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今年のボカロ曲って短くないですか?調べてみました!

お借りした画像はKING/Kanaria (のう)

はじめに

お久しぶりです。nogi (nogi_utau)と申します。

この記事はobscure.氏の「ボカロリスナー presents Advent Calendar 2020」の参加作品です。ぜひほかの方の記事もどうぞ!


今回は今年を総括するということで、丸の内……ではなく3分以下の短い曲について話していこうと思います。
基本的に今年について書くんですが、脱線して前の曲とか書いてたりしてます。書きたいことを書いてるので許してください。
ここからは敬称略で常体で行きます。よろしくお願いいたします。


立椅子かんな

早速だが、このnoteを記すきっかけとなったのはこの人物である。以下のFlat氏の考察が非常に興味深かったため、引用させていただく。

現在投稿されている楽曲の動画版の尺は全て2分20秒以内(Twitterに投稿可能な尺。実際に立椅子かんなは動画サイトへの投稿と同時にTwitterにもフル尺で投稿している)と、すりぃ~「KING」の流れとも同期している。

なるほど、と思い私は追って調査を行った。すると以下の2点についてわかった。

1点目、アルバム「閏」「FLUX」などの収録版ではフル尺になる(Limboを除く)。ちなみにどれもとてもいいので、サブスクなりでの視聴をおすすめする。この手法はFushiの「アルカホリックナイトフール」しかり、ムーブメントを作ったすりぃの「空中分解」「エゴロック」しかり多く見られるようになっている。
2点目、「AMOK」「IFIDO」などのリアルシンガーへの提供曲は3分以上のフル尺で作られている(後にボカロ版もアルバムにて公開)

これらを踏まえ、「ボカロ曲として」「動画投稿サイトに」リリースされた楽曲はどのような工夫によってその長さに収めているのかを調査した。
楽曲構成としては、イントロABサビ(アウトロ)で終わるかイントロABサビABサビで終わるかであった。具体的には前者が「kanata」「Who?」、後者が「#PARASITES」「S.S.」である。
例外的に「Limbo」ではサビ前に間奏が挿入される(そもそもこれがフルだからか)。

kanata / 立椅子かんな feat.flower
http://nico.ms/sm36437713

「Who?」「#PARASITES」「S.S.」ではアウトロがカットされており、フル版でその後間奏が挿入され同じ構成になることから、筆者はこれを拡散等を狙った戦略的なものであると考えている。
視聴完了率の向上やリピート率の増加は、「総再生時間」の減少を鑑みたとしても差し引きでメリットの大きいものだ。

別の見方としては以下のものを提唱する。

#PARASITES / 立椅子かんな feat.flower
http://nico.ms/sm36931187

「キャッチーでポップな方がいい」
「早口で高い所がいい」

といった文言からは、VOCALOIDシーンへの皮肉がみてとれる。
「#PARASITES」の関連楽曲のひとつにjohnの「クエスチョンマーク」があるが、johnの当楽曲や他の楽曲にも共通するVOCALOIDシーン、音楽業界へのシニカルな見方が、曲の短さ(ある意味大量消費的)には込められているのではないだろうか。

もちろん、アルバムの価値を高めるための戦略ということも考えられるだろう。なぜならアルバム収録曲の殆どを投稿、いわばシングルカットしているため付加価値を必要とするからだ。

初のアルバムを頒布した後の氏の楽曲(どうやらボカコレ期間中のようで執筆時点では来ていない)にも注目が集まる。

粗品

2020年デビューの期待の(大物?)新人その2。1,2,4,5,6作目が3分以下というボーダーにかかる。(ここには1,2,4作目を掲載する)

粗品『ビームが撃てたらいいのに』feat. 初音ミク http://nico.ms/sm36787316

粗品『ぷっすんきゅう』feat. 初音ミク
http://nico.ms/sm36886350

粗品『最高に頭が悪い曲』feat. 初音ミク
http://nico.ms/sm37062952

ニコニコ初期を彷彿とさせるような電気音の使い方は、Short ver. 文化の根強かった時代と相まって温かみを感じさせる。
とは言ったものの、この場合単にシンプルなABサビABサビの構成、粗品のストレートさが現れていると言えると思う。これは短いながらもひねったツッコミをする芸風にも現れているかもしれない。
その点ではOrangestarなどとの共通性(「アスノヨゾラ哨戒班」「回る空うさぎ」などは3分を切る)も見られると思うのだがどうだろうか。
もっとも粗品がボカロを多く聴いた時期はそれ以前に思うが。

