山本文緒最新刊「自転しながら公転する」を読みました
初めての投稿です。
私は1日のうち3時間は大好きなゴルフのことを考えているような人間ですが、もう一つの趣味が読書です。海外小説を好んで読みます(もちろん翻訳で)が、国内ではなんといってもこの方、敬愛する山本文緒さんです。
山本文緒さんの作品は、ほぼ読んできました。好きな作品はいくつもありますが、特に『ファースト・プライオリティー』は私にはバイブルのような存在です。悩む時、辛い時、この本には何度も慰められました。
前置きが長くなりました。
『自転しながら公転する』、実に7年ぶりの新刊です。待っていましたよ!山本先生どうされてるんだろう、ってずっと思っていましたよ!なので新刊案内で知った時は、やったー!!でした。
そしていよいよこの手に。装丁も凝っていて、紙の手触りもいいじゃないですか!
早速読み始めます。まずは「プロローグ」。
このプロローグが、のちに大きな役割を果たすわけですが、そんなことはこの時はまだ知る由もなく、サクサクと読んでいきます。舞台はベトナム・ホーチミン。(私も息子が住むこの地に昨年行ったばかりなのでここで軽く興奮)「わたし」は今まさに花嫁になろうとしています。隣には夫となるベトナム人の彼。プロローグは二人が教会のバージンロードを歩く描写で終わり、そこから本編へ入っていきます。
本編は、都と貫一、令和の金色夜叉カップル(名前がね)の物語が続きますが、これがまあ実にリアルなんですね。山本先生の観察眼には本当脱帽です。舞台も牛久というなんとも絶妙な地方都市で、それもまたいいのです。物語は単に二人の恋愛ストーリーだけでなく、職場の上司や同僚、親、友達、仲間の間に起こる日常のいざこざなどが描かれているんですが、これも本当に現実的過ぎて怖いくらい。それゆえ共感度も半端ないんですね。こうして何気ない日常が描かれながら、ヒヤリとする出来事や、予想を超える展開もあり、読み進めるほどにジェットコースタードラマを見ているような感覚にもなっていきます。そして一番気になっていたベトナム人の彼、そう、プロローグの彼です。彼が、出てこない・・!もうページは残り少ないのに、出てこないんです。この辺りから妙な焦りと、これは一体どこへいくのかと、半ば困惑しながら読み進め、ついに本編終了・・・。
そして『エピローグ』。再びのホーチミン。サイゴン河の桟橋に係留されたクルーズ船の上で、結婚披露宴の真っ只中です。ここへきてまだ気づいていない私、困惑が解けないまま、え?どういうこと?と思いながら読んでいき、、、そしてアオザイ姿の女性・・!?そうか!そういうことだったのか・・・!!!
その時の突き上げるような感動。思わずこぼれる涙。ミャー、頑張ってきたんだね。貫一も。二人で頑張って生きてきたんだね。二人がたまらなく愛おしく、ただただ泣きました。それにしてもあざやかなラストでした。やられました。山本文緒さん、やっぱりすごい!!
もう一つ、ここには母と娘の物語があることに気づきました。娘が母親へ向ける少し批判的な冷ややかな目線。そして母もまた自分の娘をどこか冷静に眺めている。親子であっても、いや、あるがゆえなのかもしれない女同士の微妙な関係、自分にも思い当たりまくりでした。
『自転しながら公転する』、忘れられない一冊となりました。時間をおいてまた何度も読んでいこうと思います。
*
拙い文章、読んでくださった方がいらしたら、どうもありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?