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さく、メイドになるってよ 13話


みなさん、こんちには

新人メイドの遠藤さくらです!

なんか戦いが始まろうとしていた前回ですが、何故こうなったかというと、それは少し前まで遡ります。




さくら:これお土産です。みなさんで、どうぞ

セイデン王国の王都のお店で買ってきたお土産(ほとんどお菓子)を机に上に広げた。

美月:あっ、これ有名なお店のやつじゃん!

遥香:美月さん! こっちのお菓子、高いやつですよ!

美月:おっ、かっきー、ありがとう!

かっきーが見つけたお菓子をパクッと食べてる美月さん。幸せそうな顔で「美味しい〜〜〜」と感想を口にした。

すると、

「あぁああああああああぁぁぁぁ〜〜〜〜っ!!!」

何故か絶叫が響いた。

声の主は与田さんだった。目をカッと開いて、信じられないものを見た! みたいな表情で美月さんを指さしていた。

蓮加:うるさっ! 急に叫ばないでよ、与田

祐希:それ、ゆうきが楽しみにしてたやつなのにっ!

美月:あっ、ごめんごめん...笑 でも、まだいっぱいあるじゃん

祐希:そういう問題じゃない!

怒った与田さんの右手が一瞬霞んだ。

すると、次の瞬間には、美月さんが食べようとしていたお菓子が与田さんの口に入っていた。

美月:ちょっと、与田!

祐希:んんん〜! おいしぃ〜!!

美月さんに見せつけるように、わざとらしく幸せそうな顔をする与田さん。

それにイラついた美月さんが、買ってきたお土産を片っ端から胃の中に流し込んでいく。

それが引き金になったんだと思う。

与田さんがプッツンしちゃった。

祐希:ゆうきが買ってきたお土産なのにっ!!!

美波:買ったのは、まゆたんと璃果ちゃんね。ついでに言うと、お金は○○様のね

祐希:梅っ、うるさいよっ!!!

冷静にツッコミを入れる梅澤さんにキレながら、キッと美月さんを睨みつける与田さん。

そして、ビッと人差し指を突き出して、

祐希:もう許さないっ! 今日という今日は、ボッコボコにしてやる!!!

唐突のボコる宣言。

それを受けた美月さんは、

美月:無理むりぃ〜! 与田に私をボコれる訳ないじゃん...笑

まったく響いてなかった。

むしろ、余裕そうな、あるいはバカにしてるような感じ。

そんな美月さんの態度で、さらにプッツンしちゃった与田さん。

祐希:美月のバ〜カ〜!

美月:.....は?

祐希:ダサっ、ダサっ!! 服とかホントにセンス無さすぎ〜!!!

ストレートな悪口攻撃に出た与田さん。

言葉のチョイスが5歳児だよ、与田さん......

ただ、これで美月さんもプッツンしちゃった。

美月:うるさいっ、与田! そっちの方がバカじゃん! バァ〜〜〜〜〜カっ!!!

祐希:バカって言う方がバカなんだからね!

美月:最初に言ったの与田でしょ!

祐希:うるさいっ!

美月:そっちが始めたんでしょ!

言い合いが過熱して、ついには取っ組み合いになっちゃった。

2人の喧嘩に巻き込まれて、いかにも高級そうな家具や骨董品?とかが次々と壊れていく。

これは、絶対に怒られるやつじゃん!

そう思った時、

真佑:たっだいま〜!!

国王様への報告が終わったまゆたんが帰ってきた!

さくら:まゆたぁぁぁぁぁあん!!

やっと現れた救世主に、泣きながらダイブ!

真佑:うおっ! さくちゃん、どうしたの!?

さくら:助けて....助けて!

真佑:ちょっと、さくちゃん! 落ち着いて! 何があったの?

璃果:あ〜、なるほど......まゆたん、あれ見て

いち早く状況を把握した璃果ちゃんが、戸惑っている私に代わってまゆたんに説明する。

真佑:えぇ....何これ......何があったの?

