日記(20)

2020年1月2日<夜>

 中退した大学にはいまでも未練がある。かといって現状を在野研究といえるほど勉強しているわけでもない。
 今日も平田オリザ『わかりあえないことから』(講談社現代新書)を読んでいる。
 会話と対話の違い、マイクロスリップ(ノイズ)の重要性、「みんなちがって、たいへんだ」など示唆に富む。
 僕が強く感じたのは、勉強・対話・創作・発表の大切さだ。平田は「早く覚える」「たくさん覚える」から「よく覚える」を標榜する。
 短期記憶から長期記憶へ。これには「参加型」「体験型」の記憶が必要だと平田は説く。ただ本を読むことの記憶だけではなく、親密な対人関係と合わさった記憶が長期記憶を強める。ゆえに勉強して対話する、そして創作、発表するという過程を踏むことで学習がひとつの体験となり、それが特別な記憶となって長く定着することになる。
 授業を受けて自習してテストを受けて合否を受ける、といった一連の学校システムの限界を僕は個人的経験としても感じてきた。まるで新人賞のシステムと同じだ。
 その代わりを読書・対話・執筆・出版といった同人誌の制作過程がこなせるかはなんともいえない。
 しかしいまの僕にできることはこれくらいしかない。こうやって本を読んでブログにしてみることもその傍流といえるだろう。
 新人賞を受賞してプロ作家になる、それもひとつの道ではあるが、同人誌の場を作り、運営してゆくというのも未来の人材を育てる道としては同じだと思う。
 トキワ荘などの高コストの事業ではなく、低コストで自主独立の場を作り出せないものか。ネット環境や文学フリマという場をうまく利用して、新しいことの模索を続けていきたい。

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