ありがとう木本高校特集

本当は三重大会が終わった直後に出そうと思っていたのですが、あまり時間がなくて秋の県大会出場を決めたこのタイミングに・・・それでは早速!


現高3世代の木本の試合を直接見に行ったのは以下の通り
2021年秋県1回戦 対相可 3-8 ★
2022年春県2回戦 対津商業 3-5 ★
2022年夏県2回戦 対伊賀白鳳 5-2 ☆
2022年秋県1回戦 対伊勢 5-1 ☆
2022年秋県準決勝 対三重 1-8 ★
2022年秋県3位決定戦 対海星 1-5 ★
2023年春1回戦 対菰野 5-6(延長10回タイブレーク) ★
練習試合 対大阪学芸 7-1 ☆
練習試合 対南部 7-6(サヨナラ)☆
2023年夏県3回戦 対海星 5-4 ☆
木本関係者以外では間違いなく自分が1番木高を追ってきただろうなと思います。自分でも10試合も見に行ってるとは思いませんでした(笑)

1.追いかけるきっかけとなった選手、久保尊

 2021年秋、今の高3が1年秋に出た県大会初戦、相可高校との試合を見に行ったのが木高の試合を見るのが初めてでした。この試合確か平山が先発で、リリーフで久保が投げていたような気がします。2年秋以降の公式戦では投げているところを見たことがないので、今思うとかなりレアシーンだったかもしれません。
 
 試合自体は相可が木高を圧倒し3-8だったのですが、ひと際目を引いたのが、捕手で先発出場していた久保尊。今でこそ雑誌にも掲載され県外にも名が広がっていますが、この時はまだ無名でした。1年の秋だったのでまだ線が細かったですが、打席に立った時の雰囲気、足の速さ、肩の強さはいずれも県内でも上位の選手だと一目で分かりました。キャッチングや全体的な捕手の動きはまだまだ課題だらけという感じで、もしかしたらチーム事情で捕手やってるのかな、という印象も受けたかな。それでも「春にもう一度見てみよう」と思わせてくれた選手でした。この後春の津商業戦で久保が放った2本の長打、そして夏の大会で高田・中山から打った同点タイムリー2塁打、「本物だ」と確信してさらに木高を追いかけるようになっていきます。

2.木本に引き寄せられた

木本と言ったら何といってもチームワークの良さ。プレーをしている中でも言葉にしなくても意思の疎通ができているんだろうなと感じる場面が多々ありました。このあたりは近隣の5,6校の中学校出身者で構成されていて、小中と何度も対戦してきてよく分かっているんでしょう。

 また、3年生が8人というなかでよくこれだけ力のある8人が揃ったなと。榎本世代(主将の榎本から今後は榎本世代)は1年秋からほとんどがレギュラー、春の津商戦ではじめて9人中7人が当時2年生の榎本世代であると知りました。下級生中心、しかも地元の選手のみで構成されている、しかも久保という抜きんでた存在に榎本・西という力のある投手が二人いる。もっともっと追っていきたいと思った瞬間でした。昨年の夏が終わって、私の職場の野球好きの方や私が一緒に高校野球をやっていた同期に「今年の木本は面白い。21世紀枠あるよ」ってめちゃくちゃ言ってましたが、この時はもう既にハマってましたね。正直周りの人たちは「え?そんなに?大げさだろう」って感じでしたが(笑)この後の秋県大会で26年ぶりにベスト4に進出したときは本当に嬉しくて準決も3位決定戦も見に行きましたね。周りの人も「本当に木本上位にきたやん」ってなった時はもう最高でした。

3.木本高校の戦力

野手編
木本と言えば2,3年生が13人で、秋・春の公式戦はほとんど9人で試合をしていました。ある程度部員数がいるチームでも下位打線を打つ選手はどうしても打力に不安がありますが、木本の場合好不調によって打順を入れ替えられたのが強さの1つだったかと。
2022夏
1岡(卒業生)2仲(卒業生)3久保4平山5池上6榎本7植田8喜田9中道祐
2022秋
1中道祐2宇城(2年)3喜田4久保5池上6榎本7植田8西9平山
2023春
1久保2宇城3中道祐4植田5榎本6喜田7平山8西9池上
2023夏
1久保2榎本3平山4植田5池上6中道祐7宇城8喜田9西
 