アボガド6

2020年デビューの期待の(大物?)新人その3。

hand/旭音エマ
http://nico.ms/sm36418271

ラヴ/旭音エマ
http://nico.ms/sm37160293

曲としてというよりはむしろ映像作品としての面が強く、「梅雨籠」「変拍子」などと連続した作品として見るのが妥当か。ABサビのみ、2番はなしという構成が最も世界観、起承転結を表現しやすかったということではないか。
「へる」では2番があり独創的なCメロを通っており、曲の長さも大きく異なることから音楽が単なる一つの表現手法であるということを感じさせる。

へる/v-flowerとUTAUたち
http://nico.ms/sm37819029

つまり、これについて深く述べる意義もあまりないと思われ、次へ進む。

john

TOOBOEとしての活動のスタートも記憶に新しいjohn。先述の立椅子かんなも氏のファンであると公言している。
ループを多用したトラックが洋楽チックであるという点からは、曲の短さにも納得が行くであろう。特に(ループを多用する)ヒップホップの楽曲はJ-POPと比較して短いことが既に多くの調査において示されている。
一方でメロディはポップさもかねそなえており、ヒップホップ一辺倒にならないのが一つの魅力だ。

氏の代表作である「春嵐」は極めて特徴的だ。(1周年めでたい!!!)

春嵐 / 初音ミク
http://nico.ms/sm36053074

イントロABサビ間奏ABサビ間奏落ちサビ転調サビをしっかりとやるのが、前述の「Limbo」などとは異なる点であろう。BPM自体が早いのもあり、飽きさせないものとなっている。トラックのループはやはり健在で、キャッチーさを出し曲全体をまとめあげていると言えるのも素晴らしい。

それよりもさらに短いのが「rabbit」だ。

rabbit / 初音ミク 
http://nico.ms/sm34986872

johnの多くの楽曲の特徴として明確なBメロを設けないことが挙げられ、この楽曲もそのひとつだ。これが短さのひとつの要因でありつつスムーズにサビに移行するのが中毒性のひとつの要因になっていると考える。
他の楽曲としては「獏」「vilin」最近では「ヒガン」さらにTOOBOE名義の「赫い夜」などあげればキリがない。

脱線してしまったが、noteの性質上今年の楽曲についても述べよう。「ミゼラブル」はjohn第一章の完結とも呼ぶべき楽曲で、過去楽曲の要素が入ったイラストも特徴的である。
johnとしてある程度オーソドックスな作りとなっており、Bメロが長めにしろ間奏が短い影響で多くの転調をこなしながらミニマルに仕上がっている。

「インフェリオリティ」、何を隠そう処女作から楽曲を短くする……と言うよりはシンプルでキャッチーにするという方針は示され、現在最も再生時間の短い楽曲となっている。

インフェリオリティー / 初音ミク http://nico.ms/sm34929242

ここで楽曲構成において共通点が見られる1人としてナユタン星人が挙げられ、2番Bメロ(あるいはAメロ)の後に落ちサビにすぐ突入する点が特徴的と言えるだろう。

エイリアンエイリアン / 初音ミク
http://nico.ms/sm28576299

(ちなみにナユタン星人の楽曲はというと3分を若干越すものが多い)

暴走P

この曲が短い所以については本人が詳しい。「サイコパスラヴ」の概要欄より引用する。

【初音ミク・結月ゆかり】サイコパスラヴ / cosMo@暴走P
http://nico.ms/sm37502212

Q.なんで音ゲー尺なの?
A.クソ騒がしい曲を2分半以上聞かせては視聴者の健康に良くないかなって……


加筆修正部分

暴走Pの出で立ちについての筆者の理解が足りず誤解している部分が存在していたことを反省する。
ニコニコも存在しないような時代、muzieにおいてインストルメンタル曲を制作されていたということで(てっきりこちらがサブなのかと……)、むしろ音ゲー尺の楽曲を制作される方が自然な流れとも言えるようだ。

