日記(年末年始)

2022年1月11日

 昨年末に読んだ千葉雅也『勉強の哲学』「補章」で「出来事をただ書いてみることでできる小説というのも一種の前衛小説です」とあった。また「ただ起こったことを起こったように日記にしてみる」というような事実と事物の羅列を推奨するくだりに妙に惹かれた。
 今年5月刊行予定のアンソロジーの序文を書くために一ヶ月程四苦八苦してきた。そして最終章の段になって筆が止まった。これは一度草稿から離脱したほうがよいだろうと判断するに到った。ゆえに千葉の言葉を思い出したこともあり年末年始の日記を記しておきたい。
 12月22日夜にツイキャスをしたのでその後のことから記録しよう。23日、母の常備薬とバケツ、あと自分のセーターを買う。帰宅後、仕事場で佐藤友哉『大洪水の小さな家』を17年ぶりに再読。クリスマスイブ、書店で佐藤友哉『エナメルを塗った魂の比重』を買う。クリスマス、ケーキを食べることもなくひたすらくるりやアジカン、サカナクションのCDを流す。26日、学生時代のサークル仲間と『偶然と想像』(2021)を観る。移動中にカフカ『小さな女』を読む。27日、『勉強の哲学』と『トクヴィル』(宇野重規)を読む。28日、焼肉を食べる。29、30日、YouTubeで「コンテンツ地獄」を観る。31日、50年間購読した朝日新聞を解約。「東海の文芸」掲載日はコンビニで購入しようと思う。1月1日、ブックオフウルトラセールで、チェ・ゲバラや大江健三郎、あと花、野鳥、海水魚の辞典などを買う。『八月の狂詩曲』(1991)を観る。2日、ディック『小さな黒い箱』を読む。3日、ローリング・ストーンズやロッド・スチュアートの中古アナログレコードを買う。4日、郵便局で文芸思潮、朝日新聞、国立国会図書館に同人誌を送る。書店でウルフ『病むことについて』を受け取る。5日、書店でヘッセ『デミアン』を買う。6日、雪。家で欅坂46「砂塵」をヘビロテ。7日、大江健三郎『共同生活』を読む。8日、家の模様替えを手伝う。『ファウスト』vol.6 SIDE-Bが届く。9日、阿部和重『Neon Angels On Road To Ruin』、「思考の地盤沈下」(『早稲田文学1997年4月号』)、『ラッキーストライク01』「巻頭言」を読む。10日、『あなたの番です 劇場版』(2021)を観る。書店で『シン・エヴァンゲリオン論』『検証 コロナと五輪』『この30年の小説、ぜんぶ』を買う。
 以上、20日程を振り返った。日常生活を漫然と送りながら本や映画を鑑賞するのは意外と大変なことだ。まして定職のない自分ですらままならないのに日々労働したり勉学に励んだりしている方々が文化的な日常生活を継続することはとても困難だろうと想像する。そのためにSNSや読書会などが機能してほしいと切に願う。このブログもどなたかに思わぬ刺激となればこれ以上の喜びはない。ダダ漏れの情報でしかないのだから自己満足に留まるのだろうけど千葉の言葉を反芻して今日を閉じたい。


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