日記(10)

2019年11月26日

 文学フリマで入手した本を同人評みたいなかたちで書こうかと意気込んでみたものの、数が多いし、そんな技量もないので日記としてのらりくらりと断片的な感想を記すことに留めたい。それならTwitterでもいいようにも思うが、あれはあれで煩雑になるのでのんびりと読んでいく。
 それでまずはじめに手に取ったのが会場でもまっさきに買いにいった『カフカと私』(pabulum)。
 盛りだくさんの内容で一気に読むことは脆弱な僕には無理なので、比較的とっつきやすそうだった二篇から読むことにした。
 ひとつめは、環原望「指令書」
 ツイートでは僕なりの概要を示してみた。が、ちょっとありきたりな読みだったと反省。この掌篇の肝はなんといってもタイトルでもある「指令書」の存在だ。僕はこの道具立てがカフカというよりボルヘスらしさを感じた。といってもあんまりボルヘスは読めている作家ではないのでそれほど考えを深めることはできないでいる。でもこの作品の終わりにかけての展開はカフカっぽさが満載だ。不幸であり幸福であるというか、幸福であり不幸であるというか、なんだか両義的な誘発性が炸裂しているし、侘びしさ、いたいけさもあっていい。
 ふたつめ、中澤一棋「カフカランド建設計画」
 よどみなく進行する一人称の語りに不意にカフカ的な迂遠な表現や描写が入り込んだり、陰鬱な家族関係が垣間見えたりで、地味な話であるものの惹きつけさせる魅力がある。
 締めのカフカランド構想はきらびやかな宝石のような文章になっている。カフカの小説を読みたくなるというよりも伝記を読みたくなってきた。ウォルト・ディズニーの伝記も読みたくなった。
 このほかにも興味をそそる論考や創作、翻訳が多々掲載されている『カフカと私』。文学フリマで買い逃した方も古書ソオダ水で店頭販売・通販しているのでぜひ。いろんなひとの感想を読みたいものです。

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