見出し画像

念願のご当地山ごはん

2021年2月に埼玉から長野に移住したわたしは、密かに1つの山ごはんを計画していた。「ご当地山ごはん」に挑戦すること。

ご当地山ごはんと聞いて「なにそれ?」と思った方が多いのではないか。それもそのはず、わたしが作った言葉だからだ。要するに、登ろうと考えている山の地域の食材を使用して、山頂でごはんを作ることである。

山も景色も食も、いわば地元に囲まれると思うとなんだか感慨深い。

長野を代表する郷土食はなんといっても”蕎麦”である。標高が高い長野県では、朝晩の寒暖差が激しくそば粉作りに適した気候である。山から流れる水もおいしく、昔から”信州そば”と呼ばれ地元民に愛されてきた。

そのそば粉を皮に混ぜて作ったのが”おやき”である。中には、保存食として昔から作られている野沢菜の漬物や優しい味をした切り干し大根、ほくほくで甘さひかえめのあずきが入っている。どれも長野のソウルフードだ。


7月16日、ついに甲信越地方でも梅雨が明けた。久しぶりの山日和だ。いつも通りに調理器具を用意し食材を調達、隣の村にある子檀嶺岳(こまゆみだけ)にやってきた。

画像1

山頂でそばは茹でれないので袋麺で妥協したが、代わりにつけ汁にこだわった。日本一生産量が多い東御市のくるみを使ったくるみつゆ、そして日本三大七味にも選ばれている善光寺の八幡屋礒五郎の七味を使ったとろろめんつゆ。

「袋麺なんて味気がなくて美味しくなさそう」と普段は選ばなかったが、2時間も歩き続けたあとだと嘘みたいに箸が進んだ。ちゅるんと音をたてて吸うそばは正直味はイマイチだったが、身も心もやっと長野に染まった気がしてなんだか嬉しさが感じられた。

画像2

デザートとしておやきを2つ用意した。メスティンにむちむちに敷き詰めた姿はなんだか愛らしく感じられる。味は定番の切り干し大根と野沢菜。ちなみにおやきは麓にある道の駅で購入をしたもので、より地域に密着した特産物をわたしは山の上で楽しんだのである。

画像3

そういえば、わたしの記憶で最初に食べた長野のそばとおやきは駅の立ち食いそば屋さんだったな。バスの出発時間まで母親と2人、食べきれないからと半分こずつ分け合った温かいおそばが印象深い。おやきも当時は今みたいに何種類も味がないから、少し苦い野沢菜を渋々食べていた頃が忘れられない。

あれからずいぶん時は経ったけど、そばもおやきも長野を代表するご当地ごはんだ。北アルプスといった立派な山ではないけれど、そばとおやきで迎えた初めてのご当地山ごはんは、わたしの新しいふるさとになった長野県を存分に味わう経験だった。

画像4


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?