ノカノ歌 皐月の俳句・後半
夏嵐知らぬ露台に踊るシャツ
強い風に吹っ飛びそうな洗濯物。取り込んだ方がいいのではという心配も少し。
若葉風はしゃぐ園児のエネルギー
寒かろうが暑かろうが公園にやってくる園児たちは元気だな! 五月の風を子供たちのパワーになぞらえて。
白日傘白ワンピース似合う頃
そんなヒロインみたいな格好が決まるのは十代から二十代までよねえ、とそんな素敵な格好のお嬢さんを見て思いました。
かくしゃくとピンクのワンピ夏来たる
しかしそのあとで濃いピンクのワンピースを着た老婦人が姿勢よくざかざか歩いているのを見て、ああん、年齢関係なく好きなもの着たらいいじゃない! という気持ちに。夏はこれからよ!
鬱蒼と誰も取らない夏みかん
手入れのされていない木立で静かに育っては落ちていく果実。寂しさと切なさとちょっと心弱さと。
「かなめもち」今年も忘れググる夏
川柳寄り。毎年忘れるんだよねー、生け垣によくある新芽の赤い植物の名前を……この句で覚えたい……。「かなめもち」「レッドロビン」と言うらしいぞ!
日常に帰りたくない烏の子
一日遊んできた休日の夕暮れどき。明日からまた「日常」がやってくることへの駄々。ヤダヤダ。
夏服の少女らの撮る地元駅
何かの舞台にでもなったのだろうか、あれだあれだとはしゃいで駅の様子を取るお嬢さんたち。彼女らには何が見えているのかな。
輪郭を切らず描かれた夏木立
noteでは言わずもがなですが最近絵を描き始めたので、あれこれの輪郭線やら光と影やらを見てしまう。明るい空を背景に伸びた若い葉っぱたちは輪郭がはっきりしているように見える。
誰も見ぬ裏庭の門飾る薔薇
裏庭に続くらしいアーチの上部に美しく咲く赤い薔薇。寂しさと切なさと誇り高さと。
箱庭の中の自由と勲章よ
井の中の蛙、的な……。この「箱庭」はごく狭い身内というようなことより、「社会」とか、地球くらいの規模まで想定しています。地球ですら宇宙から見れば微細なものだ。
若葉風橋の途中で止まる足
いきたくないとか、かえりたくないとか。
夕焼を引き止めるにはどうすれば
いきたくないとか、かえりたくないとか。
我を抜き何処まで行くか黒南風よ
湿った重い空気がびゅうと吹く。それでも私より遠くへ行くんだな。
皐月雨上手に歩きたくない日
何だか上手に歩けない(概念)、と思ったことを「歩きたくない」に昇華することで自らの意思であるようにした句。
窓際に昼寝の猫が並びたり
五月病なのか後半が全体的に暗いのでほのぼので〆。
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