医者になって少し学んだこと。-医学博士というもの①ー

医学博士って、すごいのか?偉いのか?と聞かれたら「すごい人もいるし、全くそうでない人もいます。立派な研究もあれば紙の無駄遣いとしか思えないゴミみたいな論文もあります」とお答えする事になります。

医師以外でも取得出来るようですが、そちらは知識が無いので、今回は臨床医の医学博士取得に関して、お話します。

まず、博士号は医師免許の様な国家資格ではありません。それぞれの大学で独自の基準があり、何なら、大学のそれぞれの科、そしてさらに教授独自の基準があります。内容に関しては、医学論文であれば何でもよいので、動物実験、疾患の臨床的まとめ(長期成績その他)、新しい術式、公衆衛生、その他何でもOKです。

私が所属した教室では、最初の教授はとにかく臨床に重きを置く方だったので、内容はともかく体裁が整っていれば何でも良しで、取得することそのものに意義があるというか、それしか意味が無いと公言されていました。次の教授は、3年ほど海外で真面目に基礎研究したことがあるためか、少し厳しくなり、英語論文であること、インパクトファクターがあること、が条件でした。

雑誌に関しては、NEJM、Nature、Lancet等の格調高きものから、その土地の名前の〇〇医学雑誌、〇〇Acta Medica等の博士号のためだけに存在するものもあります。ちなみに後者は掲載料がなかなかのお値段というのは聞いたことが有りますが、噂レベルなので詳細は不明です。普通は、投稿、掲載は勿論無料でして、採用されると別刷りを50とか無料で頂けます。さらに追加でほしい場合は、適正な価格で有料となります。まず論文が出来上がると、評価の高い雑誌から選んで投稿し、はじかれるたび、レベルの低い雑誌となり、どうしようもなくなると、お金さえ払えば採用される〇〇医学雑誌に掲載ということになります。

私が若いころは現在と異なり、大学院に行かなくても論文博士という制度(正式名称かは不明ですが)があり、論文博士の場合、大学病院勤務何年以上、その間研究費(実際には研究していなくても)を払えば期間短縮となり、私も何年かは研究費を払った記憶があります。いずれにしても主論文1つ、副論文2つあることが必要です。副論文に関しては、主論文とは全く関係の無いものでもOKで、症例報告でも構いません。さらに言うと、ファーストオーサーである必要はなく、ずらっと並んだその他大勢の1人でもカウントされるという、とても甘い基準です(現状は良く知りませんが、おそらくあまり変わっていないのではないかと思います)。

大学院に入るタイミングは人それぞれで、教室の人員等の事情によります。マンモス医局ならば、毎年3年目から何名とか、きっちり決まっていることが多いようです。私は実験は好きではないし、早く手術が上手くなりたいと思っていたので院には行きませんでしたし、打診があっても断っていたと思います。院は通常4年間ということになりますが、実際には学生の身分で2年間ぐらいは臨床をして(授業料は払いつつ無給医、大学以外のアルバイトで生計を立てる)、2年ぐらいを実験等、論文作成に充てることが多いです。

所属する教室(医局)には、一般に様々な専門グループが存在して、そのいずれかに属し、流れに沿ったテーマを与えられ、実験する場合もありますが、それ以外では、諸外国にリサーチフェローとして留学する、他大学の基礎系に国内留学、所属大学の基礎系で実験、論文作成等、いろんなパターンがあります。


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