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祓い、護る者たち 23話


━━遠藤&あやめ&賀喜&柚菜

綺那:あら、案外手応えないのね

退屈そうな声音で言う綺那。

その視線の先には、満身創痍で膝をついたり、倒れていたりしている遠藤達の姿があった。

彼女達の顔や体には火傷が目立っており、特に、遠藤、賀喜、柚菜の三人の火傷が酷い。

その周りには紫色の炎が立ち込めており、草木が焼き払われてそこから煙が昇っている。

柚菜:うっ....強過ぎ.....

賀喜:これは、実力が違い過ぎる

遠藤:はぁ...はぁ...はぁ.....もう霊力が......

あやめ:さくちゃん、大丈夫?

あやめ達は、ボロボロな状態でお互い寄り添いながら綺那を見る。

綺那:まあ、こんなものかしら

吐き捨てるように言うと、巨大な紫炎の球を遠藤達に向かって放つ。

満身創痍で動く事すら儘ならない四人は、防御すらできなかった。

綺那:これで終わーーん?

決着がついたと思い、その場を離れようとした綺那だったが、違和感を感じ動きを止める。

綺那:あれは、氷?

そう言う綺那の視線の先には、先程自分が攻撃した場所に氷のドームが出現していた。

氷のドームの表面が溶けている事から、炎による攻撃を防いだということが分かる。

柚菜:なんで氷が?

遠藤:もしかして、かっきーが?

賀喜:ううん。私じゃ、こんな一瞬でここまでの氷は作れないよ

あやめ:もしかして.....

「ふぅ....どうやら、ギリギリ間に合ったみたいだね」

落ち着いた声音で聞き馴染みのある声が響く。

遠藤:あ、絢音さん!?

絢音:みんな、大丈夫?

賀喜:は、はい!

絢音:聖来ちゃん、四人のことお願いね?

聖来:はい!

大阪支部の早川聖来が、絢音の背後からヒョコっと出てきて遠藤達に焦った表情で駆け寄る。

賀喜:せ、聖来!?

聖来:かっきー! 柚菜! 無事なんか!?

柚菜:何とかね...笑

へへっと笑いながら答える柚菜。

聖来:さくちゃんとあやめんは!?

遠藤:私達も大丈夫だよ

聖来:なら、まずは安心やわ〜。後は、絢音さんに任せへんと

そう言って、聖来は綺那と対峙する絢音を見つめる。

綺那:貴女の事知ってるわよ。鈴木絢音、優先リストに入ってわね

絢音:優先リスト?が、何かは知りませんけど、あなたには色々と聞きたい事があります。なので、とりあえず、倒させてもらいます

冷ややかな眼を綺那に向けながら、淡々と話す絢音。

綺那:そう言わずにさぁ、楽しみましょうよ!

先程の退屈な表情とは打って変わって、生き生きとした顔になる綺那。


絢音:術式展開〝氷結工房〟

術式の言霊と共に氷の工場が出現する。

そこには、すでに五百体の氷の兵士と三十門の氷の大砲が創られていた。

絢音:私は楽しむつもりはないので、すぐに終わらせます

いつも通り冷静な声音で話す絢音だったが、そこには僅かに怒りの感情が含まれていた。

綺那:ハハッ、いいじゃんその眼! 殺し甲斐があるわ!

絢音:行け!

紫の炎球と氷の砲弾が轟音と共に衝突する。

これを合図に、絢音と綺那の戦いが始まった。





━━梅澤&与田

与田:梅!!

梅澤の名前を呼ぶ悲痛な与田の叫びが響き渡る。

梅澤:はぁ...はぁ...はぁ...はぁ......

与田の呼びかけに対して、何も反応せず、ボロボロな体でただその場に立ち尽くしている梅澤。

無事な箇所の方が少ない。

今の梅澤の姿を説明するのにはこの言葉が適切だろう。

刀を持っている手はだらり下がっていて、体中に大小様々な刀による傷があり、そこから出血して全身血みどろ状態。

呼吸は浅く小さく、今にも止まってしまいそう。

さらに、与田との戦いによるダメージと疲労によって体は限界をとうに超えており、立っていることすら厳しい状態だった。

与田:梅っ! もう無理だよ!! それ以上戦ったら死んじゃうよ!!

