動物への配慮の日本史

「動物福祉学」より

西洋的な「人と自然」といった対立的観念ではなく、日本には、共生の世界観が存在することが見てとれる。また、このあらゆる森羅万象に神が宿るという世界観は、動物だけを食べないという発想には至りにくく、日本に菜食主義者が少ない(肉食主義者が多い)理由の1つともされている。

仏教の教えが書かれた仏典(キリスト教でいうところの聖書)には、仏教徒が守るべき倫理基準として五戒が定められており、そのうちの1つに不殺生、すなわち生き物を故意に殺してはならないことが記載されている。また、これを元にした仏教儀式に、生き物を野に放つ放生会がある。仏教は、この殺生禁止を世界で最初に説いた宗教とされており、このことは日本時の動物への配慮の思想を捉える上で、決定的に重要人になってくる。

日本には動物への配慮に関する1300年以上の歴史が存在しており、それらには仏教に由来する殺生禁止の思想が如実に現れている。この思想は、「動物愛護」という言葉によって表現され、さらに「動物の愛護及び管理に関する法律」という法律によって具現化されることになったが、その中身は、やはり殺生禁止の思想が基になっている。