 2年夏に4番を打っていた平山が秋春には下位打線で3年夏に3番に戻っていたり、調子次第で喜田や池上がクリーンナップに入ってくるなど実質9人でこれだけ打線のバリエーションが組めるあたり本当によくこの9人が揃ったなと。
 
 春に西垣内先生から小林先生に監督が代わり久保を1番にしたことで4番に抜擢されたのが植田。打順の入れ替えがあった中でも1番久保と4番植田が動くことはありませんでした。木高において「4番」は久保しかいなかったと思います。植田の振りの速さ・打球の速さ・飛距離は間違いなく久保に次ぐものがありましたが、ボールの見逃し方やコンタクト率の低さから下位打線を任されることが多かったのも事実。実際秋の準決・3決の三重、海星戦や春の菰野戦ではやはり県内上位校の投手には完璧に抑えられており、「4番は厳しい」というのが正直なところ。しかし、夏の大会を見ていて、春から夏にかけて一番打力が上がったのは間違いなく植田であると感じました。ここは小林監督もよく我慢して信じ続けたと思いますし、植田もそれに応えようと頑張ったのだろうなと。

 そして春から夏にかけて1番打力が向上したのが植田ならば、1年間で1番打力が向上したのは唯一の2年生宇城です。セカンドの守備に関してはショートの平山以上の守備力を誇っていたかもしれませんが、1年秋の打撃に関しては若干厳しい印象。スタンドから見ていても相手投手が抜いて投げていたのでバットにこそ当てていましたが、完全にバントや四球をもらうための2番でした。それでも一冬越えて力が付き春の菰野戦では高岡から安打、140キロのボールにも対応できるようなっていました。打線としては宇城の成長により最後のピースがようやく埋まりました。

 投手編
 
木本は基本榎本・西の2枚看板でした。
 エースで主将の榎本が先発でゲームを作り、西が最後を締めるパターンが多かったですね。榎本は130キロ台の真っすぐにスライダー、チェンジアップ、カーブを中心に組み立て、テンポよく打ち取っていく投手。カーブの割合は10%程度だったかと思いますが、あのカーブに榎本の器用さが表れていました。MAX自体は秋と春で変わりはありませんでしたが、秋までは平均球速は130キロだったのが、春の菰野戦では平均134,5キロ付近まで上がっており、変化球の平均球速も5キロ前後上がっていました。

 西は130キロ後半の真っすぐとスライダーを中心に組み立てる投球。コントロールに苦しむ場面も見られましたが、球威は榎本を上回っており、ハマったときの爆発力は見事です。バランスも悪いわけではないので上のステージでも楽しみな選手。

 ここに夏の大会で大きな経験を積むことになる広田、杉浦、中田の1,2年生の計5人の投手陣になりますね。野手でも言いましたが22人の高校でこれだけの選手が揃うのは奇跡ですね。榎本・西が140キロを投げる投手というのは有名でしたが、夏の大会で広田が139キロを出したのは驚きました。ここに軟投左腕の杉浦に中学時代から県上位で戦ってきた経験豊富な1年生中田と本当に上位に行くべくしていったチームですね。

4. 2年間の集大成

 まずは、木本とか関係なく2年間追い続けた久保。初戦で猛打賞、2回戦明野戦ではレフトスタンドに先頭打者弾、3回戦海星戦では3安打全打席出塁で、逆風の中中押し弾を放つなど集大成となる活躍を見せてくれました。イニング間の2塁送球はほとんどが1.9秒台、ときおり1.8秒台も記録し、チーム1の俊足でもあるので、積極的な走塁で得点に絡む場面も多く、まさに「核弾道」でした。1番久保が活きた大会だったと思います。

