【新曲記念】ボカロ曲の影の支配者「丸の内進行」って何?美味しいの?

初めまして。nogiと申します。


前回のvocanote、「そらをおよぐ」大好評ありがとうございました!うちのさてらいと含め喜んでると思います。

さて、そんな私の本業はカバー楽曲制作ではありません!そう、オリジナル曲を発表するUTAU-Pなのです。(noteでもないだろ)

ということで、今回のnoteのお供には是非とも本日あげたこの新曲をお聴きください♪

ラヴィレ feat 重音テト〈オリジナル〉 

なんだ、宣伝かと思ったそこのあなた。ちょっと待って。

突然ですがクイズです。

ルマ/かいりきベア
乙女解剖/DECO*27
テレキャスタービーボーイ/すりぃ
絶え間なく藍色/獅子志司

今年の大ヒットであるこの4曲に共通することはなんでしょう?タイトルにあるのでもったいぶりません。

正解はコード進行です。


えっ、全然曲調違うじゃんって?確かに、曲から受けるイメージは違いますね。しかし、いい曲だと思わせるひとつの「影の支配者」的役割としてこのコード進行があるんです。

というわけで、今回は俗に言う「丸の内サディスティック」進行のご紹介です。

前回置いていってしまった人本当にすみません!今回はなるべくわかりやすく書くことを心がけるので、是非最後までお読みください。

読み終わった頃には話のネタ、あるいは少しの音楽的知識をお伝えすることが出来ていれば嬉しいです!


さてさて、前提として音楽には3つの要素があるというのを聞いたことがあるでしょうか?(ないのもあるけど……)

その3つは「メロディ、ハーモニー、リズム」です。そして、このハーモニー、いわば響きをルールに沿ってまとめたものが「コード」と呼ばれます。

世の中には無数のコードが存在し、その組み合わせの数だけ進み方、「コード進行」が存在します。しかし、聴き馴染みのある、つまり「伸びる」進行は数える程しかありません!

調味料は数あれど大体のラーメンは塩醤油味噌とんこつ、みたいなものですね(?)

↓イメージ掴みやすいので、このサイトもぜひ見て

http://makeo-blog.net/chord/vocaloid1/

その中で、今回注目したいのが椎名林檎さんの「丸の内サディスティック」で曲全体に使われ、一躍有名となったこの進行です。関ジャムでやってたけどn番煎じとか言うな〜!!!

ルールに乗っ取って書くとこんな感じです。説明長くなるので、そんなに気にしないでOKです。

IV△7→Ⅲ7→VIm7→Ⅰ7

そして、この内「IV(△7)→Ⅲ(mや7)→VIm(7)」を今回は「丸の内進行」と呼ぶ事とします。洋楽だと別名があるのですが、親しみが持てるのでこちらで。

この進行の特徴としてはまずオシャレ

「幸福論」「長く短い祭」などでも使われる椎名林檎さんの十八番なので、そりゃそうですよね。ボカロ外だとあいみょんさんの「愛を伝えたいだとか」なんかも。オシャレ。

この理由はオシャレな理由は色々あると思うののですが、

「Ⅴ」を使わない(他の定番進行ではだいたい使う)ことが、暗すぎず明るすぎない雰囲気を出す。3つの連結が強い繋がりを持つもの。Ⅲ→VImはジャズの文脈として見て定番。

結果いい感じなのでそれでOKです。

また、循環できるので使いやすいのも利点です。VImのところからまた戻ってもいいし、「丸の内(略)」のようにⅠにいってから戻るのもありですね。

早くボカロ曲を紹介しろと、すみません。

ここからは、サビでの使用をPやパターンに分けて紹介していきます。ミリオンだらけなので、知ってる曲も多いと思います!

(主に10人)

※「丸の内進行」を☆で表してます。


①ハチさん

まずはボカロの歴史において最も重要なPの1人ハチさん

Mrs.Pumpkinの滑稽な夢 ☆→Ⅶ7 Ⅲ7 VIm

使ってますね。もうオシャレ。

Ⅶ7は「まだ眠る」のところで、聴いてて浮遊感あるとおもいませんか?セカンダリードミナントという技法なのですが、ここでは割愛します。

マトリョシカ→☆の繰り返し
パンダヒーロー→☆の繰り返し

どうでしょう?異論あるかもしれませんが、これらって「ハチさんっぽい」曲ではないでしょうか?

