脂肪酸は遊離や化学変化すると風味物質に

和牛肉は水分が赤肉よりかなり少なく、粗脂肪含量がとても多いことが特徴ですが、その食味はしつこさよりも、ジューシーさを感じさせます。これは和牛脂肪では主にオレイン酸が多くとても融点が低いため、口内で脂肪が容易に溶け、液体となって多汁性を感じさせるからです。
ここが牛肉と豚肉の大きな違いです。豚肉ではオレイン酸が多くなるとにより融点が低下することもあるのですが、多くはリノール酸が多くなって融点が低下します。融点が低いとジューシーさが高まることも考えられなくはないのですが、筋肉内脂肪含有量は低いため、豚肉におけるジューシー感には肉が水を保持する保水力の方が重要です。豚肉では保水力が高いと、保存や調理の際に肉汁が出にくく、かんだ時に肉汁が出て多汁性を感じさせるためです。
同じような粗脂肪含量の豚肉であれば、オレイン酸含量の高い方が風味が良いことを報告しています。
イベリコ豚は脂肪交雑が入ることで有名ですが、オレイン酸などの一価不飽和脂肪酸含量が高いことも特徴の1つです。
同じ不飽和脂肪酸でも一価不飽和脂肪酸では食味にプラス、多価不飽和脂肪酸食味にマイナスになると考えられます。
「豚肉品質の科学と向上技術」第2章3脂肪と色沢と質 より