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さく、メイドになるってよ クリスマス特別編


みなさん、メリークリスマス!!!

新人メイドのさくらです

今回はクリスマス特別編をお送りします!

それでは、どうぞ!




季節は冬真っ只中の今日この頃。

外では、だいぶ前から雪が降っていて、すでに地面は積もった雪で覆われていて、白一色が広がっている。

厳しい寒さに対抗するように、私達は、与田さんの故郷に伝わる〝こたつ〟なるもので体を暖めていた。

真佑:あぁ〜、暖かい....もう、ここから出たくな〜い

史緒里:同じく〜

顔をこたつのテーブルにつけて、蕩けるような表情のまゆたんと久保さん。

その隣では、これまた与田さんの国の伝統的な食べ物(らしい)〝焼き芋〟と呼ばれる食べ物を食べている梅澤さんと与田さん。

梅澤さんはその焼き芋にアイスクリームを乗せて食べていた。

蓮加さんと理々杏さんは、かっきーが作ったゲーム機で仲良く遊んでいて、○○様は沙耶香の、妹のあやめんは美月さんの腕の中で仲良く気持ち良さそうに寝息を立てていた。

そんなみんなを見ながら、私は璃果ちゃんとかっきーと一緒にみかんを食べる。

さくら:こんな神がかった物があるなんて、驚いたな〜

璃果:そうだよね。私も初めて知った時は感激したもん

さくら:普段は真面目な璃果ちゃんもダラけきってるよね〜

璃果:そう言うさくちゃんこそ〜

さくら:ホント、これ作ってくれたかっきーには感謝だね〜

璃果:どうか〜ん

遥香:そんなに褒めないでよ〜///

照れてるかっきー、可愛いっ!!

さくら:てか、外賑やかだね〜

璃果:だって、今日は一年に一回のビッグイベント〝聖夜祭〟だからね〜

二人とゆる〜い会話をしていると、焼き芋アイスを食べていた梅澤さんが「そういえば〜」と言って、口を開く。

美波:他の国だと聖夜祭のこと〝くるしみます〟って言うんだよね〜

真佑:それを言うなら〝くりすます〟ですよ、梅さん。そんな名前だと、楽しいはずのイベントが地獄の拷問みたいになっちゃいますよ〜

梅澤さんの間違いに、まゆたんがゆる〜くつっこむ。

与田:あっ、その〝くりすます〟には〝さたん〟さんが来るんだって〜

蓮加:何ぃ〜〝さたん〟さんって?

梅澤:〝さたんころーす〟って言って、みんなにプレゼントを配る人の赤い服を着て、髭を生やしたおじいさんのことだよ〜

真佑:梅さんボケてるんですか? 〝さたんころーす〟じゃなくて〝さんたくろーす〟ですよ。何ですか、その物騒で勇者みたいな名前は。赤い服は返り血ってことですか? そんなの子供達みんな、泣き喚きますよ〜

また。まゆたんがゆる〜くつっこむと、

こたつで和んでいるお部屋に、その雰囲気を一刀両断する声が響く。

「ちょっと、アンタ達! 何でまったく準備してないの!?」

その言葉に、私達の体がビクッてなる!

真佑:あっ、えーっと、それは.....

与田:ちょっと、かっきー。監視してたんじゃないの? (ボソッ

遥香:いや、ちゃんと監視用のアーティファクト設置してましたよ (ボソッ

蓮加:じゃあ、何で知らせてくれなかったの? (ボソッ

遥香:反応が無かったんですよ (ボソッ

「そこっ! 何ボソボソ喋ってるの!?」

「「「ヒィッ....!!」」」

メイド長のすごい圧に与田さん達が怯えた表情で、身を抱き合った。

「アンタ達、あと少しで〝聖夜祭〟が始まるってこと分かってるの!?」

美波:もちろんです!

「じゃあ、この状況は何?」

真佑:それは....こたつの魔力のせいっていうかぁ......アハハハ...笑

怖い顔のメイド長さんからの質問に、まゆたんは苦笑いで答えると、

「ふんっ!」

真佑:あっ!