ロックすぎず、耳馴染みもいいオシャレさ。コード進行以外で暴れ回るハチさんならではな気がします。

余談ですが、米津玄師さんの「flamingo」でも使用されてて、これがこの曲のハチさん感に繋がってるとも言えますね。

②トーマさん

骸骨楽団とリリア ☆→Ⅰ
幽霊屋敷の首吊り少女 ☆→Ⅰ

丸の内パターンですね。

九龍レトロ ☆の繰り返し

反感を買うかもしれませんが、トーマさんにはハチさんの似た魅力があると思います。緻密な曲展開にオシャレで親しみやすいコード。

「ヤンキー(略)」などロック路線だと「王道進行」を使われることが多いので、曲調における使い分けも見えますね。

気になったのはこれ。

オレンジ ☆→Ⅰ Ⅱm Ⅲ7 VIm Ⅴ

曲調全然違うでしょ!?

ⅡmはIVを代理できるコードなので実質繰り返し。つまりスローテンポにも合う進行ってことですね。

③じん

ボカロシーンのならこの進行の王でもあるじんさん。

あげたらキリがありません。

人造エネミー ☆→Ⅱm(代理コード) Ⅲ7 VIm
メカクシコード
夜咄ディセイブ ☆→Ⅰ6(VIm7とほぼ同義)
アディショナルメモリー

新曲もか〜い!(昨年だけど)

気になったのは、デビュー後の2作品で使われてるってことですね。この進行、循環しやすいので電子音系にもピッタリなんです。

鮮烈なデビューの裏にはこんな仕掛けが……()

気になった用法はこちら。

ロスタイムメモリー ☆→Ⅴm7→Ⅱm→Ⅲ7→VIm→Vm

ⅠでなくVmにしてマイナー感を出させることで、「待っていたんだ」の悲痛が伝わりますね。あとこれは「ツーファイブワン」というジャズの技法で、一般に使われないコードとはいえ違和感は抑えられてます。

アディショナルメモリーも、丸の内進行の借用によってロスメモの続き感を出してるのではないでしょうか?

あと、じんさんと一時代を築いたkemuさんのこの曲も。

イカサマライフゲイム ☆→Ⅰ

基本的には王道ロック系の進行を使われますが、この曲は「丸の内サディスティック」パターンでオシャレ感を倍増というとこでしょうか。

④れるりりさん

ボカロの代名詞の1人ですね。

脳漿炸裂ガール ☆→f#m7-5
聖槍爆裂ボーイ ☆の繰り返し
妄想疾患■ガール ☆→Ⅱ7

コード面でさらにヒネってくる事ありますが、基本的にはここぞというオシャレ曲で使われてます。ピアノの曲に相性がいいんですね

妄想疾患■ガールなんかは「御茶ノ水」って言ってますし、椎名林檎さん由来は間違いなさそう。

ピアノ系だと以下の曲もです。

指切り☆→Ⅴ
リスキーゲーム
キリトリセン ☆→Ⅴm7→Ⅰ7sus4→Ⅰ7 
ボーカロイドたちがただ2コードくりかえすだけ

2コードは、この進行の前の2つのみをひたすら使ってます。少し基準から外れますが、IV→Ⅲmの雰囲気を味わえます!

⑤かいりきベア

今年最も活躍したPの1人。いえ、一頭。先程あげたルマ以外でも使われてます。

ベノム ☆の繰り返し
アンハッピーバースデイ ☆→Ⅰ
セイデンキニンゲン ☆→Ⅱ7
テレストテレス ☆の繰り返し
アンヘル ☆→Ⅰ
失敗作少女 ☆→Ⅶ♭
イヤガール ☆→Ⅶ♭

草。

少し特殊なアルカリ、レミングミング以外だいたいそうでした。

かいりきベア節と言えるのは、もしかしたらこの中毒性の高い循環コードなのかも知れません。コードとしてロックに寄りすぎないのがいいですね。

余談ですが、もう1人の今年最も活躍したPの1人、いえ、一果である煮ル果実さんの「紗痲」や「ハングリーニコル」もこの進行。(前者はⅠへ進む)

つまり今のトレンドも作り続けてるコードなんです。すごいね!!!

その他答え合わせ含めて、最近のギター系のものを。

絶え間なく藍色 ☆→Ⅴm
ロスメモパターン。
テレキャスタービーボーイ ☆の繰り返し
空中分解 ☆→Ⅰ
トオトロジイダウトフル ☆→Ⅱm
マイナーコード3連続なのが叫びを表現してますね。
縫口 ☆→VI♭aug 
VI♭augは不安定なコードですが、唯一外れてる「VI♭」の音は半音下のⅤ(☆のコードに含まれる)に戻りたいので自然な流れ。
乙女解剖 ☆の繰り返し

はい???出てくるわ出てくるわ

DECO*27さんは、今年から明らかに使うようになりましたね(妄想感傷代償連盟はあるけど)。今まではストレートなロック!という「小室進行」や暖かい「カノン進行」が多かったのでイメチェンでしょうか。

こうやって見ると、「今っぽい」「かっこいい」と言えるラインナップではないでしょうか……?

