の文化祭で生田さんにせがまれて一緒に作った曲ーー〝きっかけ〟だった。

今回も歌詞、メロディー共にまるっきり同じ。

深川:んー、これは何回聴いてもいい曲だよね

奈々未:んね。○○、アンタいい仕事したね

そう言って、奈々未は俺の頭をワシャワシャと撫でてきた。


ーー決心のきっかけは 理屈ではなくて

ーーいつだってこの胸の衝動から始まる

ーー流されてしまうこと 抵抗しながら

ーー生きるとは選択肢

ーーたった一つを選ぶこと


○○:そんな事より、何で文化祭で作った曲がこうなってんだよ?

奈々未:さあね。そんなの私が知ってるわけないでしょ

キッパリと否定する奈々未。

深川さんも奈々未と同じく、何も知らない様だ。

まあ、それもそうか

と、まあ、何やかんやで本編が終わって、ライブはアンコールに突入。

ライブTシャツに着替えて、メンバー達が会場中に広がる。人気メンバー達は、トロッコに乗ってスタンド席のファンの元へと向かう。

もちろん、美月達4人はトロッコ組で絶賛ファンに手を振りながら移動中。

深川:ほら、○○君! 飛鳥達が来るよ!

テンション爆上がり中の深川さんに手招きされながら、身を乗り出すように体を持っていく。

すると、ちょうど飛鳥さんが乗ったトロッコがやって来た。

深川:飛鳥ぁ〜!!!

サイリウムと飛鳥さんの名前が書かれたタオルを掲げて、全力アピール。すると、それに気づいた飛鳥さんが俺達に気づいた。

俺達の目の前まで来て、照れくさそうにしながらも流石はトップアイドル。俺達のアピールにしっかりと応えてくれた。

続いてやって来たみなみさんは、高校の時から変わらない天使のような笑顔で応えてくれた。

あぁ.....心が洗われる........

そして、最後には、いつもライブの締めにやっているという楽曲を披露して今回のライブは幕を閉じた。




○○:あぁ〜、なんかどっと疲れたぁ.....

奈々未:何だかんだ言って、はしゃぎ過ぎなのよ

深川:イベント事が好きなのは、変わってないんだね...笑

○○:体は変わっても、中身はそのままなんで

なんて、ライブの余韻に浸りながら3人で話していると、奈々未がゆっくりと腰を上げた。

奈々未:さてと.....それじゃあ、行きますか

○○:ん? 行くってどこに?

奈々未:決まってるじゃん。楽屋よ、楽屋

○○:楽屋って、許可貰ってんの?

奈々未:まあ、大丈夫でしょ。こっちには、まいまいいるし。いくらトップアイドルだとしても、ハリウッド女優を断らないでしょ

深川:ちょっと! 私を使うのやめてよ!

奈々未:まいまい、何言ってるの? 何のためにハリウッド女優になったの? この時のためでしょ!

深川:全然違うよ!!!

小学生の時からたまに出てくる奈々未の暴走に、深川さんが戸惑っている。

○○:いや、普通に突撃すればよくない? 飛鳥さんとか美波に言えば、大丈夫だと思うし

奈々未:あっ、たしかにそうね

そう言って、関係者席を出て行く奈々未。俺と深川さんもその後に続いて行った。



……To be continued

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