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フェラーリ買ったら人生変わる?

「フェラーリに乗ってる人」というと、どんな人物像を思い浮かべるだろう。昔だったら不動産で儲けた青年実業家、今ならIT長者といったところか。もしくは、三度の飯よりフェラーリが好きな筋金入りのエンスーとか? いずれにしても、“一般人とはちょっと違う世界の人”というイメージがあるのではないか。

「去年の6月にF355を買ったんですけど、こないだF348に買い替えまして。来週納車なんですよ」

 なんと34歳にして2台目のフェラーリを購入したNさんは、しかし、どこから見てもフツーの人。こう見えて実は、ホリエモンみたいなIT企業の社長さん? と思いきや、やっぱりフツーの会社員だという。

 そう、今回訪れたのは、中古フェラーリ専門店「ナイト・インターナショナル」。つまり、Nさんが買ったのは中古のフェラーリなのである。が、たとえ中古でも、フェラーリはフェラーリ。そのお値段は半端じゃない。

「去年買ったF355は870万円。84回払いの7年ローンでした。でも、それがちょっと厳しくなっちゃって。住宅ローンとか食費とか込みで10万で、車のローンが10万。で、僕、手取りが22万なんで、2万しか余らない。そこからケータイ代とかガソリン代とかって、どう考えても無理じゃないですか。なので、今回640万のF348スパイダーに替えて。これでだいぶ生活も楽になるかなっていう(笑)」

 ……いや、笑ってますけど、そんな無茶なローンを組んでまで、フェラーリを買おうと思ったのはなぜ?

「その前はベンツのSLKに乗ってたんですけど、ある本に『SLKじゃ人生変わらない』って書いてあって。そうか~コレに乗ってても人生変わらないのか~と思って。で、人生変えたかったんで、そういう車を…と思って、フェラーリに走ってしまったんです」

 ベンツからフェラーリとはまた極端な。SLKだって立派な高級車だし、十分カッコいいと思うのだが……。

「SLKは新車で買って。540~550万ぐらいだったかな。6ヶ月ぐらい乗ったんですけど、それを手放して、9年落ちのフェラーリ買った。で、新車より高い、と(笑)。結構、勇気いりましたよ。ていうか、普通に考えたらメチャクチャですよね。でもまあ、それほど人生変えたかった、と」

 一方、2年前にやはり中古のF355を買い、今はモデナに乗っているというIさん(31歳・医師)。

「もともと車は好きで、中高生のときはポルシェがカッコイイと思ってましたね。それで大学入って車雑誌読んでるうちに、フェラーリというのもやっぱりすげえなーと思って。スタイリングとかもほかの車と全然違ってて、買うんだったらコレしかない、と」

 20代のうちに絶対買ってやる! と決心したIさんは、見事にその野望を実現。しかも、1180万円を現金で支払ったというからすごい。

「まあ、学生の頃から“よし、買うぞ!”って貯金してたんで。でも、学生時代って、どんなに頑張ってもそんなに貯まらないんですよね(笑)。だから、貯金をしてるんだってことで自分の中でモチベーションを高めてたという感じで、実際、お金が貯まりだしたのは働きだしてからですね」

 現在は父親の跡を継いで医院を構えるIさんだが、最初にフェラーリを買ったのは大学病院に勤務していたとき。いくらそのために貯金していたといっても、1000万円を超える買い物に迷いはなかったのだろうか?

「やっぱり若いうちじゃないと、こういうものは楽しめないじゃないですか。たとえば年取って子供が手を離れて、お金が自由になったときにはもう50、60でしょ。それからこんな刺激的なものを買っても、年老いた感覚では100%感じられないんじゃないかと思って。今のうち買わなきゃ、結婚したらもう絶対買えないし(笑)」

 このへんはNさんも同様で、「フェラーリなんて一生に何度も乗れるものじゃないんで、とりあえず一度は乗っとこうと思って」と言う。

 ちなみに、同店の榎本店長に聞いた人気車種ベスト5は以下のとおり。

1位:F355
2位:360モデナ
3位:348
4位:328
5位:512TR

 といっても、前出・NさんのようにF355から348に乗り換えた人もいるし、それほどはっきりしたランキングがあるわけではない。

 同店の客層は30代のサラリーマンが中心。「もう“買うぞ”って決めて来る方が多いですね。みんな死ぬほどローン組んでます(笑)。でも、フェラーリを中古で買うお客さんは、実は超堅実派なんですよ。だって、ベンツなんて新車買っても3年経ったら半額でしょ。でも、中古のフェラーリは、欲しいって人いくらでもいるんで、3年経ってもほとんど値落ちしませんから」とは榎本店長の弁。ただし、新車はやはり値落ちするので、新車でフェラーリを買う人は、また別の人種ということだ。

 では、実際買って、乗った感想は?

「初めてエンジンかけて、ちょっと回転数上げたときの音を聞いて、ああ、オレはこのために頑張ったんだーと。仕事が忙しいときも“まあ、終わったら走れるし、いいっか~”みたいな。やっぱ自分に自信が持てるっていうか、自分の仕事へのモチベーションになってることは確かですね。それと運転してるときに周りの人がチラッと見るのが何とも快感で(笑)」(Iさん)

「最初は“うるさい車だな”と思いましたね。あと、値段の割には乗り心地悪いな、と(笑)。でも、ハンドルも重くないし、トルクがあるんで発進とかもクラッチ放すだけで進んでくれて、渋滞とかもすごい楽チンで、乗りやすいですよ。普通に走ってても、子供とか『カッコイイ!』って言ってくれるんで、うれしいですよね」(Nさん)

 ちなみにNさん、フェラーリ乗って人生変わりましたか?

「ちょっとずつ変わりつつあるかな…と。結局、彼女を作るのが目的なんで、それに近づいたかなっていう(笑)」

 そんな彼らに「じゃあ、休みの日とかは結構走ってるんですか?」と訊いてみたら、口を揃えて「そうですね、ココに来たりとか」とのお答え。ココってのはつまり、「ナイト・インターナショナル」である。このお店には、週末になると、何人ものフェラーリ・オーナーが集ってくるという。実際、取材時(日曜日)にも、数人のオーナーさんたちが名物店長の榎本さんとフェラーリ談義に花を咲かせていた。

 その雰囲気は、まるで高校のクラブの部室。目立ちたい、カッコよくなりたい、モテたい。そんな動機で始めたけんだど、いつのまにか仲間とワイワイやってるのが楽しくなっちゃった……みたいな。そう、ココは男汁あふれる“フェラーリ部”なのだった。

(※2005年5月29日取材)

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