そう、じんさんやハチさん、トーマさん、れるりりさんと一時代を築いたたこのコード進行は未だに新鮮さを持ち愛されてるんです。

極めつけはこれ。

ロキ ☆の繰り返し(Don't stopを除く)

つまり、2019年最大のヒット「乙女解剖」、2018年最大のヒット「ロキ」がこの進行。

そして、

2018年のYouTube再生10位までのうち6曲がこれ。

この増加傾向は、前の調査と比べると顕著ですね。

来年のヒットもこれだとヤマ貼っておきます!(だいたいDECOベアMARETUの誰かはヒット出すでしょう……)

⑥MARETU

そして、今話題の中心にいるもう1人といえばMARETUさんですね。かいりきベアさんとの度重なるコラボも話題になり、「MARETU新曲はよ」でおなじみですね。

うみなおし ☆→Ⅰ ☆→Ⅶ♭
脳内革命ガール ☆→Ⅱ ☆→Ⅶ♭
ドクハク ☆→Ⅶ♭

バッチリ使用されてますね。この進行の後にⅦ♭に進むことが多く、この「」のついたコードがダークさを出してます。

アイムハイ (遭って咲いて以降) ☆→Ⅱ
うみたがり(地獄の連鎖に以降)
☆→Ⅰ
コインロッカーベイビー(廻り回る以降)☆→Ⅴ#m→Ⅴm→Ⅰ
VIm→Ⅴ#m→Ⅴmということで、半音ずつ下がるロスメモパターンの派生系が聴かせどころ。

MARETUさんの場合、リズム変化が激しくそれに合わせてコードも変わってます。そのため、途中で使われるパターンも多いです。

MARETUさん特集の効果音と共に始まるキャッチーなサビは、このダークで親しみやすいコードに裏打ちされてるんですね!

MARETU ベノム はよ

⑦まふまふ

調べてて追記したくなったP。

メリーバッドエンド ☆→Ⅶ♭
Ⅶ♭がダーク。
ハローディストピア

なんか2曲雰囲気似てるな〜と思っていたら、動画だけでなくコードが同じでした。

まふまふさんとしては心機一転、イメチェンで使い始めたパターンではないでしょうか。

その後のこちらも。

廃墟の国のアリス Aメロ

サビでは王道進行です。まふまふさんの曲はいい意味でストレートなコードづくりの見本かもしれませんね。

ジグソーパズルは「小室進行」っていう丸の内進行のライバル的存在。触れません

すーぱーぬことかでは使ってないので、「ポップ!にゃあ!!」みたいな曲には不向きと言えるかもしれません。

⑦ぬゆりさん

ロック系がベアMARETU煮ル果実ならエレクトロスウィングはぬゆりさん。(ロック曲もいいけどね)

フラジール ☆→IV#dim
フィクサー ☆の繰り返し
ディカディズム ☆→Ⅲm(つまりまた戻る)
命ばっかり(イントロ)

そりゃオシャレだから使いますよね!

フラジールは初出パターンですね。IV#dimは名前で何となくわかるように不安定で浮遊感が生まれます。一応IVに繋がるってことなのかなぁ?

もっとも、ぬゆりさんもMARETUさんと同じでコード多めの方なので、途中で違うなんてこともザラです。

余談ですが、「秒針を噛む」でもイントロ後半、Bメロ、サビの「分かり合う〇」など使われてます。(どちらかというと脳裏上の方が顕著だけど)

そして、似た系統での最近のヒットといえばもちろんこの曲!

ジェヘナ ☆(1周目) ☆→Ⅰ7 (2、3週目)

サビに向かって半音上に転調するのとてもいいですよね。そこからの満を持しての丸の内進行。

そしてソロパートもこれです。オシャレだなぁ。ヒットも納得です。(ところでAyaseさんも使ってると思うんですが確証がありません)

⑧R Sound Designさん

オシャレの権化といえば。もちろんばっちり使われてますよ〜!(妄想疾患■ガールと結構近い用法ですね)

帝国少女 ☆→Ⅰ
flos ☆→Ⅰ

Rさんの特徴として、2回しめでコードを変えて「Ⅲ」ではなく「Ⅶ」系を変えるのがどちらもやられててエモいです。Ⅶはあまり使わなく浮遊感が出るっていうアレです。

Rさんの浮遊感!シティ感!良いですよね〜!!!