実際この楽曲を3分以上聴くのは精神と耳が持たない

加筆修正部分おわり

Kanaria

Kanariaの楽曲は決してどれも長いという訳では無いが、特筆すべきはやはり今年の顔の一つとなったKINGであろう。(ちなみにVtuberを含め派生がありえないほど多い。にじさんじ歌ってみたランキングなどを見ると顕著だ)

【GUMI】KING【Kanaria】
http://nico.ms/sm37287661

これについてもFlat氏の考察が詳しいので引用する。

「全体で約2分と短い尺である点も特徴的だ(尺に関しては2018年にデビューし、1分ジャストの楽曲を複数ヒットさせたすりぃを先駆に位置付けることも可能だろう)。」

こちらの場合はTwitterにフルを上げてこそいないものの、やはりフル尺でTwitterに投稿できる長さであり、実際にそうしている派生も散見される。
これへの工夫としては、ABサビCBサビという飽きさせない展開が見られる。ラストの間奏に向けて転調するのはなかなかに珍しく、2分15秒の間リスナーを離さない力を感じさせる。

また、他に挙げられるものとしてはサビのみのショートバージョンで(後にフルが別アレンジで投稿された「ヒトリユラリ」を含め)Twitterにてアルバムより先行公開されていることだろうか。

アルバムへのある種の宣伝材料でありつつも、「記念」と銘打ちTwitterで部分公開することによりフォロワーの獲得にも繋がる。(限定にすることによって拡散が促されるからだ)

Chinozo

というよりは「グッバイ宣言」であるが、「レナ」も3分を割る。

グッバイ宣言 / FloweR
http://nico.ms/sm36668789

レナ / Hatsune Miku
http://nico.ms/sm36283870

最初に「ワンツー」で気を引いたり、サビに行くかと思えば間奏に行ったり、サビに向かって
構成としてはBメロとサビ後半が似通ったリズムだったりし面白い。(ルールールーの部分)
短いと感じさせることは無いし、

100回嘔吐

「ごめんごめん」投稿時の衝撃は、とてつもないものがあった。

ごめんごめん/初音ミク
http://nico.ms/sm36364736

「生きろ」「しゅきぃぃ」などインパクトのあるタイトルの楽曲は確かに出している人物だ。
しかしながら、これ程「ごめん」を連呼する楽曲があっていいのかという印象を受けた。

アウトロこそないものの、ABサビABサビ間奏サビを展開するとのは詰め込んでいる印象だ。特にリズムが変わってのラスサビの畳み掛けはすごい。

その衝撃も冷めぬ間にリリースされたのが「みんなの謎なぞ」である。

みんなの謎なぞ/歌愛ユキとflower
http://nico.ms/sm36528960

再生数等の指標においてにおいて「ごめんこめん」に離されている楽曲ではあるが、この曲のギミックには凄まじいものがあると思う。

環境音を4秒流して歌が入る、これだけのことでも、偶然だと思われるが5秒というYouTube広告が飛ばせない時間と一致している。注意を引きつけて期待を高めるにはもってこいだと思う。(Omoiの「君が飛び降りるのならば」の咳払いにも似たものが見られる。ちなみにこちらも3分を割る楽曲だ)
そしてAメロが12秒で(囁き声が入っているのも面白い)、言い換えれば一問と一答で終わりBメロに入る。サビの前半までは緊迫感のあるオケであり、後半の16ビートの軽快なリズムとの対比が気持ちいい。
2番に感想を挟まずに突入、サビに行くかと思ったらCメロを挟みサビに行くという面白い構成をしている。

また、このnoteのテーマに沿えば「この160秒も」という歌詞も印象的だ。このような手法をするPには他にツミキやピノキオピーが思い浮かぶが、儚さというか侘び寂びを感じさせとても好物である。

コメダワラ

短いと言えるのは「自堕楽」……次点で少し前の楽曲の「ダージリン」だ。BIN楽曲をみても、「チルドレン」(まぁ、こちらはボカロverが先ではあるが)のみが3分を切る。