そう言うまゆたんの視線の先には、メチャクチャになって揉み合っている美月さんと与田さんが。

もれなく「美月のアホぉ〜」とか「アホはそっちでしょ! このバカ与田〜!」とか程度の低い悪口が添えられてる。

お土産のお菓子を食べながら、そんな光景を見守っている梅澤さん達。

さくら:なんていうか....喧嘩が始まっちゃって

真佑:あ〜、いつもの事じゃん

さくら:で、でも! 全然やめる気配ないよ! このままじゃ.....

真佑:たしかにそうだよね〜

何か解決方法を探すまゆたん。

と、そこに璃果ちゃんが一つの案を口にする。

璃果:それなら〝指名戦〟やったら? 前にやってから、もう一ヶ月以上経ってるし

真佑:おっ! 璃果ちゃん、ナイスアイディア!

しめいせん....?

そして、今に至ります。





真佑:さぁ! 第.....何回か忘れましたが、これより、
〝ドキワク! ガチンコ! タイマン指名戦♡〟を始めます! 実況は私、まゆたんこと田村真佑がお送りします!

あっ、なんか実況が始まった

しかも、タイトルがダサいし、オマケにハートまでついてて緊張感が台無しだよ

真佑:そして解説には、メイディ・ナイツ序列一位の梅さんと序列三位のしおちゃんにお越しいただいてます!

美波:よろしくお願いします

史緒里:よろしくお願いします!

まゆたんのノリノリの実況に、これまたノリノリな梅澤さんと久保さん。

真佑:さて、早速、選手入場といきたいところですが、今回が初めてという人もいるので、まずはルール説明といきましょうか?

そう言って、こっちを見るまゆたん。

美波:そうですね

はい、お願いします







まゆたんが教える! 分かりやすい〝指名戦♡〟のルール説明!

は〜い! 読者のみんな〜、まゆだよ〜!

指名戦はね、簡単に言うと挑戦者が自分よりも序列の高い人を指名して、昇級を賭けた戦いに挑んで、メイディ・ナイツの序列を決めるタイマン勝負のことだよ!

これは、月イチだけの開催なの。

そして、詳しいルールは以下の通り!

ルール
・時間制限なし
・反則行為は基本的になし。魔法、アーティファクト
なんでもあり。

勝利条件
・相手を戦闘不能にさせる
・相手を降参させる

挑戦者が勝利した場合
・序列順位の昇格

指名者が勝利した場合
・挑戦者を一ヶ月奴隷にできる






真佑:さくちゃん、分かったかな?

さくら:う、うん。だいたいね

真佑:よし! それじゃあ、お待ちかねの選手入場です!!

すると、辺りが暗くなった。外なのに! まだ日が昇ってるのに!

真佑:まずは、赤コーナー! 挑戦者!! 異国の地からやって来たスモールファイター! 小さくても色気はあるとよ! メイディ・ナイツ序列四位! 与田ぁあああ、ゆうぅぅぅきぃぃぃいっー!!!

まゆたんの渾身の紹介と同時に赤色の光がある一点を照らし、そこに与田さんが立っていた。

久保:きゃぁ〜!! 与田ぁー! 頑張ってぇ!!

蓮加:頑張れぇ!! 与田ぁーっ!!

観覧している外野からの声援に手を振って応える与田さん。

真佑:続いて、青コーナー! 与田さんが指名したのは、この人!! 底知れぬ魅力も小悪魔的性格! 最強の魔法使い!! メイディ・ナイツ序列二位! 山ぁぁぁああ下! みぃいいいいづきぃっ!!!

ボォンッという爆発音と煙と共に、今度は、与田さんとは反対側を青色の光が、そこに立っている美月の姿を照らしだす。

遥香:美月さぁーん! 応援してまぁーすっ!!

パフパフッというラッパの音と共に大きな声援を送るかっきー。

そんなかっきーの応援に、にこやか笑顔の手振りで返す美月さん。

真佑:さて、解説のお2人はどちらが勝つと思いますか?

史緒里:んー、魔法の山下VS物理の与田か〜。これは、中々難しいね

美波:まあ、普通の実力から考えると山下だね

史緒里:たしかに。山下の戦い方に与田がどれだけ渡り合えるかが鍵だね

真佑:おぉ! 解説っぽい! 流石、梅さんとしおちゃんです!

なんか、危ないおクスリでもキメてるみたいなハイテンションのまゆたん。

ちょっと、怖い......