⑨バルーン

ある意味、この進行が復活してきた原因かもしれませんね。ラスボス

シャルル
イントロ、Aメロ ☆→Ⅰ
サビ「濁りきっては」 ☆→Ⅰ
メーベル ☆→Ⅰ(曲中ほぼずっと)
雨とペトラ
イントロ、Aメロ ☆→Ⅰ
レディーレ ☆→Ⅰ(曲中ほぼずっと)
夕染 ☆→Ⅰ

レディーレとメーベルが強烈ですね。丸の内進行一本勝負。これに影響受けた人多いのではないでしょうか?

シャルルや須田楽曲含め、王道進行を挟みながらの使用が多かったです。(ハチさんの影響もあるのかなぁ)

ロックに寄りすぎないところが、独特の効果音の使用などと相まって世界観を出してますよね!

余談ですが、ポップの権化ナユタン星人さんはこれをほぼ使ってないのも面白いです。(ダンスロボットダンスのコードとかシンプルイズベストすぎて草生えます)

ニーズがバラけた感じでしょうか……?

丸の内進行としてあえてあげるならこれです!

惑星ループ ☆→Ⅴ

Aメロで使ってます。本人がコピーしやすいと言っていたように、「ループ」するコードなのがナユタン星人さんらしいですね。

サビとかはIV→Ⅲm→Ⅱm→Ⅰって下がるので、趣が違うんですよね。これはこれでスムーズに下降して良いのですが。(パフェ生も似たコード。)

⑩Eveさん

ラスト。ボカロで出された曲あまり多くは無いのですが、

やどりぎはよ

大きな爪痕を残していきましたね。

やどりぎはよ

ここでは4曲ご紹介。

sister ☆→Ⅴm
ナンセンス文学 ☆→Ⅰ
トーキョーゲットー ☆→Ⅰ(どうやって理由を以降)
ラストダンス ☆→Ⅲdim

ラストダンスのサビ、聴いてて違和感ありますよね……?その正体がⅢdimです。

ドラマツルギー、アウトサイダーはよりロックさ、マイナーさが別のコードで強調されてるのが面白いですね。

追記としてはこれもですね。

僕らまだアンダーグラウンド ☆→Ⅲm7→Ⅲ♭dim
まふまふEve時代、我々は丸の内進行に支配されていたのか……そして今もなお……

触れられなかったけどコーナー

ココロ IV→Ⅴ#dim7→VIm
ちょっと違うんですけどね……間にⅤ#dim7を入れて浮遊感を出して自然にVImへ行くパターン。
ポーカーフェイス ☆→Ⅴ
Fire◎Flower ☆→Ⅴm7→Ⅰ
どちらもロック系ですね。切ないコード進行って印象をここでは受けますね。
Bad ∞ End ∞ Night ☆→Ⅴ
打って変わってこちらはジャジー。ひとしずくPは結構いろんなコードを使われる方ですね

ボカロ文脈だよねコーナー 

YELLOW ☆→Ⅰ
有機酸さんも似たようなことをします。カトラリーとかkrankサビ後半も丸の内進行です
やっぱり雨は降るんだね
IVを「雨は降る」の「ふ」まで長くとってるのが特徴。
勘冴えて悔しいわ ☆→Ⅰ
そりゃね。さっき挙げた秒針やハゼのように、イントロだけっていうのも多いです。オシャレコードでピアノに合いますよね。

そして言いたかったこと。これを書いたきっかけ。

えっ……!?!?そうなの!?


たしかにオシャレ。しかし全部とは潔いですね……!「bin」とか「優しい人」とかも聴いた感じそう。まじか……

爽快路線も1個の進行での勝負でストレート!投稿ペースにも繋がってるのでしょうが、同じコードでこれだけ違いを作れるのは凄いですね。

逆輸入のような形で、また一般にこの進行が伝わっていってるのがいいですね。

感謝コーナー


マスタリー ☆→Ⅰ

マスタリー/ワカバ feat. 初音ミク http://nico.ms/sm35350679

久しぶりに聞いて泣きました。エモい

曲中ほとんどこの進行です。デレステ由来なんですね〜!循環コードで「繰り返し」巡るような感情が伝わり、とても心に響きます。

ステレオタイプインフェクション ☆→Ⅰ

【重音テトオリジナル】ステレオタイプインフェクション / wau http://nico.ms/sm33845596 

多分あってる……

ボカロらしさを表現された曲ということで、まさにこのコードの魅力があふれてますね。

まとめ

長ぇ!長ぇよnogi!すぐ〆ます。

MARETU 新曲 はよ

以上です。コードから見てみるのもいいですね。

出た69曲まとめました。サビでないものは一部除いてます。丸の内進行を味わい尽くしてください!

丸の内進行だらけ https://www.nicobox.jp/share?mylist=67187447 

ここまでありがとうございました。

P.S. この進行の新曲、聴いてね

ラヴィレ feat 重音テト〈オリジナル〉  


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