メイド長さんの一蹴りで、こたつが遥か彼方に消えていった。

美月:寒っ...! ちょっと、誰ぇ〜? こたつ片付けたの〜

こたつの暖かさが消えたことで目を覚ました美月さんが、半開きの瞼を擦りながら寝ぼけた声を上げる。

久保:や、山下.....

美月:何ぃ〜? あっ、もしかして久保がーーって、何してるの?

必死に何かを訴えている久保さんを見て、首を傾げる美月さん。

美月:あっちに何かある.....の...........

久保さんが指さす方向を見て、美月さんの顔が固まった。

それはもう、ヤバいものでも見たような表情で。

「おはよう、美月。よく眠れた?」

美月:は、はい!

「それは良かったね。そんなことよりも、○○とあやめの支度をするように伝えたはずだけど、それは終わったのかしら?」

笑顔で尋ねるメイド長さん。だけど、目はまったく笑ってない!

あっ、美月さんの体がカタカタ震えてる!

「全員、早く準備するっ!!!」

「「「「「「「「「アイマム!!!」」」」」」」」」




聖夜祭

このノギー王国で昔から催されている、冬の一大イベント。

王都の至る所でカラフルなライトで装飾していて、たくさんの出店が軒を連ねるこのイベントの最中には人々の笑顔が絶えない。

そして、王都の中心地には三十メートル程の高さを誇り、色んな飾り付けがされている巨大な木が設置されている。

さくら:うわぁ.....すごい

目の前に広がる幻想的な光景に、私はただただ感動する。

雪化粧で真っ白になった王都に、赤や青をはじめとした十色以上のカラフルな明かりが広がって、そこは正しく現実から離れたような幻想の世界。

璃果:さくちゃんって、聖夜祭初めてなの?

さくら:ううん、一回だけ来たことあるよ。でも、小さい時だから覚えてないんだよね...笑

沙耶香:なら、今日は楽しもうよ!

さくら:おぉー!

遥香:さく! あっちにチョコバナナあるって!

さくら:今行く! 璃果ちゃんも行こ?

璃果:うん!

りんご飴を右手に持ったかっきーに呼ばれて、子供達で賑わう屋台に行ってチョコバナナなるものを買った。

さくら:ねぇ、璃果ちゃん。私達ってこんな楽しんでていいの?

璃果:大丈夫! 聖夜祭の式典に出席しなきゃいけないのは、第一王子と第二王子だけだからね。私達は関係ないよ

さくら:そっか〜

遥香:ほら、他のみんなも楽しんでんじゃん!

かっきーに言われて周りを見渡すと、そこには見慣れた人達が。

『おぉー!! これで12連勝目っ! 飛び入り参加したちびっ子少女が屈強な参加者達を次々と倒していくーっ!』

広場に設置されている画面は、競技場で開催されている〝決闘戦〟なるイベントの様子を映し出していて、そこには、何やらガッツポーズをして笑顔の与田さんがいた。

璃果:なんかね、あれの優勝賞品が食費一年分なんだって

あれなら与田さんがぶっちぎりで優勝だね

てか、何で食費限定なの?

そんな疑問を心の奥底に押し込めて、モニターから視線を外すと、楽しそうにお酒を飲んでいるまゆたんと久保さんがいた。

二人の顔は紅くなっていて、すでに酔っ払ってるみたい。

遥香:あっ、美月さん達だ!

そう言って、かっきーが指をさした方向には、食べ歩きをしながら仲良く出店を回っている梅澤さん、美月さん、蓮加さん、理々杏さんの四人がいた。

さくら:あの人達って、事ある毎に戦ってるけど、なんだかんだ言って仲良いよね

遥香:ホントそうだよね

璃果:まあ、喧嘩するほど仲が良いって言うしね

さくら:喧嘩っていうか、ほぼ殺し合いだけどね

璃果:まあね...笑  でも、みんなの心の中にある根幹は同じだから

遥香:○○様に忠誠を誓い、命に変えても護り抜く。だよね

さくら:あっ、そういえば、その○○様は? さっきから一回も見てないけど。あやめんもいないみたいだし

璃果:なんか、「僕達にはやることがある!」って言ってたよ

さくら:なにそれ...笑

遥香:あ〜、一緒に回ろうって誘った梅澤さんが断られたショックでガクッて膝ついてたね

その時のことを思い出してクスッと笑うかっきー。

さくら:○○様とあやめんの言ってた、やることって何だろうね?