真佑:なお、今回も審判は、我らの希望の星! 璃果ちゃんが務めます!

赤と青の光が与田さんと美月さんの間を照らすと、赤と青の2色の旗を持った璃果ちゃんが姿を現す。

真佑:それじゃあ、〝ドキワク! ガチンコ! タイマン指名戦♡〟っ!スタートですっ!!!

カーン!!

どこからが聞こえた鐘の音を合図に、与田さんと美月さんの戦いが始まった。

まず、最初に動いたのは美月さん。

美月:ーー〝緋槍〟!!!

美月が一言、口を開くと赤い炎のやーー

真佑:美月さんが炎の槍を放ったぁー!

あれ?

史緒里:今のは、上級炎魔法の〝緋槍〟。炎を円錐状の槍の形にして放つ魔法だね

真佑:解説ありがとうございます! 与田さんは、この攻撃を体を捻って躱したぁー! そして、そのまま反撃に移る!

美波:いい身のこなしだね。流石、与田

あれ? もしかして、私の進行いらない?

真佑:あぁーっと! 与田さんがパンチを放つ!! が、美月さんの結界に防がれたぁー!

史緒里:山下の結界は無駄にぶ厚いからね。破壊するのは一苦労だよ

真佑:おぉーっと! 今度は、空にたくさんの氷の針が現れた!

美月:今度は避けさせない。ーー〝凍雨〟!!

真佑:氷の雨による広範囲攻撃だぁー! これは、流石の与田さんも避けられないかぁー!?

与田:むぅ...! これくらいやれるけん!

そう言った与田さんは、大きく息を吸って空を見上げる。

与田:脚式・その四ーー〝天衝脚〟ッ!!!

真佑:与田さんのキックによって美月さんの魔法が吹き飛ばされたぁー! これは、流石の美月さんも驚きを隠せない!!!

美波:蹴りで衝撃波を作り出して、氷の針を全部吹き飛ばしたね

真佑:さすが武功! さすが与田さん! と言ったところですね!

実況が様になってるよ、まゆたん

美月:へぇ、やるじゃん

与田:次はこっちの番!

真佑:今度は、与田さんが動いたぁー! 一気に距離を詰める!

与田:拳式・その三ーー〝嵐旋拳〟!!!

真佑:これは! 目にも留まらぬ攻撃! パンチの嵐が美月さんを襲う! 美月さんも結界で守っているが、防戦一方だぁー!

美月:くっ....

蓮加:いいぞぉー! そのまま行け! 与田ぁー!

遥香:美月さんっ!

観客からの声援がより一層大きくなる。

祐希:はぁああっ! 脚式・その三ーー〝鎚脚〟!!!

真佑:パンチの嵐から流れるように、今度は強烈な踵落としだぁーーって、えぇっ!? 美月さんの結界にヒビが入ったぁー!!?

史緒里:嘘っ....! 山下の結界を割った....!?

美波:おぉ....やるじゃん。私と久保以来かな?

祐希:これで終わりだぁあああっ! 拳式・奥義ーー〝武狼拳〟ッ!!!

オレンジ色のオーラを纏ったパンチが美月さんに命中!

そして、とても大きな音と一緒に美月さんが吹っ飛んだ!

真佑:な、な、なんとっ! 与田さんが美月さんを吹っ飛ばしたぁー!!?

史緒里:これは、流石に予想外....かな

美波:ふふっ、面白くなってきた

祐希:ふぅ....どうだぁー!

元気いっぱいに雄叫びを上げる与田さん。

真佑:結界が割れて吹き飛ばされた美月さん。これで決着がついたかのかぁー!? あっ、煙が晴れて....美月さんがーー立ってる! 立ってます!! 美月さんは無事です!!!

土煙が晴れたところには、所々が破れたメイド服を着た美月さんが立っていた。

美月:痛たたた.....ちょっと、油断し過ぎたかな

ポンポンと汚れを手で払いながら、そっと呟く美月さん。

美月:やっぱり、ちゃんと戦らないと

史緒里:あっ、これヤバい.....

真佑:ん? しおちゃん、どうしたの?

史緒里:山下、本気出した

真佑:えっ....?

