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ゲーム業界はハードか?という質問についてゲーム業界の人が思うこと<後編>

前回、SEGAハード推しみたいな発言で投稿を終えてしまい、異世界おじさんかよ!って言われても反論できないNAオンラインのイハラです。

何がショックって、異世界おじさんは僕より年下なんですよ。


さて前回、「ハード」の解釈に対して、「きつい、しんどい」「対価に合う合わない」という定義付けをしました。

ただ、いずれも個人の裁量で判断するあいまいな基準なので、正直線引きするのが難しいとも言いました。

そこで今回は、なぜきついと思うのか、なぜ対価に合わないと思うのか、そのあたりから話を進めたいと思います。

クリ博のトークセッションはデザイナーに特化したものだったので、この内容もデザイナー寄りになっちゃいますが…あしからず…。

クリエイティブとは…?


まず最初に理解しておいてもらいたいこと、それは、仕事は自分の好きなようにできないということです。

これはトークセッションでも少しふれましたが、クリエイティブとわがままは違うよってこと。

自由な発想で、のびのびモノづくりをすることをクリエイティブと思っている方もいますが、仕事でそれをやるとただのわがままです。

業務におけるクリエイティブとは、制約(仕様や納期)の中でさまざまな創意工夫をもってモノづくりをする、ということに他なりません。

そのあたりを理解しておかないと、思ってたのと違う、納得できない!という考えが積み重なって、つらいしんどいになっていくのです。

ここでひとつエピソードを紹介しましょう。

その昔、僕がまだ現場でゲームの背景デザインをしていた頃、僕の師匠が「緑色の空を描きたいなぁ」とずっと言ってました。

ただ、当時開発していたゲームはどちらかというとリアル調の内容だったので、非現実的な緑の空は合わなかったのですね。

もちろん師匠はその案を断念して、そのゲームに適した空の色を表現し、そのまま月日が流れに流れました。

で、ある時、ファンタジー系のちょっとおどろおどろしいゲームを担当したんですが、ここぞとばかりに師匠は緑色の空を作ったのです。

もちろん、ゲームとの相性は抜群。ついにやりたいことを表現できた師匠は、「やっとできたわ」と満足気でした。

この間、実に3年!石の上にも三年ってよく言いますが、やりたいことを我慢して、そのタイミングを虎視眈々と待つ執念というかこだわりというか…

こういう人がプロフェッショナルなんだなぁと当時の僕は思ったわけです。
これもクリエイティブのひとつのカタチですね。

物理的にできないときもあるよね


やりたいことがすぐにできない!というイライラは、そのうちできる日が来る、いや、いつかやってやろう!とい思いで解消できそう。

むしろそう思えば、前向きに仕事に取り組めるんじゃなかろうか。

と、思いはするものの、それとは別にきついしんどいを叩きつけられることもあります。それが物理的にクリアできないこと

具体的に3つ例を挙げましょう。

1. 作業スピードとスケジュールが見合わない
どんなに急いで作業を進めても、人間には限界があります。個人差も。その見積もりと提示されたスケジュールがとんでもない時があります。

この場合の具体的な解決策としては、もう時間に頼るしかありません。そうです、長時間労働が発動します。

2. 単純に業務量が多い
比較的簡単な制作であっても、山のような作業が発生する時があります。アバターのアイテムなんかはそうですね。数との勝負です。

この場合も時間が解決してくれます。ん?言葉の使い方がおかしい?まあ結局、制作業務は時間との戦いなのかもしれません。

3. 求めらえたクオリティが出せない
実際、レベル3くらいのデザイナーにクリア推奨レベル10くらいの仕事が任されることもあります。

このケースでは「できない自分」という現実を目の当たりにするので、もしかすると精神的に一番キツいかもしれません。

会社では、基本的にデザイナーは自分で仕事を選べません。上記に挙げたようなことが、ないことはないのです。

でもそれがクリエイティブ業界


とはいえ、近年のゲーム業界では、こういった物理的な問題、とくにスケジュールや作業量の問題は減少していると思います。

今はゲーム開発が大規模になり、ひとつのゲームタイトルの制作に2~300人体制で制作することも少なくない時代です。

そんな状況で、仕様を変更してスケジュールが大幅に変わってしまったら、多くの人員に影響が出るどころか、開発費も膨大になってしまいます。

だから、ある程度しっかり仕様を決めて、それに見合ったスケジュールを立てて開発をすすめることが求められます。

ただ3つめのクオリティの問題、これはデザイナーのスキルに関わることなので、おそらくなくなることはないでしょう。

実際、僕自身もクオリティを出せず落ち込んだことは数え切れません。何度提出してもチェックが通らない…そんなこともありました。

ただ、そういう場面でなにくそと頑張れるか経験値アップの荒行だとポジティブにとらえられるか、そういう気持ちって大事だと思います。

相手が求めていることを表現して納得してもらう、自分が納得できる表現をする、つまりクリエイティブなことって、そう簡単にはいかないよね。

商業レベルのモノづくりって、クオリティやら納期やらこだわりやら、いろんな要素のせめぎ合いの中で仕事をする、タフでハードなことなんですよ。

もし、そのための残業だったり、休日出ないといけない状況をハードだと思うなら、その人はきっとクリエイティブ業界に向いてないと思います。

さいごに…


誤解のないよう行っておくと、残業や休日出勤を肯定してるわけじゃないからね!そりゃあ決められた時間で仕事をするのが至高ですよ。

さっきも書いたけど、厳しい条件や状況で仕事をしなきゃいけないことだってあります。

周りとの戦い、自分との戦い…なんかわからんけど、常に何かと戦っている修羅の道。それがゲーム制作というお仕事なのかもしれません。

結論として、ゲーム業界はある意味ハードです。でもそのハードさの先でこそ、自分のスキルアップや達成感が得られるものだと思ってやみません。

そこで得られたものは、大袈裟だけど、自分にとってかけがえのない経験になりますし、そしてそれが生きる自信につながると思います。

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今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございます!ついでにスキを押してくれたら、僕の仕事がイージーになります。楽してぇなぁ!