璃果:うーん、私は知らないけど。かっきーは知ってる?

遥香:えっと.....

さくら:何か知ってるの?

遥香:もしかして.....いや、でも、あれは関係ないよね.....

さくら:かっきー....?

遥香:あっ、ごめん。私も何も知らないよ

何か思い当たることがある様子のかっきーにさらに追求しようとしたーー

そのとき、

シャンシャンシャンシャンと澄んだ鈴の音が聖夜祭で賑わう王都に響く。

イベントの音響かと思ってた私達は、その鈴の音に耳を傾けながら楽しい気持ちになる。

が、何故かかっきーが首を傾げた。

それに続いて璃果ちゃんも「おや?」といった表情で同じく首を傾げた。

最初は、二人のリアクションの意味が分からなかったけど、少し経ってその理由が分かった。

何故なら、その聞こえてくる鈴の音がだんだんと大きくなってきて、しかも、やけに上の方から聞こえていたから。

周りの人達もそのことに気づいたみたいで、みんなが鈴の音に導かれる上を見上げると、

「「メリ〜ッ!! クリスマ〜〜〜スッ!!!」」

何やら元気な声を上げて、なんかよく分からない動物?に乗った男の子と女の子の姿があった。

真っ赤お鼻に立派な角を生やした動物。

しかも、よくよく目を凝らして見てみると、その動物に乗っていたのは我らが主の○○様とあやめんだった。

沙耶香:○○!?

璃果:えっ、何してるの!?

遥香:あやめんも!

いつもは落ちついている璃果ちゃんでも、今目の前で起きてる光景には、流石に驚いていた。

○○:何って、プレゼント配りだよ。ね? あやめ

あやめ:うん。お兄ちゃんと一緒にみんなにプレゼントを渡して回ってたの!

謎の動物に跨ったままそう言う○○様とその後ろからひょこっと顔を出しているあやめん。

いつも眠たそうにしている○○様だったけど、今はすごいハイテンション。

遥香:って、それって、〝かきまるくん6号〟じゃん! ○○様に可変機能をつけて言われて新しく作ったけど、まさかこうなってるなんて.....

なんと、○○様とあやめんが乗っていた動物は、かっきーが作ったロボット(ゴーレム)でした。

あやめ:はい、璃果ちゃん! プレゼントだよ!

あやめんは〝かきまるくん6号〟の背中からぴょんと飛ぶと、リボンでオシャレに飾り付けられたプレゼントを渡す。

璃果:あ、ありがとう.....

突然のことに少し戸惑っている璃果ちゃん。

あやめ:かっきーにも、はい!

遥香:ありがとう、あやめん!

あやめ:沙耶香にはこれね!

沙耶香:やったー!!

あやめんから手渡されたプレゼントにかっきーと沙耶香は目を輝かせる。

璃果:あれ、みんなにってことは、まゆたん達にも渡してきたの?

○○:もちろん。真佑や美波達にはもう渡してて、あとは璃果達の四人だけだよ

あやめ:で、最後はさくちゃんだね!

○○:さくらのプレゼントは、スペシャルだよ!

いつもみたいに眠たそうな顔ではなく、楽しそうな表情の○○様と天使みたいなニッコリ笑顔のあやめん。

○○様も〝かきまるくん6号〟からひょいと飛び降りる。

すると、○○様の指輪が光り出して、2メートル位の大きさの長方形の木でできた箱が出てきた。

さくら:な、何これ....?

予想外のプレゼント登場で私だけでなく、璃果ちゃん、かっきー、沙耶香も目を丸くしていた。

しかも、この箱、時々ガタガタ動いてる

中にいるの絶対生き物だよ!

あやめ:ほら、さくちゃん、早く開けてよ!

○○:そうだそうだ!

さくら:わ、分かったよ....

二人に急かされて、恐る恐る箱を開けると、

「あっ、やっと開いた!」

「よかったわ〜」

さくら:えっ....?