美波:かっきー! 結界張って! 急いで!!!

遥香:は、はい!

梅澤さんに急がされて、何やら光る板のような物を操作するかっきー。

すると、美月さんと与田さんを囲うように半透明の壁? 膜? みたいなのが出現した。

美月:ど〜れ〜に〜し〜よ〜か〜なぁ〜〜〜

真佑:おぉーっと! これは、なんか分からないけど凄いことが起きそうだぁ!!!

分からないけどって...笑

美月:よし、決めたっ! 雷にしよう! ーー〝神罰之雷〟!!!

真佑:これは!? 空が真っ暗になったぁー!?

まゆたんの実況通り、さっきまで快晴の青空が一瞬で真っ暗に様変わりした。

史緒里:うん、山下の〝神罰シリーズ〟の雷バージョンだね

美波:あの山下だからこそできる、オリジナル魔法だっけか?

史緒里:そうそう!

真佑:さすが最強の魔法使いですね!

美月さん、凄いなぁ.....

てか、神罰ってヤバくない?

神様が下す罰ってことでしょ?

与田:ちょっ、ヤバいヤバいヤバいっ!!!

目の前の光景を見て、慌てまくる与田さん。が、そんなのはお構い無しといった感じの美月さん。

美月:行っけぇー!!!

その美月さんの元気な声での合図で、鼓膜が破れそうな雷鳴と一緒に特大の雷が与田さん目掛けて落ちた。

祐希:ぎゃぁあああああぁっー!!!

与田さんの叫び声と物すっっっごい音が響き渡って、かっきーが作った結界の中が煙で充満された。

真佑:美月さんの攻撃が直撃したように見えましたが、煙で全く見えません! どうなったんだぁー!?

数十秒後、だんだんと煙が晴れていって視界がクリアになっていく。

真佑:け、決着は....? 璃果ちゃん!

璃果:.....与田さん、戦闘不能! よって、勝者は美月さん!!!

真佑:決着っ! 決着がつきましたぁー! 今回の指名戦は美月さんの勝利ですっ!!! 序列二位の座は、見事死守です!

まゆたんがそう言うと、かっきーが作り出した結界が消えて、煙が完全に晴れる。

そこには、ボロボロになった与田さんが倒れていた。

白目を剥いていて、全く、一ミリも動いてない。

あれ? これって、もしかして.....

あっ、いや、今ピクッて動いた!

美波:おっ、ギリギリ生きてるね。かっきー! お願い!

遥香:は〜い!

梅澤さんに呼ばれて元気よく返事したかっきーは、ポケットから緑色の液体が入った注射器を取り出した。

さくら:か、かっきー....?

そして、かっきーは与田さんに近寄って、

祐希:アッ!?

そのまま倒れている与田さんの首に、一切の躊躇いもなく注射器をぷすっとして、怪しい液体をちゅ〜していた。

遥香:よし、これでOK!

さくら:いやいやいや! 何してるのかっきー!?

遥香:ん? どうしたの、さくちゃん?

何事も無かったかのように純粋無垢みたいな顔をするかっきー。

なんで、そんな顔できるの!?

さくら:どうしたの? じゃないよ! 与田さんに何したの!?

遥香:何って、治療だけど?

さくら:どこが!? 絵面が完全な犯罪だったよ!? ほら、見てよ! 与田さんヤバい感じになってる!

私の視線の端には、ビクンビクンッと、まるで陸揚げされた魚のように跳ねる与田さん。

その姿に、私はドン引き。

さくら:まゆたん! 大変だよ! 与田さんがーー

「さくちゃん、どうしたの?」

さくら:えっ、与田さん!?

後ろを振り向くと、傷一つない姿の与田さんがキリッとした顔で立っていた。

どうやら復活したらしい。

数秒で傷が治るって、怖すぎだよぉ......

美月:ちゃんと治ってよかったぁ〜

祐希:今度は絶対に勝つけん!

美月:そんなことより、与田。一週間、私の召使いだからね?

祐希:いやぁあああああああー!!!

与田さんの絶叫が戦いが終わった中庭に響き渡った。



拝啓

お父さん、お母さん

この人達、やっぱりヤバいです



……To be continued

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