大怪獣のあとしまつ
ストーリー
日本に現れた無敵の大怪獣が原因不明の突然死を遂げる。
その怪獣を観光資源として残すのか、それとも完全に処分してしまうのか?様々な可能性を探りながら大怪獣のあとしまつに奮闘する日本政府と特殊部隊の話。
主な登場人物。(役者名で説明)
山田涼介
特殊部隊の人。大怪獣の後始末の責任者。
土屋太鳳
環境大臣の秘書。元特殊部隊の人。山田涼介の元カノ。
濱田岳
総理大臣秘書。元特殊部隊の人。土屋太鳳の旦那。
ネタバレあらすじ
大体の流れ説明
怪獣の突然死。謎の光の発生と同時に死亡。
↓
内閣「とりあえず処理すっぺ!環境資源にできそうだからどうにかしようぜ!」
↓
内閣がダラダラしてるうちに大怪獣が謎のガス爆発(うんことかゲロみたいな異臭を周囲に撒き散らす)
↓
環境大臣「うんこの臭いがするならうんこみたいに水で流せばいい」
↓
ダムを爆破して怪獣を海まで押し出す作戦開始。
↓
ダムの爆破に失敗するも爆破のスペシャリストオダギリジョーが自分の命と引き換えにダムを爆破。
↓
ダムを爆破するも、“多分”怪獣の処理に失敗。
(なんで失敗したのか?そもそも失敗したのかはわかりやすい描写がされなかった ※その後の展開的に多分失敗したんだなって察してあげてる)
↓
大怪獣、ガス風船が2度目の爆発準備。さすがにやべえからどうにかせにゃならんと内閣焦り出す。
↓
山田涼介、町工場のおじさんの謎技術と爆破のスペシャリストオダギリジョーの謎技術を掛け合わせて爆発を阻止しようとする。
↓
なぜか濱田岳が山田涼介ごと怪物のガス風船を爆破
↓
山田涼介、なぜか無傷。
山田涼介、発光・巨大化。
怪獣をかついで宇宙へ飛び立ったっぽい。
(明確にかついだシーンも特にないので怪獣を宇宙に吹っ飛ばしたのか、かついで飛んだのかはわからない)
↓
END
ネタバレ感想
全ての演出がイライラに繋がる魔法のスタート
最初は文章で淡々とナレーションで状況説明を行い、シン・ゴジラを感じさせるスタート。
しかし、そこからすぐに安っぽいSE、安っぽい演出がスタートする。
地上に何か特殊な飛行機らしきもののシルエットが映ったり、街の人々が空を見上げてテンション上がっている姿を見せるなど、特殊な何かが飛んでると思われる演出がされるが、結局この飛行機が何なのかの説明はありません。
この映画、こんな感じで「これ、なんか説明があるんだろうなぁ」っていう要素は全てスルーされるので意味ありげな演出を一々理解しようとすると火傷します。
最初に出てくる土屋太鳳に山田涼介の衣装から髪から台詞から、もう何もかも・全てがダサい。
開始5分くらいで視覚と聴覚の全てを低質なエンタメで支配されます。
臭い演出もふんだんに盛り込まれていて、言い回しを独特にしすぎた結果何が言いたいの?っていうシーンがとても多い。
結局何が軸なのかよくわからない。
怪獣が死亡したことによって緊急事態宣言が出てたり「新しい生活」が始まったと匂わせる描写がある。
そして、被災地から帰還したと見られる自衛隊員が家族と熱烈キスをしていたり…
コロナと震災とを足したら怪獣で、未曾有の災害後の日本を見せるってスタンスかな?と思わせておいて、その後はそれを感じさせるシーンは一切出てこなかった。
肝心の「怪獣を処理をしなきゃいけない理由」についてもコロコロ変わる。
最初は恐らく自然に「こんなデカいものがあるからどうにかするのが普通」程度の問題としてスタートする。
それが次の瞬間には「発酵して発生したガスからウンコかゲロみたいな匂いがするから処理しなきゃいけない」に変化し、最後には「こいつのガスを吸うと全身からキノコが生えてくるから処理しなきゃいけない」に変わる。
最終的には「大怪獣を処理する必要性」ではなく「ガスをどうにかして処理する必要性」の話しか出てこなくて、大怪獣要素は完全に無くなる。
さらには、結局処理を担当するのが誰なのかがコロコロ変わりすぎてついていけない。
主人公が所属する特殊部隊が処理を担当するのかと思えば、その特殊部隊を毛嫌いする国防省がどうにかしようとしたり、総理秘書がどうにかしようとしたり、謎の爆破のスペシャリスト一般人がどうにかしようとしたり、町工場のおじさんがどうにかしようとしたり。
更には誰が何をするのかを決める内閣府では、その内閣府でも総理大臣・環境大臣・国防大臣を中心にあーだこーだすったもんだ言ってるせいで誰が主導権を握ってるのかがわからないまま話が進む。