箱の中には、二人の男性と女性が。しかも、すごく見覚えのある二人。

「あら、さくら!?」

「なっ、どういうことだ!?」

さくら:お、お父さんにお母さん!?

箱から出てきたのは、ここにいるはずのない、しばらく会ってなかったお父さんとお母さんだった。

これには、璃果ちゃん達もめちゃくちゃ驚いている。

さくら:な、な、何でここにいるの!?

さく父:いや、俺達もさっぱり.....

さく母:急に目の前が暗くなったと思ったら、気づいたらここに

何それ、怖っ!!

璃果:○○様、あやめん。二人で攫って来たね?

その言葉で、私は○○様とあやめんを見ると、二人はサッと目を逸らした。

それはもう、驚くぐらいの速さで。

それを見た璃果ちゃん、かっきー、沙耶香の二人を見る目がジト目になる。

遥香:まさか、やることってこれだったの?

○○:だって、さくらって、ここに来てから一回も親に会えてなかったんでしょ? だから、聖夜祭の時くらい一緒にいれれば良いなって思って.....ね? あやめ

あやめ:うん!

沙耶香:○○とあやめんは優しいな〜!

遥香:沙耶香は二人を甘やかし過ぎだよ

璃果:うん。てか、それなら他にやり方あったでしょ

○○:いや、それだとサプライズにならないじゃん

あやめ:そうそう

私のお父さんとお母さんを攫って来たことをさらっと流してる○○様とあやめん。

さく母:さ、さくら、一体何が起きてるの?

状況がまったく理解できてないお母さんが狼狽えていた。

そりゃそうだ

さくら:○○様とあやめんがね、お母さんとお父さんを、そのぉ.....攫って来たみたいでね

さく母:そ、そうだったのね...笑

さく父:なんと言うか、すごい子だな...笑

苦笑いになるお父さんとお母さん。

○○:僕達からのプレゼントは、家族水入らずの時間ってことで。さくら、今日は楽しんでね?

さくら:う、うん

あやめ:みんなバイバイ!

ぴょんぴょん飛んで、○○様とあやめんは〝かきまるくん6号〟の背中に乗る。

遥香:えっ、どこ行くの?

あやめ:プレゼントを届けなきゃいけない人達がまだいるからね!

○○:そういうこと〜。てなわけで、僕達はもう行くから

そう言って、○○様が〝かきまるくん6号〟の首裏にあるボタンをポチッと押すと、「ピギャアー!」という独特な鳴き声を上げて飛び去って行った。

その姿を見ながら、

さくら:○○様ー! あやめーん! ありがとう!!!

大きな声で二人の小さい〝さんたくろーす〟にお礼を言った。

遥香:じゃ、行こっか、二人共

璃果:うん。あっ、さくちゃんはお母さん達と楽しんでね!

さくら:うん! ありがとう! かっきー、璃果ちゃん!

遥香:ほら、沙耶香も行くよ

沙耶香:さくちゃんバイバイ〜!

仲良く屋台の並びに消えていく三人の後ろ姿を見送る。

さく父:さくらは、いい友達を持ったな

さく母:そうですね。今思えば、ここで働いて正解だったかもね

フフッと笑い合うお父さんとお母さん。

そんな二人を見て、私は、

さくら:お父さん! お母さん! 今日は一緒に楽しもう!!

お父さんとお母さんの手を取って三人で聖夜祭を楽しみました!




おまけ

聖夜祭から一夜明けた○○様のお部屋にて

「ねぇ、反省してるの?」

○○:はい、してます

あやめ:もちろんです

○○様とあやめんは正座をして、メイド長さんに怒られていました。

「敵国までにもプレゼント渡して来たんだって? あの後、喧嘩売ってんのか? って言われたらしいんだけど」

○○:いえ、別にそんなつもりは.....

あやめ:うんうん

「お城の一部を壊しておいて?」

○○:それは、あやめが勝手に〝かきまるくん6号〟の迎撃機能を使ったからで

あやめ:だって、攻撃されたから.....

「てか、何でそんな物に武器がついてるの?」

○○&あやめ:遥香(かっきー)がつけたから

「遥香ぁあああ!!!」

遥香:私は関係ありませぇえええええんっ!!!

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