 初戦の暁戦は平日で仕事、2回戦の明野戦は私用でバーチャル高校野球で見ることになりましたが、不安要素が次々と。新チーム結成以降1~3番を任されいた中道が6番、中軸を任されていた喜田が8番を打っており、初戦は4得点、2回戦は5得点とっていますが、秋ほど打線が繋がっていない印象でした。いくら宇城が成長したと言っても榎本の代わりに5番は厳しく、特に中道はチャンスメイクしてこそのバッターなので6番という位置は彼があまり活きませんし、春の3番起用自体も彼には不向きだったかなと。喜田はいい当たりが正面を突く場面も多く、そこまで不調に見えませんでしたが実際夏の大会では1安打に終わり、このあたりは小林先生がよく見ていたというところでしょうか。そして何よりエースの榎本が1,2回戦で投げなかったこと。先述の通り投げない時はショート(夏大前の練試ではサード)を守るので、故障していたのは明らかでした。
勝負の海星戦
 
先発は西で、やはり榎本ではなかったですが2番ライトで出場。対海星に向けて打てる手は取ってきました。おそらく外野守備はほとんどしたことなかったんじゃないかと思いますが、危ないなと思う場面はなくやはり野球センスの高さは抜群ですね。肩を負傷していた言うことで内野に返球する場面は明らかに痛そうで、見ているこっちも少し辛くなりました。どうしても強く返球せざるを得ない場面で、二遊間の平山と宇城が心配そうに見ていたのも印象的でした。

 海星の先発は技巧派左腕の仲野。海星5投手の中では木本が最も打ち崩す可能性が高い相性のいい投手だったと思います。さらに仲野の制球が定まっておらず、仲野が投げている間に何点とれるかが勝負になりましたが、3回で3得点したのがとにかく大きかった。この後海星は10番の梶川を投入しますが、たまたま近くに座っていた海星の某レギュラー選手の保護者が「なぜ高橋(11番)、服部(1番)投げさせない!」とブチ切れてました😅実際速球派の高橋が木本打線にとっては最も相性が悪く、秋には完璧に抑えられた投手なので木高側も攻略できるイメージは湧かなかったのではないでしょうか(実際高橋は最後に出てきて1回だけでしたが完璧に抑えます) 

 7回途中、2死2塁の場面でここまで1点に抑えていた西から杉浦に継投。4巡目のタイミングで変えたので、もしかすると3巡までが予定だったのかもしれません。自己最速の144キロを計測した場面では、周りの観客も「なんで3番?」と驚いていました。自分が見てきた西の投球では間違いなくこの日がベストピッチでした。春の菰野戦では制球に苦しみ逆転負けを喫しましたが、春の大会の悔しさと榎本不在で別人のように成長しましたね。

 継投に入った木本ですが杉浦が交代直後にタイムリーを許すと、1点を返した8回からは広田が登板するも2失点で5-4。杉浦、広田が投げたのは2回3分の1でしたがとにかく長く、何度「榎本が投げられたら」と思ったか分かりません。9回も無死1塁のピンチを迎えますが、大会通じて1安打の8番打者に強行してきたところを落ち着いてゲッツーを取れたところで勝負ありでしたね。3投手が繋いで優勝候補海星相手に4失点。3点を先行し、采配を含めたミスを相手より少なくする。勝つべくして海星に勝った試合でした。

 そして木高応援団の声援。部員数22人の木高に対して、海星は県内最多108人の部員数を誇り、これまで経験したことのなかった凄まじい応援だったと思いますが、木高OB・保護者の声援も凄まじかったですね。バックネット裏で見ていたんですが父母が息子の名前を叫ぶ声がはっきりと聞こえました。応援団の野球熱の高さ、これも間違いなく選手たちを強く後押ししました。まさしく「みんなで掴んだ」19年ぶりのベスト8でした。
※海星戦で4回表に池上がセンター前打った時の応援歌誰か教えてください

5.ありがとう榎本世代

 海星を破った勢いそのままにベスト4をかけて宇治山田商業と対戦。秋に2-5、春に5-15で敗れていた相手なので厳しい試合になるのは分かっていたのですが、疲労のたまった投手、好守で支えてきた選手たちのエラー、点差から来る焦り等々、2年追い続けた身としては見ていてとても苦しい試合でしたが、最後まで戦う姿勢は見せてくれました。
 
 結果だけ見ると海星戦で燃え尽きたように見えますが、後輩投手を必死に鼓舞する様子、3回戦とのギャップに苦しみながらも立て直そうとする様子が随所に見られました。これは秋の準決・3位決定戦では見られなかったところです。木高には縁もゆかりもありませんでしたが、試合に見に行くたびに選手達の成長が見られ、とても楽しい2年間でした。ありがとう!

