日記(8/24)

2021年8月24日

 先日『ドライブ・マイ・カー』(濱口竜介監督、2021)を観た。村上春樹「ドライブ・マイ・カー」「木野」「シェエラザード」(『女のいない男たち』収録)の翻案、チェーホフ『ワーニャ叔父さん』の稽古と上演が見所だろう。台詞の映画で映像的な色彩や構図、アクションは希薄だった。鑑賞後、相反するモヤモヤを抱えていたが昨晩に聴いたフォロイーのツイキャスで雲散霧消した。それはキアロスタミ『友だちのうちはどこ?』、デシーカ『自転車泥棒』と濱口竜介『寝ても覚めても』を比較して論じる話だった。端的にいえば前者二作は運動と選択があり、濱口にはそれがないということだったと思う。『ドライブ・マイ・カー』は通過する映画だ。夫婦の溝、役者との確執、ドライバーの過去などを愛車のサーブ900を走らすように次々と通過してゆく。ひとつの事件からサーブ900の所有者である家福悠介が最後に大きな決断をする。だがこれも運動を選択したというより運動の通過に留まっていないか。結末の雇われドライバーの日常を描く場面にも通過の印象が強い。多和田葉子の小説を読んだある評者が多和田の「通過」は大事だと述べていたことがあったけど。
 今日はフィリップ・K・ディック「電気蟻」(『アジャストメント』収録)を読んだ。気宇壮大な短篇だった。類似作としてカフカ「狩人グラフス」、ボルヘス「アレフ」、V・ウルフ「書かれなかった長編小説」、コルタサル「夜、あおむけにされて」「すべての火は火」、埴谷雄高「闇のなかの黒い馬」があるように思った。
 漱石「永日小品」「幻影の盾」、芥川「邪宗門」はあまり進まず。明日はひさしぶりの買い出しだ。いま兄が帰郷しているので自分のただでさえ少ない家事はさらに軽減されているのだが。『幻想と怪奇』が届いているらしいので楽しみだ。『映画大好きポンポさん』も観たい。本と映画に出費が重なる。被服費はとうぶんお預けのようだ。
「REBOX鑑賞会」の報告を週末にする予定だ。こちらも進めていきたい。 

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