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『マジカント五号』東北/記憶 内容紹介

A5 126頁 1000円 5/19 文学フリマ東京38 メルキド出版(D-44)


はじめに


2017年創刊の同人誌『マジカント五号』で「東北/記憶」の特集を組みました。本誌は日本政府とメディアが喧伝する3・11に代理表象される「東北」の再考・再検討を試みています。原始的な自然の東北のイメージを嘘偽りではなく、宮沢賢治のように「そのとおり書く」ことはできないか。むろん困難極まりない仕事なのは承知の上です。本誌は「東北」のテーマで続刊の準備を進めております。至らない点は多々あると反省しきりですが、「ひとつの日本」へのカウンターに幾ばくかでも寄与できれば幸甚と思います。

書影と誌面


表表紙(装画・川田はらいそ)



裏表紙(装画・川田はらいそ)
目次


内容紹介



短篇 菫辺喬大 地涌
技巧的な文体と情感を揺さぶる描写。東北の自然に宿る悠久の恢復力は地に涌く言葉の奔流。 

序論 沖鳥灯 常民の歴史
「常民」(柳田国男)と「いくつもの東北」(赤坂憲雄)で「ひとつの日本」(単一民族幻想)の脱却から未来の民族伝承を試みる。志賀理江子、映画『マタギ』、宮沢賢治らを経て「一個の人間」の前に「一匹の犬」へ。人間が自然を支配しない、プリミティブな東北の自然を見出す。 

論考 朝村甲人 哀悼の時間を歩く──石沢麻依『貝に続く場所にて』論 
『遠野物語』は幻想譚ではなく現実であると捉え『貝に続く場所にて』における幽界/震災被害者の境界が「記憶の持物」によって担保されるとした。

論考 moka 読むことをよく味わうこと──石沢麻依「獏、石榴ソース和え」に関する些細なメモ・ノート
作者と読者の関係を丁寧に解き明かす。「木男」「あなた」「日記」が書き記すことで作者を擬態しようとし、分裂すること。

論考 大沢野 櫻 イーハトヴとユートピア──二つの地名
宮沢賢治『注文の多い料理店』とトマス・モア『ユートピア』の詳細な比較対照によって、賢治オリジナルのユートピア観を見出す。

短篇 湯本実 灰で充ち満ちた街
幽霊車、女、鹿、雨、音楽、夜、植物、黒い羊など『遠野物語』のような民間伝承に現代的なアレンジを施し、被災地「東北」へ迫る。幻想と日常の往還。

短篇 歌猫まり 赤べこ人間
福島県磐梯山の麓に投宿のカップルはオリジナルの民謡と神話の創作で戯れる。序盤は軽薄な大学生たちの他愛もない遣り取りのように見受けられるが、彼女が語る磐梯山の神話は虚実怪しいフィクションの凄みに溢れている。終盤彼は赤べこのように彼女の太ももにかぶりつく。過去と現在、妖怪と人間、フィクションとリアル。未来のあやふやな恋人たちが生きる小さな歴史。

エッセイ 織沢実 竜飛行
青森の竜飛(たっぴ)岬へのロードエッセイ。狂気と正気の間を物質との空想対話、往時の流行歌、橋本治の引用、道路沿いの風景描写など多視点で描き、自己と世界の「納得」を書き記す。 

エッセイ 大沢野 櫻 略辞典
「ゴシック」「イーハトヴ」「驚異」「未知」「磐手」の解説。ゴシックロマンスとイーハトヴ童話の源泉と差異。

おわりに


冷やかしでも興味本位でも構いません。ぜひ本ブースへお立ち寄りください。雑談や企画・原稿の持ち込みも歓迎します。よろしくお願いいたします。

メルキド出版
沖鳥灯


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