ノカノ歌 皐月の俳句

春夕焼きみはこちらを見ているか
 夕日の前にきみがいるのはわかるけれど、こちらを向いているのか向こうを見ているのかわからないなあ、という想像。

風光る撮った覚えのない写真
 何かいい感じの風景写真がスマホに残っていたけれど、これいつ撮ったっけ? 

眩くて手の届かない夏の雲
 ここから夏。風景としてはそのまんまだけど、眩くて届かない人のことでもある。

鯉のぼり見下ろし背鰭なきを知る
 吹き抜けに飾られた鯉のぼりは上から見下ろせる。ちょっと新鮮。

母の日のコーナー過ぎて義母思う
 母を亡くしてから母の日は関係なくなっ……ハッ お義母さん!!

何か言うこともせぬまま若葉萌ゆ
 毎年木々は勝手に育っていくなあ、というのと、一緒のゲームをはじめた初心者さんもどんどん成長していくなあ、という気持ちの合わせ技。

ひらひらとつかめぬ羽根よ風薫る
 橋の途中でふうわりと風に乗ってきたのは一枚の鳥の羽根。思わず手を伸ばしたけど、まあつかめないよね。

空の青さを知らしめる夏雲雀
 ヒバリの声を聞くと快晴の空が思い浮かびませんか? わたしは浮かびます。でもこのときは生憎と曇りでした。

君の留守ひとりであけるソーダ水
 「開ける」でも「空ける」でもいいようにひらがなで。句会に出したらわりと好評でした。「いつも一緒に飲む『君』がいないさみしさと相反する爽やかさがよい」的なことを言っていただきました。「へっへっへ、ひとりで飲んじゃお」だったのは内緒にしておきました。詠む人次第の解釈楽しいね。

若葉雨傘を出さない帰り道
 こちらも句会で好評でした。席題「若葉」を詠んだもので、最初は「散歩道」にしようかと思ったんですが、のちの話題で「俳句で『散歩』という言葉はあまり使わない」と言われ、危ういところだったのが判明しました。偶然で高評価を得た。


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