「ただ選択があった」の選択
こんにちは。nogiと申します。
言うこともないので本題へ。
(長くなるのでここから常体になります。挨拶くらい敬語にしたいのですが、切り替えが難しいですね。)
はじめに
まずは、とても面白い曲なのでぜひ聴いてきて欲しい。あるいは聴きながらでも。
ただ選択があった/重音テト
http://nico.ms/sm38371721
サムネイルの時点でギミックについては勘づくだろう。
本来は4の4乗、256通りの「選択」が有り得るのだが、ここで使われている(たまたま選ばれている?)のは実際それほど多くは無いので、それぞれレビューを行うことにした。
なお歌詞に準じて解説するので、イントロは割愛する。
本編
一巡目
・ただ選択があった
タイトルにもなっており、デフォルトだとする。
ベースの動きとしては丸の内進行に近いが、オンコードである「Ⅲm/VI」により「あった」に緊張感が持続されている。「I7」は正しく次への二次ドミナントで繋いでいる。
二次(セカンダリー)ドミナントについて詳しくは
https://soundquest.jp/quest/chord/chord-mv2/secondary-dominant/
・ただ後悔があったでも
「後悔が」は「♭Ⅶ7」であり、これは「選択が」の箱に入ってもおかしくない「Ⅲ7」の裏コードであると言える。キーには無いコードであり、独特の浮遊感を出している。
裏コードについてはここで。(でも、使う際には脳死で六半音下げてもいいと思うよ)
https://soundquest.jp/quest/chord/chord-mv4/tritone-substitution/
「でも」の「Ⅴm」はこの歌詞にふさわしい切なさを持っているが、決して物凄く珍しいコードではない。この後に来るものは「IV」とかだと期待されるので、そこに向かわないのは意外性である。
・まだ可能性があった
「まだ」の「Ⅱm」はこの楽曲のテーマとなったであろう「代理コード」に正しく当てはまるものだ。
代理コードは文字通り代理のコードだ。
「IV△7」とは印象が少し変わるのと、この後の「V7」との「ツーファイブ」と呼ばれるジャズ的な繋がりを見てさせている。
ツーファイブは文字通りツー(Ⅱ)からのファイブ(Ⅴ)だ。
ただ選択があった
二巡目
・ただ選択が続く
なるほど。
数字を見ればわかるかもしれないが、「IV→Ⅲ→Ⅱ→Ⅰ」すなわち順に下降している。これをやりたかったのか。滑らかな動きで、「続く」感じが演出される。
・ただ後悔が積もるでも
「積もる」の登場。ちなみに次は「可能性が」で出てくる。
コード自体は「選択が」と同じなので定番のコードである。
前述の「裏コード」から本来のコードに向かうので、ベースの動きとしては一番劇的な組み合わせかもしれない。一応全て「ドミナント」という扱いなる気がするので、緊張感がひたすら積もっている。
・絶えず選択が続く
初登場で、全体でも2回しか出てこない「絶えず」さん。
テトさんが高音に行ってるのも要因としてあるのだが、みなさん聴いて美しさを感じると思っている。
ダイアトニックと呼ばれる普通のコードではあるものの、その中では一番使い方が難しいやつ。この場合はマイナー版のツーファイブを形成しているのだが、そこから解決しないで「続く」のがニクい。
・まだ選択が終わることもなく
「こともなく」さん。問題のやつ。一度しか選択されない。
いわゆる「Blackadder Chord」だが私はよく分からない。しかしIV系のコードに向かうのは最も王道の進行先であり、不思議なコードが「こともなく」感を出していると思う。知らんけど。
三巡目
ただ選択があった
ただ後悔があった
でもまだ可能性があった
ただ選択があった
四巡目(静かになる)
・まだ選択が続く
「ただ選択が続く」に似ているが、2321の進行ということで行ったり来たりする不安定感が「まだ続くのか〜」感を醸し出している。
・まだ後悔があった
言うことがなくなってくる。
既出の「ただ後悔があった」に近い。
・いま可能性が積もるそして
切なさを産む「IVm7」と「♯IVm7-5」のダブルパンチ。「♯IVm7-5」はつまり「IV△7」のルートを1音上げたものなので、次のコード「IV△7」への繋がりが非常に良く、まさに「そして」。
ただ選択が続く
五巡目(ピアノのみに)
ただ選択があった
ただ後悔があった
でもまだ可能性があった
ただ選択があった
六巡目
ただ選択があった
ただ後悔があった
でもまだ可能性があった
ただ選択があった
七巡目
ただ選択があった
・絶えず選択があったでも
マイナーチェンジだと既出のパターンを「組み合わせました」以外の言うことが少ない定期。
申し訳ないんですが、パス。
・まだ可能性があったそして
特筆すべきことは、前述の通り「IV」にいきやすい「そして」で結末にしっかりと繋げていることでしょう。
・いま輪廻は終わる
申し訳ないことに2通りの解釈があり、不安なのでどちらも提示する。転調、してるのか……?
①元のキーのままであるとする
一応、3つともおおよそ「パラレルマイナー」からの借用和音になる。
詳しく知りたい人
https://soundquest.jp/quest/chord/chord-mv2/parallel-minor/
厳密には「♭Ⅶ△7」は四和音としてはパラレルマイナーからの借用とは言えないけど。「♭Ⅶ7」になるはずである。
細かいよ。
浮遊感(確かにある)を産む「♭Ⅶ」系のコードであると解釈するならメジャーキーとして締めたことになり、この一文で唯一キーから外れた音(輪廻 の「り」)はブルーノートと言えるだろうか。
②転調している
借りたというか転調していると考えた場合。Ⅱ→Ⅲ→Ⅴで終わる。
Ⅴで終わるのかという感じもするが、終わり方の不安定さはどちらの解釈でも同じようである。
メロディーがキーから外れているのは「終わる」の「わ」……と思ったが、お前もしかして、メロディックマイナースケールなのか……?
そしたら「♭Ⅶ7」でなく「♭Ⅶ△7」である理由も解決……?
ここでnogiは停止。
いずれにしても独特の終わり方であることに間違いはない。
同じコードの部分では音数などを変えており、非常に飽きさせない構成になっていると感じた。
最後にダメ押しでリンクを。
ただ選択があった/重音テト
http://nico.ms/sm38371721
おわる。
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