6.新チームの木本

 さて、力のある3年生が抜け、レギュラーは宇城以外残っていませんが、1年生9人はもしかすると3年生に匹敵する世代になる可能性を秘めた世代ですね。夏は代打の切り札だった渡邊は、夏大前の練習試合の大阪学芸戦で6番ライトで先発出場4打数4安打の活躍をしていました。パワーがない分内野と外野の間に落ちた感じのヒットが多かったですが、バットコントロールがうまいのは間違いありません。あとは新チームでレフトを守る峪中が一番打撃が良さそうです。久保の後釜を務める間部もブロッキング能力は高く、秋の南予選相可戦で3回盗塁を刺すなど捕手が早速固まりそうなのは朗報。ただ、長打力不足は否めず、長打を打てそうなのは峪中と間部くらいなのかなと。中道虎の足はまずまず速そうですが、足の速い選手も若干少ないかなと。

 守備面では宇城が背番号4でしたがショートでしたね。前チームから唯一のレギュラーですが、周りが1年生ばかりなので、1年生からもっと周りに声を掛ける選手が出てきてほしいところ。皇学館戦を見に行きましたが、プレーの確認をする声掛けがほとんどなかったのは気になりました(特に外野)。前チームの外野も「もっと広く守って、投手力を活かして思い切ったシフトを取ればいいのになあ」と思いましたが、春夏には改善されていました。そういった姿勢も引き継がれていくといいですね(前チームの場合強豪と試合をしていく中で自然と培われたのかもしれませんが)。

 投手陣は夏の大会で大きな経験を積んだ広田、杉浦、中田の3人。地区予選では杉浦がエースナンバーを付けていたようですが、皇学館戦では2回6失点と悔しい結果に。きちんと制球されれば夏の大会の明野戦のように打ち取れるはず。3人の中で最も力のある広田は三重戦で好投。制球面は不安がありますが、決まった時の球の威力は十分。来夏に西のように成長してくれたら。そして3人の中で1番ゲームを作れそうなのが1年生の中田。夏の山商戦でも落ち着いた投球をしていましたが、本当に投手らしい投手です。2ボールからでもカウントを立て直して打ち取れますし、バント処理もうまい。皇学館戦では3回から投げて1失点でした。球速こそ120キロ前半くらいだと思いますが、これからが楽しみな投手です。

7.あとがき

 なんでこんなに木本に夢中になっていたのかなと考えると、自分の境遇と似ていたからなのかなと思います。私も過疎地域の出身で、地元の(隣の市したが)高校に進学。自分は大したことない1選手でしたが、Wエースがいて、全国で通用する中軸がたまたま4人いて、21世紀枠の県・東海地区の推薦校になり(結局4番手で補欠校どまり)、3年春に監督が交代して全然違うことを言う。自分で書いてて思ったけどやっぱめっちゃ似てるなあって(笑)。

 だからこそ分かるんです。地元の選手だけで甲子園に行く難しさ。秋の県大会でベスト8、ベスト4まで行ったときにまだベスト8、4かと思う途方もない感覚、21世紀枠で東海地区の推薦校になった途端変わる周囲の目。21世紀枠で落選した時メディアにも周囲にも「夏勝てばいい」と言いつつも実際に勝ち抜く希望がどれだけあるのか。自分たちが21世紀枠で落選した時に同期の7割くらいは「夏勝つのは無理だ」と思っていたことを高校を卒業して5年経ってから知りました。当然春も夏もいい結果は出ませんでした。

 それでも木本の選手たちはあきらめずに甲子園を目指し続けた。これは海星戦の勝利が雄弁に物語っています。だからこそ羨ましくもあり、本当に尊敬できる選手たちだなと思います。おそらくあの勝利は人生を変える勝利です。野球を続けたくなったでしょう?硬式野球じゃなくても大学だと準硬式野球もレベルが高くて面白いです。ソフトボールだって軟式野球だっていい、ぜひ野球を続けてください。

ありがとう木本高校!

木本高校密着の動画を見つけたのでこちらも是非(^-^)
【甲子園行きたかった】三重県立木本高校 21世紀枠落選からの半年間 - YouTube


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