「今は誰が何をどうしようとしてるんだ!」って叫びたくなるくらいに「あとしまつ」の現在地がわからない状態が続く。
結局、最終的に誰が何のために何をしてるのか?が一度も定まらないまま物語は終わってしまった。
色々な映画の雰囲気のごちゃ混ぜオードブル
ザッと今作で「これ、この映画を意識してるのか?」という要素をチラッと紹介。
①シンゴジラ
言わずもがなずっとシンゴジラ風を装ってるけど、何もシンゴジラ感がない。でも、なぜかシンゴジラ風を感じる不思議。
②20世紀少年・AKIRA
怪獣の死により変わり果てた日本。宗教じみた存在を出してみたり変なデモが起こってる中で謎のバンドが弾き語りしてみたりで20世紀少年やAKIRAの空気を感じさせる。
③踊る大捜査線
怪獣の一部が予想外の大膨張をして破裂寸前となっている状況。現場の山田涼介がなぜか内閣会議室といきなりビデオ通話を開始する(なお、誰が撮ってるのかわからない謎角度からの映像)。山田涼介は「今すぐ穴を開けてガス抜きしないと爆発するぞ!」と警告をするも、内閣府はうだうだ言って決定を遅らせる。
山田涼介は「現場の俺が全部やるぞ!?」とキレ始める。さながら織田裕二の「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」ばりのやり取り。なお、結局内閣府も動かなければ山田涼介も動かない謎展開により、怪獣のガス風船が大爆発して周囲に異臭と汚い液体をばら撒きます。
④アルマゲドン
環境大臣か誰かが怪獣を水圧で海まで流すために使われないダムを爆破して大量の水を流す計画を立てる。そのために爆破のスペシャリスト・オダギリジョーを呼んで、時間をかけてダムを爆破するも濱田岳演じる総理秘書官が何故か現在のダムの設計図よりも古い設計図を渡していたことにより大失敗。
意を決した爆破のスペシャリスト・オダギリジョーがダムの爆破を成功させるために、ダム湖に発生した渦巻きに爆弾もろとも突っ込んでダムを爆破するという完全なアルマゲドンを再現。
⑤ウルトラマン
1度目の大爆発の後、またガス風船が膨らませ始めて2度目の大爆発の準備を始める大怪獣の死体。山田涼介はそれを1人で解決するべく、爆破のスペシャリストオダギリジョーと謎の町工場の謎の人物松重豊の技術を総結集させた謎技術でその爆破を食い止めようとする。しかし、総理秘書濱田岳がなぜか山田涼介ごとミサイルで爆破。山田涼介はビルの何階だよそこって高さから吹っ飛んで地面に落下。
元カノ土屋太鳳の目の前に落ちて土屋太鳳絶叫。
しかし、山田涼介はなぜか立ち上がることができます。
そして、スマホっぽいものを掲げると、「デウスエクスマキナ!」と叫ぶ。そして、多分巨大化(ここでは発光とウルトラマンっぽい影が見えるだけでその姿は全く映らないうる)。
で、いきなりその光と共に怪獣が宇宙に飛び始める(多分ウルトラマンが怪獣を持ち上げて大気圏突破してるんだろうけど、ウルトラマンが映ってないから何が起こってるのかは不明)。
多分、あれはウルトラマンっていう描写。説明はないから本当は何だったのか分からないです。
とっ散らかってるだけで他にも色々匂わせ描写はあるのかもしれませんが考えたくもないのでパス。
余計なギャグが多すぎる
本作はとにかく細かいギャグが多い上に全部滑ってる。
面白くないギャグ要素を一挙手一投足全てに付け足してるのに悉く滑ってたり下品で見れたもんじゃない。
そのギャグの連続が映画のテンポを悪くしているのに脚本段階で気付かないのかね?と思うほどに永遠にしょうもないギャグが続く。
中でも酷いのが大臣勢で、その中でも特に酷かったのは国防大臣。
この国防大臣によるクッソ気持ち悪い下ネタが要所要所でいきなりぶっ込まれる。
いきなり「陰毛だとシャンプーがよく泡立つ」とか言い出す。キモい。
そして、60代のおばさん女優が演じる環境大臣のパンツをいきなり見せられる。めちゃくちゃ不快。
あとは必要のない例え話が多い。
視察に訪れた特殊部隊隊長、怪獣が予想以上に大きかったために「家具屋で買った家具を家に置いたら意外とデカかったみたいな!」って急に言い出す。
恐らくは国防大臣の下ネタも確実に何かを性的に例えてるんですけど、一体何を性的に例えたかったのかわからないので多分例え話をしてるはずってレベルに留めておきます。