自堕楽 - 音街ウナ http://nico.ms/sm36823780

「自堕楽」については1番が間に間奏(イントロ)を挟むのに対し2番は挟まずにサビへ向かい終わるという構成だ。嘆きのような(しかし厭世的すぎない)テーマや歌詞であることから、この程度の長さで終わるのが重すぎずちょうどいいのかなと筆者は考えた。

ユリイ・カノン

と言うより「あしゅらしゅら」である。

あしゅらしゅら / GUMI
http://nico.ms/sm37092723

「少女地獄」でも氏としては珍しい展開に度肝を抜かれたのだが、今回は今年の締めくくり的noteということでこちらを。

この楽曲は「早い」と言ってしまったらまぁ、短いのは当然といえば当然だが構成としてもユニークで、ユリイ・カノンさんらしさをやはり持っている。
実の所、2番サビで落としてラストに突入する手法と似た手法は「おどりゃんせ」「だれかの心臓になれたなら」などあげればキリがない。
それらの楽曲との違いとしては「落ちサビ」を設定せず8拍で楽器を増やし転調までスピーディーに運ぶことであろう。

書いてて思った事として、ユリイ・カノンの真髄はラスサビ終わりにあると思う。「あしゅらしゅら」でも2分と少しで2サビを終え、いわゆるCメロ(あるいはDメロ?)に突入している。

「だれかの心臓になれたなら」の「いつしか君が〜」は別のメロディと言いにくいにしても、「撫子色ハート」や「まほろば少年譚」などではそこのみで用いられる新たなメロディが用意されている。この効果として曲の総括として希望が差し込む感覚が挿入されるように思う。

【オリジナル】 撫子色ハート 【初音ミク&GUMI】
http://nico.ms/sm32081867

ちなみに筆者は映像とともに大きく花咲かせるような撫子色ハートのこのパートが好きである。

SEVENTHLINKS

相次ぐ派生と中毒性でみるみるうちに再生数をのばし、2020年を象徴する楽曲のひとつとなった「p.h.」。

p.h. / flower
http://nico.ms/sm36943926

春嵐のカバーをSEVENTHLINKSが、p.h.のカバーをjohnが行ったことからも分かるように、これらの楽曲にはリンクが見られる。(ちなみに楽曲の長さは1秒差)BPM、音使いなど随所にリスペクトないし共通性が存在しその中で独自性を放っている。

というわけで比較してみた。(が、これは努力の後なだけなので飛ばしても良い)

歌入り 20秒/15秒
サビ入り 49秒/35秒
2番入り 1分3秒/59秒
2サビ 1分30秒/1分21秒
ラスサビ 2分3秒/1分55秒

薄々勘づいてはいたが、転調など全体的な構成は近いにしろ1番と2番の間奏がなかったりアウトロがなかったりラスサビ終わりのCメロ(?)があったりするので目立った成果はない
……がラスサビが始まる時間はある程度固定化される。それはそうだ。

前述のように短い曲の中でキャッチーなリフと難解なラップとで切り替えているのが満足度、歌いたくなる度の要因ではないか。

個人的に復帰を望んでいる人物(グループ)の1人である。

傘村トータ

「アンダードッグ」が該当の長さであったので紹介しようと思うが、バラードが基本的に多く曲によって長さはまちまちなので短めに。

アンダードッグ / feat. 鏡音リン & 鏡音レン 
http://nico.ms/sm36277568 

疾走感を持って展開していくが、曲における要素(Cメロなど)を取り払うことなく単に一つ一つの歌唱パートを早く抜ける。歌詞は一旦置いておくとしてサクッと聴けるタイプの傘村トータ楽曲だと思う。
ちなみに、筆者は大好きである。

x0o0x_

氏の楽曲はほとんどが無題であるが、ここではTwitterでの表記で「2月の駅の歌」「怖い夢の歌」を指しているとする。

http://nico.ms/sm36440133

http://nico.ms/sm37470177

特殊な点としてx0o0x_はVOCALOIDシーンに意図的に立っていない。いわゆる「すべあな界隈」にて頭角を現した氏は、VOCALOIDバージョンやoffvocalを投稿するものの他の人物とは一線を画したプロモーションを行っている。
この点から他のボカロPとは別の戦略が見えてきそうである。ジェットコースターの様な奇抜な楽曲展開やメロディーは聴くものをすぐさま魅了し、3分も必要としないという時代感覚かもしれないがどうだろう。

