くよくよする欲望

自分の欲深さや荒んだ生活習慣を改善するために5日間ほどお寺に泊まり込み座禅修行をしたことがある。

朝5時に起き、太極拳で体を動かし、朝昼夜に各2回ずつ座禅を組み、奉仕活動を行い、お経を唱え、精進料理を食し、22時には寝る生活。

1日目は座禅による足の痺れ、食事の作法に苦しみ
2日目は朝5時起きからくる睡魔と戦いながらの座禅。
そして慣れない作法と時間制限のある食事。短い時間で急いで食べなくてはいけないので、食べる量も腹6分目くらい。
身体が全くついてこず、修行なんて来なければよかった後悔した。

それでも夜はぐっすり眠ることができ、3日目になると食事の作法にもだいぶ慣れ、たくさん食べれるようになった。
ただ座禅での足の痺れは慣れず。


5日間の修行中は携帯電話を使わないし、タバコも吸わず、もちろん酒も飲まない。カフェイン中毒だと思うほどに毎日コーヒーを飲んでいたが、飲み物はお茶と水のみ。

たった5日間だけど、なんだか心も身体も浄化された気分だった。22時には就寝して5時に起きる生活も心地良く、朝の澄んだ空気の中での太極拳も清々しい。

悟りの境地には程遠いが、心は日を増すごとに心は穏やかになっていった。


ただ、この生活や心の穏やかさの裏で何かがぐつぐつと煮え立つものがあることにも気付いていた。
が、今は修行中。そこには触れないようにしていた。


夜には和尚さんの説法を聞き、お香の香りも相まって悩みや不安などが和らぐ。

「この話ってこれまでに何百回もしてるんだろうなぁ」とか「その割には新鮮に話せてるなぁ」とか「悟りひらいてもレクサス乗るんだなぁ」とか「みんな神妙な顔で聞いてるなぁ。神妙って神って字だよな。仏様の前で神妙な顔はまずいのかなぁ」とかとか煩悩が列をなして次々に現れてくるのを消していくことに躍起になったり。


そして5日間が終わり、寺を出て山を下りた。
とても素晴らしい体験と日々を過ごせた。

新幹線に乗るために街へと向かった。
街に出ると、全てが揃っている。
修行中ぐつぐつと煮立っていた欲望が街に出たことにより決壊する。

喫茶店に入り、コーヒーを飲み、続けざまにタバコを2本吸う。
甘いケーキを食す。
立ち飲み屋でビールを飲む。
肉が食べたかった5日間。
町の小さな焼き肉屋入り、肉を喰らう。そしてビールを飲む。
時間を気にせずに、無作法に肉を焼き、テレビを見ながらビールを飲む。


お寺ではシャワーしか浴びれず、しかも15分以内。
だから銭湯にも行った。
そしてラーメンを食べ、ビールを飲み、タバコを吸い、うたた寝した。

山を下りて街で暴れる猿の如く、欲望の赴くまま。
最高な一日。
煩悩の尊さ思い知ることのできた5日間でした。

座禅修行にまた行きたいという欲望に駆られてる。

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