鬼のテンポの悪さ
大臣の会議シーンがイライラするくらいテンポ悪い。
スッと会議を進めて欲しいのにダラダラとつまらないジョークを飛ばしたり、不可解な動きをしてみたり、意味もなく立って座ってを繰り返させたりと本当に意味のない描写がてんこ盛り。
この意味もなく立って座ってというのは本当にただセリフを言う時にわざとらしく立って、言い終わったらわざとらしく座ってを繰り返すのだ。
意味のない描写が連続しすぎてるせいで、結局何をやってたのかわからなくなってしまった会議がほとんど。
しかも、この会議シーンが映画の4割くらいを占めているから見ていて本当にイライラする。
例えば環境大臣が初めて怪獣の死体を見た時のシーン。
環境大臣「し、しんでる!?」
その秘書土屋太鳳「はい!」
と、死体を見に来たはずの環境大臣が怪獣が死んでることにビックリして、土屋太鳳が元気よく返事するという謎シーンがある。
こういう細かい描写で必ずテンポを崩させるのはもはや芸術の領域に達していた。
しかも、基本的に映画の流れが
①怪獣が何か新しい状態になる②会議③マスコミが官房長官にアタック④会議⑤山田涼介がなんかする
の3回ループなので「同じ映画を3回見た感覚」に陥ります。当然、1回の試聴で3回クソ映画を見たなってレベルの胃もたれを起こしました。
濱田岳演じる総理秘書の謎行動のオンパレード
映画冒頭、土屋太鳳演じる環境大臣秘書が家に帰ると旦那である総理秘書官濱田岳の姿が。
土屋太鳳にチクチク嫌味を言ったのち、本当にいきなり謎のキス!
「え?なんで?」って声に出ちゃうていうレベルでくらいいきなりのキス。説明が出来ないけど、本当にいきなりキスをする。
今度は土屋太鳳が怪獣の死体から汚染物質が出てたり未知のウイルスが出てないかを何に何かの研究機関の同僚女性にチェックさせる。で、その研究機関の同僚女性はなぜか総理秘書濱田岳とも繋がっていて、情報を横流しする。そこでもまた謎のキス!
「え?なんで?」って声に出ちゃうレベルでいきなりのキス。説明が出来ないけど、本当にいきなりキスをする。「とりあえず、こいつは不倫してるってことなのね…」って観客に思わせといて、何か次の展開に繋がるのかと思いきやこの不倫問題は最後まで回収されません。
ちなみに不倫された側の土屋太鳳は土屋太鳳でいきなり山田涼介にキスをして「まだ愛してる」とか抜かすあんぽんたんです。
この濱田岳演じる総理大臣秘書、なんかよくわからないけどとにかく立ち位置とやることがコロコロ変わります。
【濱田岳の立ち位置の変化】
①最初は総理大臣の隣でブレーン的な立ち回りをする。
②現場で指揮を取る!みたいな立ち回りにチェンジ。
③町工場の謎の男が超技術でガスを大気圏に吹っ飛ばせる!ってのを一蹴してブチギレ。
④いきなり、「俺は傍観者だ」とか言い出す。
⑤ダム爆破作戦が始まった時にはいつの間にか内閣府会議に戻ってる。
⑥爆破のスペシャリストオダギリジョーに何故か偽の設計図を掴ませてダム爆破作戦を失敗させる(なぜダム爆破作戦を失敗させたかったのかはよくわからない)
⑧ダム爆破作戦で怪獣の処理に失敗したっぽい後、なぜかまた現場に戻って「町工場のおっちゃんの言ってること信じるわ」と言い始めたかと思えば、
⑨おっちゃんの言ってることとは全然違うガス風船にミサイルぶちこみ作戦を決行しようとする。
⑩最後、山田涼介がおっちゃんの言ってることを忠実に再現すると、なんとなく山田涼介の正体を疑ってるというだけの理由で山田涼介ごとガス風船を爆破。
ここまでの行動原理、全く説明されてません。
結局、何を理由に何をしたいのかが説明されてないから濱田岳はやりたい放題やってるだけの謎おじさんになっちゃいました。
総評
「中学文化祭での演劇の最高級品」
山田涼介がカッコよくて土屋太鳳が可愛くてキャストが豪華。
それ以外には褒められる点が一つもない。
しかし、「それも映画の評価として褒めていいところなのか?」と困る程にキャストが破壊されるクソ演出の数々。
シンゴジラの続編を期待して見るからいけないなんて意見もあったけど、エンタメとしてゴミです。
エンディング中に壮絶な胃もたれに襲われた後、エンディング終了後にいきなり言い渡される「予算半減で続編やるぜ!」宣言。
豪華キャスト以外に誉めどころがなかった作品なのにキャストがしょぼくなることが確定してしまったら、この映画には一体何が残るんだ…