音継かなで

毒蜘蛛/v flower 
http://nico.ms/sm37048218

YouTubeでは「嗜癖」に少し劣る伸びだが、ニコニコ動画では圧倒的に伸びている。その要因は筆者には謎である。
ひとつの要因に曲の短さはあるのかもしれない。高速ロックで、器編成など含めとても洗練されてツボを抑えているように思う。1番では2番ではBメロに行かずにコーラスパートに行くのが面白いし、そこからラスサビへの突入がFXもあり非常にスムーズだ。

(活動休止非常に残念……)


閑話休題、2020年以前のVOCALOID伝説入り楽曲においても調査を行ってみた。

パターンとしては大きくわけ3つ存在する。
1つはみくみくにしてあげる、リンちゃんなう、ぽっぴっぽーなどのキャラクターソング性の強い楽曲。
1つはよっこらせっくす、高音厨音域テスト、家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています、だんだん早くなる、誰でもいいから付き合いたい、般若心経などの「ネタ」要素の強い楽曲。例えば、高音厨シリーズの楽曲の尺が3分あっては本当に誰も歌えなくなってしまうだろう。
後にフル(ロング)バージョンが公開された楽曲も存在する。「テレキャスタービーボーイ」が近年では有名で、過去には初音ミクの暴走の例もある。後者の場合はブームに乗っかるという点ですぐ出さねばならなかったと睨んでいる。

どの経緯にしても、現在の「短い曲」の毛色とはまた違った部分が見られる。今年はキャラソンでない、ネタでない、ショートでもない曲として短いものが比較的多かったとまとめることが出来るからだ。(もちろん例外もあるが)

ここからは、3分を若干切るような長さの楽曲が目立ったDECO*27やOrangestarに注目しよう。

特にOrangestarはFlat氏が「連続性」の音楽である述べているこ
とからもわかるように、コード進行や音などを連続性を持って紡いでおり、曲の時間が結果的に短くなるのも納得である。反対に言えば、BPMや展開の仕方によってはOrangestarの楽曲はとても長くもなりえ、「Alice in 冷凍庫 」や「快晴」はその例だ。

DECO*27については、MKDR以降の楽曲では3分を切らず、3分から4分を往復している。しかし、後述の楽曲のように3分を割るものも目立ち、その背景について筆者はBPMがあると考える。「いいや」「リバーシブル・キャンペーン」「ストリーミングハート」のどの楽曲も疾走感に溢れ、目まぐるしい展開で魅了していくものである。

ちなみに筆者は全く関係ないが「日本橋高架下R計画」がとても好きであり、抑制からの解放、再び抑制というシンプルな構成が特徴的な効果を果たしていると思う。

【IA】日本橋高架下R計画【アニメーションMV】
http://nico.ms/sm17456703

では今年に時を戻そう(進めよう?)。

子牛

秋の未確認生物 / 音街ウナ
http://nico.ms/sm37686568

子牛、もとい対抗Pの代表曲であり、何に「対抗」したかはお分かりであろう。曲自体の魅力は承知の上で、やはりこの楽曲はネタとしてこそ個性を放っている。

考察を促すような一見意味不明な歌詞への偏重を嘲笑するかのような韻を踏んだ無意味な歌詞の応酬。四つ打ちダンスロックの系譜を踏んだ高速ビート。
全てが計算されていないようで計算されているのが怖い点で、これを短い尺に収めて動画として投稿することにこそ意味があるように思う。そもそも2番までやると長く単調になってしまうし、今後フルが何かしらで公開される可能性が濃厚にしてもこのインパクト、殿堂入りまでの伸びは短さが故の勢いがあってこそだと思う。

