見出し画像

父親が愛した女性たち

自分の父親の恋愛を明かすのは、あまりいただけないのかもしれないけど、父親と私は〝戦友〟みたいだったし、父親のお陰で男性を見る目が養えた、と思ってる。
自由に生きて死んでいった人だから、こんな話も許してくれるだろう。とっくに〝時効〟だしね。

父親にとって、私を産んだ母親との結婚は初めてではなかった。その3年くらい前に年上の女性と短い結婚があった。23歳…さすがに若いよな。
いわゆるデキ婚で、私より3つ上に息子がいたことになる。でも、呆気なく2人は別れ、その後、息子を含めて彼らが再会することはなかったらしい。
 この人とは後日談があるから、また別の時に書こうかな。これもまるでドラマのような、かなりディープな話だけど。

キヨミちゃん

離婚して板橋の家に住んで1年位だったか、父親が「付き合っている女の人を紹介したい」と言った。
特に断る理由もなかったし、これで休みの日に遊びに連れて行ってもらえるならいいか、、くらいの気持ちだったし、離婚前に〝カカシ〟と会わせた母親に対する感情とは全く違っていた。
 彼女の名前は「キヨミちゃん」。年齢は28歳だったと思う。
最初に会ったのがどこだったか覚えていない。でも、夏祭りの神社の思い出や、夜の銀座で食事をしたり、キヨミちゃんの妹さんの家に行ったこともあった。

裸体

数ヶ月交際した頃だったか、いつものようにキヨミちゃんの家に泊まった。普段は父親と私が床に敷かれた布団、キヨミちゃんがベッドに寝ていたけど、その日は私が疲れてキヨミちゃんのベッドで寝てしまったようだ。
 夜中に目を覚ますとベランダから入る街灯で照らされているだけで、部屋は真っ暗だった。
目を凝らして見ると、床の布団で父親とキヨミちゃんが寝ていた。私は起き上がりもせず、横向きに寝たまま2人をじーっと見ていた。どのくらい経った頃か、キヨミちゃんと目が合った。キヨミちゃんからしたら、きっとドキッとしたんだと思う。
私に「パパの隣りに来る?」と聞いてきた。私は声は出さず頷いた気がする。
 布団に入った。
「?!」思わず声を出しそうになりながら、そーっと父親の体を触った。全く何も身につけていない全裸だった。私は最初足先で、信じられなくてもう一度手の指先で股間辺りも確かめた。想像したものが、想像以上の肌触りで私に現実を突きつけた。
パニックにはならなかったけど、やっぱりショックだった。当たり前だよね、父親のを確かめる場面なんて。最悪としか言いようがない。
 私は怒りも沸きながら、そんな状況に置いたキヨミちゃんを見た。どんな気持ちで私をここに入れたんだろう?今どんな顔をしているんだろう?と。
キヨミちゃんはベッドに寝ていた。私達に背中を向けて。
 その瞬間、7歳の私は〝この人は私のママにはなれない〟という審判をくだした。結局はこの人も母親と同じ〝女〟なんだな、と。

別れ話

その後2人がどのくらい付き合ったか覚えていないけど、ある時に父親は、キヨミちゃんと別れ話で会うはずだった喫茶店に私を連れて行こうとしていたらしい。
 でも何故かその日に限り、私は友達の家を何軒か周り、そのまま銭湯に行ってしまった。キヨミちゃんを待たせている父親は私を血眼で探したみたいだけど、結局合流できないまま、キヨミちゃんも帰ってしまったそうだ。
 暫くして父親から「あの日が引き金になって別れた」と聞いたけど、いつも自分のことしか考えない責任感の大人達に嫌気が差していたから、「また私のせいか…ふーん」という思いしかなかった。
 だって、あなたの別れ話より〝毎日片道10分の夜道を1人で銭湯に行く7歳の娘〟が心配ではありませんか?ってね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?