医者になって少し学んだこと。-医学博士というもの②ー

論文の採用が決まると、学位論文として認められるために一連の手続きが開始となります。

まず、主査一名(通常、所属科の教授)、副査二名(他科教授:主査が選択)が決まります。副査の先生は論文の内容に関連無くても問題ありません。医学の世界は専門性が強いので、他科の教授は意外と内容を理解できていないこともあるようです。形式が整えば、その三人を含めた発表会があります。+αで発表者の友人や共同著者・実験者が聴きにきたりもしますが、通常、少人数での閑散とした、形式的な発表会に過ぎないと感じられます。主論文に関する発表が終わると、簡単な質疑応答となります。

ただ、先ほど申しました様に、専門分野以外は教授と言えども良くわからない、という事もしばしばあるため、実際には、予め質問の内容が決められています。つまり、発表者が、事前に副査の教授のところに打ち合わせに行くわけです。そこで、質問の内容をむしろ発表者が教え、「こういう事をご質問頂けましたら幸いです。」「そうだね、わかった。」となります。さらに、発表内容以外でも、「他に何か勉強しておくことはありますでしょうか?」と質問し、何らかのテーマを与えられます。ただし、あくまで専門外なので、頓珍漢なテーマであることも少なくないようです。友人の論文は、がん遺伝子に関する立派な内容でしたが、なぜか「脳血管攣縮に関して勉強しておいて下さい」と言われ、その場でズッコケそうになったそうです。

そんなヤラセ的な発表会が終了し、博士号の取得が決定すると、最後のお務めとして、主査、副査へのお礼のご挨拶があります。

ただし、これに関しては、私の出身大学でも教授によって全く異なるので、私の所属科に限った内容となります。私の教室の教授は主査の場合、ズバリ30万円を受け取っていました。副査は通常それぞれ10万円ずつで計50万円が必要となります。主査の場合、実験に関係している場合も無くはないのですが、ほとんどが国内外の留学や基礎系教室での実験による論文作成なので、全く関与していないことも多く、個人的には、それで30万はボッタクリ過ぎなのでは?と感じていました。

私自身はといいますと、博士号はありませんが、条件が整えば取得可能であった論文はいくつかあります。一つは、他大学に手術の勉強に行った際、たまたま教授と二人で動物実験を行い、それが何故かいつからか私がメインの実験となり、最終的には、それなりの結果が出た論文です。科研費を使った実験だったので、学会発表後に英語で論文作成し、ちょっとだけインパクトファクターのある雑誌に掲載されました。大学在籍期間が足りていれば、それで十分な内容でしたが、それまでに大学を離れたのと、もし居ても賄賂を贈るような形で取得するのは抵抗があるので、おそらく申請しなかったと思います。

あくまで地方大学、マイナー科での出来事ですので、医学博士はピンキリであり、今回は実際に見聞きしたキリに関する内容でした。他科の同級生に聞いたところ、「うちの教授は金品は一切受け取らない」と言っていたので、人それぞれであったようです。

登場人物、団体名等は全て架空のものです。

追記:副査の先生へのお礼10万円は、自宅の庭で掃除をしている奥様に現金入り封筒を渡すという謎ルールがありました。医局秘書同士で日時を決めるそうです。単身赴任や独身の場合は仕方なく教授室に持っていくとのことでした。今でもそんな事やってるのかな?

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