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人生初のテレアポ①

Hから渡された架電リストに目を通すと、そこには事細かな個人情報が記載してあった。

名前、電話番号は勿論のこと、住所、家族構成、子どもの年齢、通っている学校名、塾名、各家族の帰宅時間に至るまで事細かな個人情報が記載してある。

当時、今ほど個人情報にうるさくない時代、ギリギリコンプライアンスに引っかからない程度の個人情報を収集するプロの”名簿屋”と呼ばれる職業の人たちがいた。

営業会社は軒並みそういったプロの”名簿屋”に依頼してターゲットとなる家庭の情報を得ていたのだ。

勿論、N、Hなど彼らもそうだ。

私は渡されたトークスクリプトに一通り目を通すと、数回声に出し復唱した後、人生初となる営業電話をかけはじめた。

ドク、ドク、ドク…。

心臓の音が聞こえてきそうなくらい、緊張し、受話器を持つ手が硬直していた。

不慣れなビジネスフォンで、恐る恐るダイヤルを回す。

プルルルルルル…ガチャッ。

「あ、もしもし、こちらE●●のイズミと申しますが、今回お電話させていただいたのは…。」

"結構です!。”

"ガチャっ!...ツー・ツー・ツー...。"

人生初、営業電話の”ガチャ切り”。

"テレアポ"を経験した事がある人は分かるだろうが、これが慣れるまで大変。

顔も見えない相手から”結構です”と言われると、何故だか自分自身の存在自体を否定されているかのような感覚に一瞬陥る。

後に、バリバリの営業会社でトップセールスとなった私でさえ、当たり前だが最初は営業の初心者だった。

そりゃガチャ切りも何度もされた。

最初の頃はその度に、イライラもしたし、悲しい気持ちになることもあった。

ここまでは、皆さんも一緒だと思う。

だが私が違ったのは、その向き合い方だ。

一言でいうと、反骨心。

むしろ、断る客=敵。

のような捉え方。笑

「なんだこのやろう、人が話してんのに電話切りやがって。絶対、まくってやる。」

ガチャ切りされるたび、そう心の中で叫んでいた。笑

気が強かったのだ。

そしてここから、"営業マン"として怒涛の人生が始まることとなる。

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