そんな梅澤を心配して、必死に叫ぶ与田もかなりの重傷だった。

苦戦する梅澤を助けるために、すかさず参戦した与田だったが、左の脇腹に致命的な一撃を食らいダウン。

今もその箇所を手で抑えているが、傷が深いのか、抑えている与田の手は自身の血によって赤黒く染まっていた。

しかし、二人とも眼だけは目の前いる老人をしっかりと睨んでいる。

「これはこれは、その体でまだ諦めていませんか。中々の者ですな」

白い髭を擦りながら感心したように言う老人。

「私の名は、志葵と申します。剣を使う少女よ、貴女の名前は何と言うのでしょうか?」

梅澤:はぁ...はぁ.....梅澤....美波......

志葵と名乗る老人の問いかけに、今にも消え入りそうな声で答える梅澤。

志葵:ふむ、梅澤美波。美波.....名刀〝恭月〟に百華剣術.....あぁ、もしや貴女は、みなみん殿ですかな?

名前に加えて、梅澤が使っている刀と剣術で、梅澤の事を思い出した様子の志葵。

不意に、かつて親しくしていた今は亡き友が付けた自分のあだ名を呼ばれ、目を見開く梅澤。

志葵:四年程前に、貴女と共にいた少女がそう呼んでいたのを思い出しました。先程の桃子という名前は、その時一緒にいた言葉に訛りがあった少女の事ですかな?

梅澤:そうよ。あなたが殺した、私達の大切な仲間!

志葵:それはそれは、申し訳ない事をしました。何せ、私も歳なもので

申し訳なさそうに後頭部を手を置きながら言う志葵。

梅澤:あなたのせいで、桃子は....!

志葵:貴女は、何か誤解していませんか?

梅澤:誤解?

志葵:私はあの時、貴女方に見逃すという選択肢を与えたではありませんか。それを選ばずに戦う事を選んだのは、その桃子殿ではないですか?

梅澤:くっ.....!

志葵:実力が全てのこの世界で己の力を見誤り、無闇に戦いを挑むのは愚かではありませんか?

先程とは一転して、冷ややかかな声音に変わる。

志葵:彼女は勇敢と無謀を履き違えていました。それが彼女が死んだ原因です

梅澤:桃子は.....桃子はただ、術師としての責務を果たしただけ。それを、あなたに侮辱される理由はない!

血反吐なんかお構い無しに、声を荒らげて反論する梅澤。

梅澤:あなただけは、絶対に許さない!!

そして、

梅澤の姿が消えた。

次の瞬間、志葵の目の前に現れた梅澤は躊躇いも無く、刀を振り下ろす。

すんでのところで、志葵は鞘に納めていた刀で梅澤の刀を止める。

先程まで、動ける筈のない状態だった梅澤の予想外の動きと攻撃に普段は細い眼を見開いて驚く志葵。

志葵:(馬鹿な.....先程まで立っているのでやっとだった筈なのに、何故動ける? それに今の動きは何だ。私が目で追えなかった)

多少驚きながらも、梅澤を押し返して距離をとる志葵。

志葵:(先程とは比べ物にならない程の身体能力の強化。それだけなら、まだ分かる。しかし、もう一つの方は有り得ない)

志葵は、梅澤から目を離さずに、頭をフル回転させながら今起きた事を分析する。

志葵:(霊力の絶対量が上がるなど、有り得ない。一体、何をしたんだ?)

志葵がそんな事を考えている間も、梅澤の猛攻は止まらない。

重傷でさっきまで立つ事がやっとだったのが嘘であるかのような動きを見せる梅澤。

むしろ、はじめの時よりも動きが速くなっていて剣速も数段速くなっていた。

そんな梅澤が繰り出す攻撃は、常人なら秒で切り刻まれているが、それを顔色一つ変えずに難なく捌いている志葵。

志葵:(術式の能力? しかし、彼女は術式が使えないはず。情報に間違いがあったのか? いや、それこそ有り得ない)

戦いの中、頭を回転させる志葵の顔に笑みが浮かぶ。

志葵:ホッホッホッ、これだから戦いは辞められないのですよ

与田:梅っ、気をつけて! 何か来るよ!

志葵の表情を見た与田は、不穏な気配を感じて声を上げる。


志葵:術式展開〝死嵐剣舞しらんけんぶ



……To be continued

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