執筆を決めた時点ではまだこの楽曲が発表されていなかったのだが、まさに合致するようなタイミングで公開され興味深く感じた。

この楽曲に関してはwauの「ステレオタイプインフェクション」への類似性も感じる。

【重音テトオリジナル】ステレオタイプインフェクション / wau
http://nico.ms/sm33845596

こちらが5分の尺で多くの展開と要素を組み込んでいる点である種対象的であるが、それも2年間でのボカロシーン、「ボカロらしさ」の変革を表しているのではないかと思う次第だ。

オワタP

ラストに紹介したいのは「3分の曲を聴くのにかかる時間は3分」だ。ちなみにこの曲自身は2分もない。

【弱音ハク、亞北ネル】3分の曲を聴くのにかかる時間は3分【ガルナ/オワタP】
http://nico.ms/sm37290406

オワタP自身はデビュー当時から短い楽曲を投稿してきており、ネタ曲的要素を持ったものを中心に時にシリアス、時に可愛い楽曲で人気を博してきた。
この楽曲は、その点から非常に面白い楽曲に写る。なぜなら、ボカロシーンにおける重鎮ともいえるような人物がシーンに対して皮肉めいたメッセージを2020年に放ってきたからである。

ここからは私の主観が多くなることをご了承願いたい。
ここまで「短い」楽曲について触れてきた。これは近年、特に今年のボカロシーンにおいて(あるいは邦楽シーンでも)そうしたものが増加傾向にあることを肌で感じたからだ。
しかし、それは表現手法のひとつでしかない。もちろんfull verが後に発表されるなどあったとしても、投稿楽曲はそれとして完成して作者にとって最高のものになっているべきだと思う。時に大事な部分を削っていないか、手段に偏重していないかということを念頭に創作を行うべきだと思い、そうしたメッセージを私はこの楽曲から感じた。


最後に

最近頭角を現していたPの1人に柊マグネタイトがおり、単刀直入に言って氏の楽曲は「長い」。が、多くの人を魅了している。(新曲も11日に来るらしく楽しみ)

旧約汎化街 / 初音ミク
http://nico.ms/sm37744139

或世界消失 / 初音ミク
http://nico.ms/sm37462050

この背景から、今後トランス的アプローチの重厚な楽曲と二極化すれば面白いと感じた。

また、じんの「ステラ」も5分半と非常に長いが高い人気を獲得している(プロセカないしじんの固定ファンを差し引いても)。ボカロ曲としてはバラードで明らかにBPMが低い「アヤノの幸福理論」に次ぐ長さである。

【初音ミク】ステラ【オリジナルMV】
http://nico.ms/sm37828296

YouTubeのアルゴリズムとして「総再生時間」も考慮されるということもあり、考え方次第だがそこまで短くすることに固執することも無いのではと思うところだ。上記の2曲にしても空気感の演出に練られた楽曲構成が強く影響しており、評価される部分のひとつであろう。

現在、VOCALOID楽曲のストリーミングサービスへの配信は加速度的に進行している。KINGやチチンプイプイがバイラルチャートにて(たった今も尚)高い順位につけていることは記憶に新しいだろう。
YouTubeというプラットフォームへの移行(筆者としては共存とでも言いたい)、視聴回数のインフレも顕著に進行している。

この大きな変革の中で楽曲の長さがどう変動していくのかに少しでも目を向けると違った視点でシーンを見ることが出来るかもしれない。

追記

私の楽曲はこういうトレンドを踏まえてか何なのか短いので、聴いてください。次の新曲は24日になります。

ホスピタルエクスクラメーション/カゼヒキ
http://nico.ms/sm37508073

タングルドクエスチョン / ふりゅね
http://nico.ms/sm37586481

最後まで読んでくださりありがとうございました!


参考文献

Juicy Jが3分以内の短いヒット曲が増えた理由について語る
https://fnmnl.tv/2018/11/18/62553

ボカロ曲の流行の変遷と「ボカロっぽさ」についての考察(4)n-bunaとOrangestarの登場がもたらした新たな感覚
https://realsound.jp/2020/09/post-613823_1.html

ボカロ曲の流行の変遷と「ボカロっぽさ」についての考察(7)柊キライ、Kanariaら2020年の活躍と今後のシーンに寄せて
https://realsound.jp/2020/11/post-650648.html

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